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第3章 1年生タッグトーナメント

第62話「いつから俺が、神龍剣レクイエムがないと魔法が使えないと錯覚していた?」

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「本気ぃ? ヒヒッ、言ってロ! ヒャッハー!」

「頼むから死なないでくれよな。俺は事故であっても、人殺しはしたくないんだ」
「イヒっ――?」

「神龍の牙よ、敵を穿うがて――ペンドラゴン・ファング」

 俺が右手に魔力を込めると、軽く2000発を超える膨大な数の聖光弾が俺の前に現れ、それがすぐさまキララへと殺到した。
 ほぼ全弾を至近距離で直撃したキララは、一瞬で防御加護を失ってガードアウトし、場外まで吹っ飛んでいく。

 キララは闘技場(デュエルスタジアム)全体を覆う巨大な防御加護にぶち当たると、糸の切れたマリオネットのようにボトリと地面に落下した。

「あ……ぐ……そんな……魔法は使えない……はずじゃ……」

 お、良かった。
 口調がいつものキララだ。
 今の衝撃で正気に戻ったみたいだな。

 それと生きてて良かったぁ。
 さすがタフネス自慢の怒りの精霊フラストレだ。
 そのことだけは感謝するよ。

 そして決勝戦に相応しい激しい戦いに、おおいに盛り上がりをみせていた観客席が、一瞬にして静まり返った。

「だから話を聞けって言っただろ?」
「え……?」

「いつから俺が、神龍剣レクイエムがないと魔法が使えないと錯覚していた?」

「だって、おにーさんが……自分で、使えないって……言ったはずで……」
 うつ伏せに倒れながら、必死に顔を上げて俺に言葉を返すキララ。

「それなんだけどさ。勘違いしてるんだよな」
「かん……ちがい……?」

「魔法が使えないってのは、威力が高すぎて下手したら殺してしまうから使えないって意味だ」

「ほえ……?」
 キララの顔が呆気にとられたようにポカーンとなる。

「神龍剣レクイエムの『否定』の概念魔法は、所有者の俺自身にもいくらか作用しているんだ。つまり俺は今まで常に、魔法の威力が抑えられた状態で戦っていたのさ」

「そん、な……だって、あんなに強かった、のに…威力が抑えられて……いた、なんて……」

「悪いが俺は超強いんだ。自慢してるみたいだから、何度も言わせるなよな?」

 俺の全てを注いで育て上げてきたLV99神騎士は、伊達じゃない!

「――っ」
 自信満々で告げた俺の言葉に、キララが絶句した。

「ただ、それがちょうど良かったんだよな。俺は力を抑えてくれるものがないと、Dランク魔法ですらこの威力になっちまうだろ? 姫騎士同士の戦いで、これはちょっと使えないもんな」

 攻撃力があまりに過剰すぎて、冗談抜きで相手を殺してしまう可能性があったから。
 姫騎士は敵でもなんでもなく、共に戦う仲間なんだからな。

 やりすぎは良くない。
 殺りすぎも良くない。

「でも良かったよ。さすがは怒りの精霊フラストレと同化しているだけのことはある。さすがの耐久力だ」

 殺さずに済んで本当に良かった。

「じゃあ……剣がないと魔法が使えないってのは、本当に……」

「ああ、キララたちの完全な思い込みさ。神龍剣レクイエムは『否定』の概念魔法以外にも、基本スペックも高いし本当に便利な武器だが、使い手にデメリットもある。そして俺はそのデメリットを上手く使って、自分の力を適度に抑えていたんだ」

「あはは……すごいやおにーさん、本当に、すごい……」

 その言葉を最後にキララの首がガクッと落ち、微動だにしなくなった。
 それを契機に、衝撃の光景に言葉を失っていたリューネたち回復係が、一斉に集まってきて治療を始める。

 しかしキララは全くの無反応。
 耳元での呼びかけにも応じない。

 ……(滝汗)

 えーと、大丈夫だよな?
 ついに力尽きて死んでしまったわけではなく、気絶のはずだ。

 ……だと思う。多分。きっと。メイビー。
 怒りの精霊フラストレの防御加護の分厚さを、俺は信じているからな?

 ともあれ、これで残すはユリーナだけとなる。

 俺が視線を向けると、向こうの戦いもそろそろ決着の時を迎えようとしていた。
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