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第3章 1年生タッグトーナメント

第53話 決勝戦――前のバチバチの舌戦

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 そして少しの休憩の後、迎えた1年生タッグトーナメントの最終戦となる決勝戦。

 メイン闘技場(デュエルスタジアム)では俺&アリエッタ組と、ユリーナ&キララ組がマッチアップしていた。

「やはり勝ちあがってきましたわね、アリエッタ・ローゼンベルク。それと無礼男ユウタ・カガヤ」

 顔を合わせてすぐに、ユリーナが美しい縦ロール金髪をサラリとかき上げながら、不敵に笑った。

「ぶ、無礼男って……」
 酷い覚えられ方すぎる。

 ユリーナの言葉に、アリエッタが横目で俺を見ながらプッと噴き出した。

「こうして決勝の場であなた方と相まみえる日を、待ちわびていましたわよ。ま、途中で負けているようでは、わたくしのライバルには到底相応しくはありませんけれど」

 ユリーナの視線は俺ではなく、明らかにアリエッタにのみ向けられている。
 あくまで俺はついでで、ユリーナの本命は1年生主席のアリエッタなんだろうな。

「へぇ? この日を待ちわびていたなんて、そんなに負けるのが楽しみだったの?」

「なんですって!? この、ちょっと首席入学だからって調子に乗りくさりやがって……!」

「ユリーナさん、お言葉がお乱れあそばしておられますわよ?」

「……はっ!? こ、こほん。その手には乗りませんわよ。挑発してわたくしをカッカさせて判断を誤らせようという姑息な魂胆なのでしょうけど、無駄ですわ。大海のごとく心広きわたくしには、全く効果はありませんから」

 すげぇ。
『調子に乗りくさりやがって』とか言っちゃってたのに、さも何ごともなかったかのようにまたお嬢さま言葉で話し始められるユリーナの超鋼メンタルを、俺は心底見習いたい!

 っていうかお嬢さまって、実は裏ではこんなはすっぱな言葉を使ってるんだな。

(後から知ったのだが、メイドのキララが日常的に最新の庶民言葉を使うせいでユリーナもついつい使ってしまうらしい)

「はぁ? 姑息ですって? ちょっとユリーナ。そこ訂正しなさいよ。名誉棄損で訴えるわよ」

 そしてちょっとしたフレーズに噛みついちゃうアリエッタ。
 相変わらずプライド高すぎなお嬢さまで、可愛い奴だなぁ、もう。

「ふふん。すぐに2人まとめて倒して、わたくしこそが1年生の主席に相応しいことを、ここにいる皆に知らしめて差し上げますわ」

 そして相手の言うことなんか聞いちゃいないように、自分の話したい話を続けるユリーナ。

 傍から聞いていると会話になっていないように感じるんだけど、当人たちはあまり気にした様子もなく、話はどんどんと進んでいく。

「そうね。こうやって粘着されるのもいい加減わずらわしいし、改めてどちらが上か見せつけてあげる」

「なっ、粘着ですって……!」
 ユリーナの端正な顔が真っ赤になった。

 おいおい、お前さっき『その手には乗りませんわよ』とか言ってただろ。
 アリエッタの挑発(とも言えない軽い煽り)に乗りまくってんじゃん。
 煽り耐性が豆腐でできてんのかよ?
 
「しつこい女は嫌われるわよ? ね、ユータ?」
「ここで急に俺に振らないで欲しいな!」

 この無益な争いに俺を巻き込まないでくれ。

 しかしここでアリエッタがにっこりとほほ笑んだ。
 俺に向かって最高の笑顔が向けながら、甘えるように言ってくる。

「ね♪ ユータもそう思うよね♪」

 俺の口は自然とそれに反応した。

「そうだぞユリーナ。物事は引き際が肝心だ。素直に劣っていること認めて引き下がろう」

「くっ、2人して言わせておけば……! 今に見てなさいな、その余裕ぶった態度を2度と取れなくして差し上げますわ!」

 開始前からバチバチにやり合うアリエッタとユリーナ。
 そこに巻き込まれるも、速攻でアリエッタに味方する俺。

 とそこで。
 ここまで唯一、我関せずだったキララが右手をシュバっと上げて口を挟んできた。

「ねーねー、ユリーナ様! お話は終わった? だったら早くやろうよー! キララ、決勝まで何もするなって言われてストレスマッハなんだから! 早く戦いたい!」

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