美少女だらけの姫騎士学園に、俺だけ男。~神騎士LV99から始める強くてニューゲーム~

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第4章 ヒロインズ・バトル

第87話 たい焼き

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「なんだか分厚い衣をつけた、変てこな魚が売っているわね?」
「え? どこだ?」
「ほらあれ」

 アリエッタが指差した先を見ると、たい焼き屋台があった。

「ああ、たい焼きな」
「たい焼きってことは、あれはタイに衣を付けて焼いたものなの? その割には小さいわね。子供のタイかしら」

「あれは本物じゃなくて、タイの形をした小麦生地の中に、甘いあんこが詰まったお菓子なんだ」
「へぇ、そんなのがあるんだ」

「せっかくだからたい焼きも食べようぜ。美味しいぞ。すみませーん、たい焼き2個お願いしまーす。あんこと、カスタードを1つずつで」
「あいよ!」

 俺はたい焼きを2個購入すると、

「はい、どうぞ」
「ありがと」
 王道かつ定番のあんこたい焼きをアリエッタに渡す。

 俺のはカスタードたい焼きだ。

 たい焼きのあんこの代わりにカスタードを入れるのは邪道という人もいるかもしれないが、俺はカスタードたい焼きが好きなんだよ!
 ワッフルみたいで美味しいだろ?

 ならワッフルを食べろって?
 ごもっともな意見だけど、敢えてたい焼きにカスタードってのが俺的にはポイント高いんだよなぁ。

 もちろん、あんこたい焼きも嫌いってわけじゃない。
 2個目を食べるならマストであんこだ。
 カスタードのがより好きってだけで。

 まぁ俺の個人的な主張はさておいて、だ。

「ところでどっちから食べればいいの? 頭から? それとも尻尾から?」
 アリエッタがたい焼きをじっくりと観察しながら呟いた。

「これはまたベタな質問が来たな。俺は頭から行くけど、どっちでも好きな方でいいぞ。特に決まりがある訳じゃないから」

 たい焼きは、お上品でヴォンジュールでな食事マナーのある食べ物じゃない。
 庶民のお菓子だ。

「じゃあ尻尾からにしようかな。頭からはちょっと可哀想だもんね。それに尻尾のほうが細くて食べやすそうだから」

 ほうほう、アリエッタはたい焼きは尻尾から食べる派、と。
 しかもすごく女の子らしい可愛い理由だ。

 俺は心の中の推しの子ノートに、アリエッタ新情報を書き込んだ。

「はむはむ……ごくん。へぇ、上品で控えめな甘さがすごく美味しいわ。心が一息つく感じ」
 たい焼きを食べたアリエッタが満足そうに微笑む。

「あんこの優しい甘さは、ホッとするよなぁ」

 アリエッタの意見に同意しつつ、俺もカスタードたい焼きをパクリとする。
 俺は尻尾からではなく頭からだ。

 特に意味はない。
 昔からそうだっただけ。
 頭から食べることを可哀想と感じたこともない。
 この辺は男女の違いなのかもしれないな。

「あ、ユータのたい焼きは中身が違うんだ」
「俺のはカスタード入りだ。好きなんだよカスタードたい焼き」
「ふぅん」
 アリエッタの視線が、俺の持つカスタードたい焼きをロックオンする。

「よかったら少し食べるか?」
 なんとなく物欲しそうな視線に感じたので、一応聞いてみる。

「べ、別に食べたいなんて言ってないでしょ」
 そうは言うものの、アリエッタの視線はまだ俺が持つカスタードたい焼きに注がれている。
 明らかに強がりだった。
 普段は節制してるからかたくさんの量は食べないけど、基本的にアリエッタは甘いものが好きだもんなぁ。

 というわけで、ここは俺が水を向けるとしよう。
 なにせ俺はお祭りのエスコートを任されたのだ。
 エスコートする以上はアリエッタの気持ちを汲み取って、最高の体験を提供しないとだよな。

「うーん残念。カスタードたい焼きの美味しさを、アリエッタにも分かって欲しかったんだけどなー。(チラッ) いやー、残念だなー。(チラッ) あんことはまた違った美味しさがあるんだけどなー。(チラッ) 本当に残念だなー(チラチラッ)」

 若干、棒読みだったかもしれない俺の露骨な提案を受けて、

「な、何ごとも経験よね。ユータがそこまで言うんだもの。美味しさを味わってあげないと、カスタードたい焼きも可哀想だもんね。それじゃあ一口だけいただくわ」

 少し恥ずかしそうに早口で言ったアリエッタに、俺はカスタードたい焼きを差し出した。
 それをアリエッタは受け取るのかと思ったら、パクっと直接かじって食べた。
 なんとなく、親鳥に餌をもらう雛みたいで、ほんわか可愛い。

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