82 / 132
第4章 ヒロインズ・バトル
第80話 図書館のリューネ・フリージア(1)
しおりを挟む
姫騎士を育成する最高峰機関のブレイビア学園には、巨大な図書館がある。
その名も『ブレイビア学園付属図書館』。
そのまんまなんだけど、魔法書やら専門書は元より、息抜きのためのライトな小説まで網羅したこの図書館は、ブレイビア王国でも最大規模を誇る図書館という触れ込みだ。
とある休日、俺はブレイビア学園付属図書館に足を運んでいた。
「なになに……『現代魔法における一般相対性魔法理論と特殊相対性魔法理論』?? なるほど、タイトルを見ても全く想像がつかない。何を言いたいんだこの著者は?」
俺は魔法書や専門書にはあまり興味がない――というか魔法を感覚で理解しているため読んでもさっぱり分からない――ので、専門書エリアを一応チラ見してから、本命のライトな小説があるコーナーに向かう。
すると途中の回復魔法の専門書エリアで、偶然リューネと出くわした。
本棚の一番上の本を取ろうと、背伸びしながら手を伸ばしている。
「よっ、リューネ」
「あ、ユータさん。こんにちは」
背伸びを止めたリューネが、俺を振り返って笑顔になる。
「こんなところで奇遇だな」
「ユータさんこそ図書館にいるなんて珍しいですね」
「王国一と噂のブレイビア学園付属図書館を、ちょっと見学してみようと思ってさ」
「その気持ちはすごく分かります。すごいですよね、ここ。蔵書量だけじゃなくて、国宝に指定されている貴重な魔法書も数点、王立図書館じゃなくてここに保管されていたりするらしいですから」
「それは知らなかったな」
「まぁ私が自慢することでも、ないんですけど」
リューネが小さく苦笑する。
「いや、教えてくれてありがとう。この図書館がすごいってことが改めて分かったよ」
「いえいえ、どういたしまして。それで今日はユウタさんは、アリエッタとは一緒じゃないんですか? ユウタさんは普段は休みの日も、アリエッタの特訓に付き合っていますよね?」
「今日は別行動なんだ。最近オーバーワーク気味だから、今日は一日ゆっくりするんだと。メリハリが大事だって言ってた」
「そういえば昨日の夜に、疲れたから明日は特訓はしないって、アリエッタが言っていたような……」
「今日も珍しく昼まで寝ていたからな。アリエッタが休む邪魔にならないように、部屋の外に出たってのもあるんだ」
俺は推しの子第一主義だからな。
常に推しの子のアリエッタの最善を選んで行動するのだ。
「ユウタさんはいつもアリエッタを優先していますよね」
リューネがちょっと呆れたように、だけど楽しそうにクスクスと笑った。
「それでリューネはどうしたんだ? 図書館をよく使ってるのか?」
「そんなに頻繁に通っているわけじゃないんですけど、今日は少し調べたいことがあったんです」
「そういやさっき、本を取ろうとしていたよな」
「はい。でもギリギリ届きそうで届かなくて」
「どの本だ?」
「これです。この紺色の背表紙のなんですけど、うーん……やっぱり届かないかぁ。諦めて昇降台を取ってこようかなぁ……」
リューネが再び背伸びをしながら、棚の一番上にある一冊の本を指差す。
俺もあまり背は高くないけど、でもこれならなんとか届きそうだな。
いつもアリエッタとの模擬戦闘訓練に付き合ってくれているお礼ってわけじゃないが、取れそうだし取ってあげよう。
俺はリューネの後ろから、少しだけ覆いかぶさるようにしながら、目当ての本を取ってあげた。
「よしっ、取れた。これだよな? 『水魔法の攻撃転用における課題と対策』……また難しい本を読むんだな」
「……えっと……はい」
しかしリューネはさっきまでの明るい笑顔から一転、俯いたままで、蚊の鳴くような小さな声で言葉を返してくる。
「ええと、リューネ? 急に元気がなくなったみたいだけど、どうした?」
「いえ、なんでもありませんので」
そう言って顔を上げたリューネは、なぜか頬が少し赤くなっていた。
どうしたんだろう、風邪気味なのかな?
1年生タッグトーナメントも終わって一区切りついたタイミングだし、疲れが出やすいタイミングなのかもしれない。
リューネ自身は気が付いていないだけで、アリエッタと同じように疲労が溜まっているのかも。
「ならいいんだけどさ。でも調子がよくなかったら、アリエッタみたいに早めに休息を取るんだぞ? 体調が悪い時は何をやっても能率が落ちるからな」
「多分、素で言っていますよね、それ」
「もちろんおべっかじゃなくて、俺は本気でリューネのことを心配しているぞ」
「はぁ、やれやれですね」
「……俺は今、なんで溜息をつかれたんだ?」
「そういうところですよー」
「だからどういうところだよ?」
「教えてあげませーん」
なんとも腑に落ちない俺だった。
その名も『ブレイビア学園付属図書館』。
そのまんまなんだけど、魔法書やら専門書は元より、息抜きのためのライトな小説まで網羅したこの図書館は、ブレイビア王国でも最大規模を誇る図書館という触れ込みだ。
とある休日、俺はブレイビア学園付属図書館に足を運んでいた。
「なになに……『現代魔法における一般相対性魔法理論と特殊相対性魔法理論』?? なるほど、タイトルを見ても全く想像がつかない。何を言いたいんだこの著者は?」
俺は魔法書や専門書にはあまり興味がない――というか魔法を感覚で理解しているため読んでもさっぱり分からない――ので、専門書エリアを一応チラ見してから、本命のライトな小説があるコーナーに向かう。
すると途中の回復魔法の専門書エリアで、偶然リューネと出くわした。
本棚の一番上の本を取ろうと、背伸びしながら手を伸ばしている。
「よっ、リューネ」
「あ、ユータさん。こんにちは」
背伸びを止めたリューネが、俺を振り返って笑顔になる。
「こんなところで奇遇だな」
「ユータさんこそ図書館にいるなんて珍しいですね」
「王国一と噂のブレイビア学園付属図書館を、ちょっと見学してみようと思ってさ」
「その気持ちはすごく分かります。すごいですよね、ここ。蔵書量だけじゃなくて、国宝に指定されている貴重な魔法書も数点、王立図書館じゃなくてここに保管されていたりするらしいですから」
「それは知らなかったな」
「まぁ私が自慢することでも、ないんですけど」
リューネが小さく苦笑する。
「いや、教えてくれてありがとう。この図書館がすごいってことが改めて分かったよ」
「いえいえ、どういたしまして。それで今日はユウタさんは、アリエッタとは一緒じゃないんですか? ユウタさんは普段は休みの日も、アリエッタの特訓に付き合っていますよね?」
「今日は別行動なんだ。最近オーバーワーク気味だから、今日は一日ゆっくりするんだと。メリハリが大事だって言ってた」
「そういえば昨日の夜に、疲れたから明日は特訓はしないって、アリエッタが言っていたような……」
「今日も珍しく昼まで寝ていたからな。アリエッタが休む邪魔にならないように、部屋の外に出たってのもあるんだ」
俺は推しの子第一主義だからな。
常に推しの子のアリエッタの最善を選んで行動するのだ。
「ユウタさんはいつもアリエッタを優先していますよね」
リューネがちょっと呆れたように、だけど楽しそうにクスクスと笑った。
「それでリューネはどうしたんだ? 図書館をよく使ってるのか?」
「そんなに頻繁に通っているわけじゃないんですけど、今日は少し調べたいことがあったんです」
「そういやさっき、本を取ろうとしていたよな」
「はい。でもギリギリ届きそうで届かなくて」
「どの本だ?」
「これです。この紺色の背表紙のなんですけど、うーん……やっぱり届かないかぁ。諦めて昇降台を取ってこようかなぁ……」
リューネが再び背伸びをしながら、棚の一番上にある一冊の本を指差す。
俺もあまり背は高くないけど、でもこれならなんとか届きそうだな。
いつもアリエッタとの模擬戦闘訓練に付き合ってくれているお礼ってわけじゃないが、取れそうだし取ってあげよう。
俺はリューネの後ろから、少しだけ覆いかぶさるようにしながら、目当ての本を取ってあげた。
「よしっ、取れた。これだよな? 『水魔法の攻撃転用における課題と対策』……また難しい本を読むんだな」
「……えっと……はい」
しかしリューネはさっきまでの明るい笑顔から一転、俯いたままで、蚊の鳴くような小さな声で言葉を返してくる。
「ええと、リューネ? 急に元気がなくなったみたいだけど、どうした?」
「いえ、なんでもありませんので」
そう言って顔を上げたリューネは、なぜか頬が少し赤くなっていた。
どうしたんだろう、風邪気味なのかな?
1年生タッグトーナメントも終わって一区切りついたタイミングだし、疲れが出やすいタイミングなのかもしれない。
リューネ自身は気が付いていないだけで、アリエッタと同じように疲労が溜まっているのかも。
「ならいいんだけどさ。でも調子がよくなかったら、アリエッタみたいに早めに休息を取るんだぞ? 体調が悪い時は何をやっても能率が落ちるからな」
「多分、素で言っていますよね、それ」
「もちろんおべっかじゃなくて、俺は本気でリューネのことを心配しているぞ」
「はぁ、やれやれですね」
「……俺は今、なんで溜息をつかれたんだ?」
「そういうところですよー」
「だからどういうところだよ?」
「教えてあげませーん」
なんとも腑に落ちない俺だった。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説

十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる