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第3章 1年生タッグトーナメント

第50話 準決勝(4)烈火の姫騎士アリエッタvs舞風の姫騎士ルナ(下)

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 アリエッタがAランク魔法を何度も連発できるからくりとは、こうだ。

 使っている魔法こそAランクのライオネル・ストライクだが、アリエッタは魔力消費を限界まで抑えているのだ。

 毎日のようにアリエッタと付きっきりで模擬戦闘訓練をしていた俺には、それがすぐに分かった。
 ライオネル・ストライク最大の欠点である発動の遅さも、わずかに改善されている。

 炎の獅子という派手な見た目なだけは維持しているが――見た目でバレないようにだろう――あのライオネル・ストライク・トランジットという移動魔法には、威力だけならSランクと称されるライオネル・ストライク本来の威力はない。

 アリエッタ本人も、完全に移動技として割り切っているはずだ。
 だから魔力の消費も少ないし、連発することができるのだ。

 それにしてもまさか、魔法のオリジナル改変とはな。
 低ランク魔法ならまだしも、わずかの無駄もなく緻密ちみつに組み上げられたAランクの魔法だぞ?

 俺も授業で、魔法を形作る魔法式の細かいところを見る機会があったんだけど、Aランクの魔法はぶっちゃけチンプンカンプンだった。

(それでも誰よりもうまく魔法が使えてしまうのは、俺がLV99の神騎士だからなんだろうな。正直、真面目に魔法式を勉強して習得に励んでいるクラスメイトたちには、ほんと申し訳ない気持ちしかない)

 そしてアリエッタは秀才型だけあって、習得した魔法の完成度が非常に高く、個々の魔法への理解も極めて深い。
 そんなアリエッタだからこそできる、Aランク魔法のオリジナル改変という離れ業だった。

 すごいぞアリエッタ。
 魔法を独自に改変するなんて、こんなのはソシャゲでもなかった展開だ。
 俺が想像していた以上にアリエッタは成長していたんだな!

 ブラボー!
 ブラーボー!

 さすがアリエッタ!
 俺の推しの子は伊達じゃない!(超ドヤ顔)

「あーもう! ほんとアリエッタってすごいよね! 英才教育を受けてきただけあって、たまたま姫騎士の才能があっただけの庶民上がりのアタシとは、マジほんと比べ物になんないし。それは認めるよ!」

「だからなに? ズルいとでも言いたいわけ?」

「でもね! それがどうしたっていうの? そもそもスピードじゃ、属性最速を誇る風魔法に勝てるわけないじゃん。だから何度やっても無駄だもん! アタシには永遠に追いつけるわけがないし、先に魔力が尽きるのはそっちだし!」

「じゃあ次で最後にするね」

「え――?」

 もう何度目か分からないライオネル・ストライク・トランジットをかわしたルナが、驚愕の表情を向けた。
 かわしたはずのライオネル・ストライク・トランジットではなく――声がした自分の真横へと。

 そこには不適に微笑むアリエッタがいた。

「なんでそこにアリエッタが――? だってアリエッタは、あの炎の獅子の中にいるはずじゃ――」

「風魔法の姫騎士に追いかけっこで勝てるなんて、はなから思っていないわ。何度も繰り返したのは、あの炎の中に私がいるってルナに思いこませるため。こうして炎の獅子からこっそり離脱して、かわした後の隙をつくためにね」

「まさか全部、計算づくだったの? この瞬間を作り出すための――」
「そういうことよ!」
「そんな――」

「この至近距離なら目をつぶったって外さないわ。喰らいなさい、炎の獅子の雄たけびを! 炎獅子咆哮! ライオネル・ストライク!」

 移動用とは違うフルパワーのライオネル・ストライクが至近距離でルナにクリティカルヒットした!

「っ、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」

 圧倒的優勢から一転、防御加護を一発で全削りされてガードアウトし、さらには場外まで吹き飛ばされて動かなくなったルナに、リューネたち救護係が一目散に集まってくる。

 もちろんアリエッタは今回も最後の最後で力を緩めていたようで、ルナは大事には至っていない。

(大股開きでひっくり返っているせいで、スカートの中の薄緑色のパンツが全開で見えてしまっているが。なんて言うかその、薄くて透け感があってピッチリしていて、すごく扇情的なアダルティな下着だった)

「そんな……ルナが負けるなんて……」
 そしてルナの敗北を目の当たりにしたミリアが、呆然自失といった表情でつぶやいた。
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