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第3章 1年生タッグトーナメント
第65話 決勝戦を振り返って
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「やったわ! 優勝よ!」
勝ち名乗りを聞いたアリエッタが、満面の笑みで俺に飛びついてきた。
おふわぁっ!?
推しにダイビング・ギューをされちゃったんだが!?
きゃっほう!
俺も恐るおそる抱き返してみたが、アリエッタは嫌がるような素振りを見せはしない。
最高ですか!?
最高です!!!
「やったな。特に最後はすごかったぞ。あれはライオネル・ストライクを改造して、威力に全振りしたんだよな?」
俺は推しの子に飛びつかれて抱き着かれる幸せを強く噛みしめながら、気を抜いた途端にふやけそうになる顔を必死にキープしつつ、さっきのフィニッシュシーンを振り返った。
「さすがユータね。正解よ」
俺の腕の中でアリエッタがちょっと自慢げに微笑む。
この世界でのアリエッタは、魔法を構成する魔法式を改造して派生魔法を作るという、元の世界にはなかった、それはもうものすごいオンリーワンのスキルを習得している。
ルナとの戦いで見せた、パワーを落として移動用に特化したライオネル・ストライク・トランジットに続き。
パワーに全振りしたライオネル・ストライク・フルチャージという新たなるバリエーションを、アリエッタは俺にも内緒で開発していたのだ。
(内緒というか、多分だけどまだ未完成だったんだと思う)
と、そこでアリエッタが抱き着く手を緩めたので、俺も抱き返す力を緩めた。
2人の身体が離れるとともにアリエッタの温もりも薄れていったが、人前で抱き合うのは元陰キャにはなかなかハードルが高いので、すぐに離れてくれて、これはこれで助かったかも?
そんなアメリカ人みたいな大胆さがあったら、誰も好き好んで陰キャなんてしてなかったわけで。
「移動用とかいろいろマイナーチェンジしていけば、当然パワー全振りも選択肢に上がるよな。それでもSSランクの防御魔法を、真っ向勝負で貫通するとは思わなかったぞ」
「なにせ元の魔法が、パワー自慢のライオネル・ストライクだからね。ま、威力が上がった分だけ、ただでさえ悪かった命中精度はほとんどなくなっちゃったんだけど。じゃじゃ馬すぎて、まっすぐ進むのですらギリギリできるかできないかって、そんなレベルだから」
アリエッタが苦笑する。
「ただでさえ低い命中率が、さらに下がっているってことか」
まっすぐ進むのすら怪しいとか、もはや命中とかそういう次元じゃない。
それはつまり、止まっている相手にすら外す可能性の方が高いってことだから。
俺はつられて苦笑した。
「だからもしユリーナが、アブソリュート・グレイシャー・フリージング・シールドで受け止めずに回避を優先していたら、100%かわされていたわ」
「最後は結構バクチだったんだな」
「バクチじゃなくて勝負に行ったって言いなさいよね。失礼しちゃうわ」
「ごめんごめん」
俺が両手を合わせて謝ると、アリエッタは「もーっ!」って顔をしながら小さく笑う。
失礼と言いながら、特に怒ってはいないようだ。
ふぅ、やれやれ。
相変わらずアリエッタは可愛いなぁ。
「正直言うとね。ユリーナがバックステップでもたついた振りをしたのに、完全に釣られちゃったのよね」
「あそこはやっぱり、ユリーナにしてやられたのか」
「しかもアイシクル・スピアで、こっちの動きを完全に止められちゃったでしょ? ヤバッて思ったんだけど。逆にそれで踏ん切りも付いたかな。こうなったらもう行くしかないって瞬時に思い直して、勝負に行ったの」
「勝負した結果、大正解だったってわけか」
「まぁね。でも、ちょっと不思議なのよね」
「不思議って何がだ?」
「私としては8割がたユリーナはかわすだろうって思ったから。なのに真っ正面から受け止めにきたわ……うん、せっかくだしそれも含めて少しユリーナと話をしてこようかな」
「あー、今はどうだろ? 止めた方がよくないか? 負けた直後でプライドもズタズタだろうし、あんまり刺激しない方がいいんじゃないか?」
俺は陰キャ的な価値観から、事なかれ主義でそっとしておくことを提案したんだけど。
対照的に、アリエッタは話すべきことはちゃんと話しておいた方がいいという、陽キャ的な価値観を持っていた。
「逆に今じゃないと話せないこともあるでしょ?」
そう言うと、アリエッタは立ち上がったユリーナのところに近づいていく。
俺は内心ハラハラしながらも、推しの子の決断を尊重して、少しだけ距離を取りながらアリエッタに着いていった。
勝ち名乗りを聞いたアリエッタが、満面の笑みで俺に飛びついてきた。
おふわぁっ!?
推しにダイビング・ギューをされちゃったんだが!?
きゃっほう!
俺も恐るおそる抱き返してみたが、アリエッタは嫌がるような素振りを見せはしない。
最高ですか!?
最高です!!!
「やったな。特に最後はすごかったぞ。あれはライオネル・ストライクを改造して、威力に全振りしたんだよな?」
俺は推しの子に飛びつかれて抱き着かれる幸せを強く噛みしめながら、気を抜いた途端にふやけそうになる顔を必死にキープしつつ、さっきのフィニッシュシーンを振り返った。
「さすがユータね。正解よ」
俺の腕の中でアリエッタがちょっと自慢げに微笑む。
この世界でのアリエッタは、魔法を構成する魔法式を改造して派生魔法を作るという、元の世界にはなかった、それはもうものすごいオンリーワンのスキルを習得している。
ルナとの戦いで見せた、パワーを落として移動用に特化したライオネル・ストライク・トランジットに続き。
パワーに全振りしたライオネル・ストライク・フルチャージという新たなるバリエーションを、アリエッタは俺にも内緒で開発していたのだ。
(内緒というか、多分だけどまだ未完成だったんだと思う)
と、そこでアリエッタが抱き着く手を緩めたので、俺も抱き返す力を緩めた。
2人の身体が離れるとともにアリエッタの温もりも薄れていったが、人前で抱き合うのは元陰キャにはなかなかハードルが高いので、すぐに離れてくれて、これはこれで助かったかも?
そんなアメリカ人みたいな大胆さがあったら、誰も好き好んで陰キャなんてしてなかったわけで。
「移動用とかいろいろマイナーチェンジしていけば、当然パワー全振りも選択肢に上がるよな。それでもSSランクの防御魔法を、真っ向勝負で貫通するとは思わなかったぞ」
「なにせ元の魔法が、パワー自慢のライオネル・ストライクだからね。ま、威力が上がった分だけ、ただでさえ悪かった命中精度はほとんどなくなっちゃったんだけど。じゃじゃ馬すぎて、まっすぐ進むのですらギリギリできるかできないかって、そんなレベルだから」
アリエッタが苦笑する。
「ただでさえ低い命中率が、さらに下がっているってことか」
まっすぐ進むのすら怪しいとか、もはや命中とかそういう次元じゃない。
それはつまり、止まっている相手にすら外す可能性の方が高いってことだから。
俺はつられて苦笑した。
「だからもしユリーナが、アブソリュート・グレイシャー・フリージング・シールドで受け止めずに回避を優先していたら、100%かわされていたわ」
「最後は結構バクチだったんだな」
「バクチじゃなくて勝負に行ったって言いなさいよね。失礼しちゃうわ」
「ごめんごめん」
俺が両手を合わせて謝ると、アリエッタは「もーっ!」って顔をしながら小さく笑う。
失礼と言いながら、特に怒ってはいないようだ。
ふぅ、やれやれ。
相変わらずアリエッタは可愛いなぁ。
「正直言うとね。ユリーナがバックステップでもたついた振りをしたのに、完全に釣られちゃったのよね」
「あそこはやっぱり、ユリーナにしてやられたのか」
「しかもアイシクル・スピアで、こっちの動きを完全に止められちゃったでしょ? ヤバッて思ったんだけど。逆にそれで踏ん切りも付いたかな。こうなったらもう行くしかないって瞬時に思い直して、勝負に行ったの」
「勝負した結果、大正解だったってわけか」
「まぁね。でも、ちょっと不思議なのよね」
「不思議って何がだ?」
「私としては8割がたユリーナはかわすだろうって思ったから。なのに真っ正面から受け止めにきたわ……うん、せっかくだしそれも含めて少しユリーナと話をしてこようかな」
「あー、今はどうだろ? 止めた方がよくないか? 負けた直後でプライドもズタズタだろうし、あんまり刺激しない方がいいんじゃないか?」
俺は陰キャ的な価値観から、事なかれ主義でそっとしておくことを提案したんだけど。
対照的に、アリエッタは話すべきことはちゃんと話しておいた方がいいという、陽キャ的な価値観を持っていた。
「逆に今じゃないと話せないこともあるでしょ?」
そう言うと、アリエッタは立ち上がったユリーナのところに近づいていく。
俺は内心ハラハラしながらも、推しの子の決断を尊重して、少しだけ距離を取りながらアリエッタに着いていった。
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