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第3章 1年生タッグトーナメント

第42話 ユリーナ・リリィホワイト(1)

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「……ユリーナ。おはよう」

 アリエッタがダダ下がっていくテンションを隠そうともせずに、億劫おっくうそうに挨拶を返した。
 ローゼンベルクの姫騎士として厳しく育てられてきたアリエッタが、挨拶だけでこうまで露骨に嫌な顔をするのは珍しい。

 アリエッタの視線の先に俺も視線を向けると、そこには長く美しい金髪で豪勢に形作った縦ロールを、さらりとかきあげる美少女がいた。

「ごきげんよう。てっきりふさぎ込んでいるかと思って心配しておりましたのに、元気そうでなによりですわ」

「ふん、大きなお世話よ」

「あら、それは失礼いたしましたわ、男に負けたアリエッタさん」

「なに? さっきから癇に障る言い方ね。嫌味を言いにきたわけ?」
「いえ、単なる事実の確認ですわ。おほほ」

 おおっと、これまた見たことがある顔だな。
 ソシャゲでパートナーヒロインの1人だった、氷華の姫騎士ユリーナ・リリィホワイトだ。

 いつもアリエッタと一緒にいて合同イベントなども多かったリューネほどではないが、アリエッタのライバル的ヒロインで、割と絡みがある姫騎士でもある。

 名門姫騎士の子女が多く、お金持ちが多いブレイビア学園。
 その中でも群を抜いてお金持ちで、学園一の美人と言われるエレナ会長とタメを張るほどの美少女だ。

 どちらも名門の美少女姫騎士だけど、アリエッタが『高貴な子猫』って感じなのに対して、ユリーナは『美しく咲き誇った大輪の百合の花』って感じかな。

 クラスは1年2組。
 俺やアリエッタとは違うクラスだ。

 しかしこうやって画面を通さずにリアルで対面すると、本当に美人だな。

 そして美人なユリーナは、背後にこれまた美少女2人を引き連れていた。
 顔がそっくりの2人の姫騎士だ。

 この子たちは学園の制服を着ているけど、実際はユリーナのメイドなんだっけ。

 一応、姫騎士としての能力は持っているらしいけど、ゲームではプレイアブル(使用可能キャラ)ではなかったはず。

 でもユリーナの個別シナリオだと、この双子メイドもプレイアブルになるんだっけ?
 パートナーヒロインにユリーナを選ぶことの利点に、この双子メイドをパーティ編成できることがあった気がする。
 たしか双子のどっちかが鬼強いとかなんとか。

 しかし俺はアリエッタ一本推し。
 残念ながらアリエッタ以外のヒロインの、特別なパーティ編成キャラについてまでは、詳しくはなかった。

「それで、あなたがアリエッタを負かした男の姫騎士? ふぅん、なんともパッとしない顔ですわね」

 ユリーナが品定めでもするかのように俺を見た。
 言葉からも態度からも、露骨に見下しているのが分かったが、転移前は学校カーストの最下層に甘んじていた俺は、そういう視線には慣れているんだよな。

「初めまして。ユウタ・カガヤだ。いろいろあってこの学園に入学することになった。同じ1年生同士、よろしくな」

 俺はぶしつけな視線には気付かない振りをして挨拶をした。
 握手をしようと右手を差し出すが、ガン無視されてしまう。

 いや、いいけどね。
 俺はLv99の神騎士だしな。

 握手を露骨に拒否られたからといって、いちいちイラついたりはしない。
 これが大人の対応というやつである。
 アリエッタにされたらガチ泣きするけど。

「ユリーナ・リリィホワイトよ」
「よろしく、ユリーナ」

 俺はアリエッタもリューネもルナも呼び捨てにしているのもあって、特に気にせず呼び捨てで呼んだんだけど、

「初対面でこのわたくしを名前で呼び捨てにするとは、なんて無礼な……!」

 ユリーナの端正な顔が怒りに染まった。

「え?」
「その無礼、姫騎士の名門の中の名門たるリリィホワイト家への侮辱とみなしますわ!」

 そこで己の失敗にはたと気付く。

 くそ、またやっちまった。
 ソシャゲをプレイするユーザーは誰も『リリィホワイトさん』なんて呼び方はしないから、ついユリーナって呼んでしまった。

 まったくもってソシャゲ感覚が抜け切れていない。

「ごめん、侮辱するようなつもりはなかったんだ。つい流れで呼んじゃってさ」

「問答無用ですわ! この屈辱は決闘で晴らさせていただきます!」

 ユリーナがビシィっと俺に指を突き刺した。

「またこの展開かよ!?」
 ブレイビア学園の姫騎士たち、簡単に決闘しすぎじゃね!?
 ちょっと名前で呼んじゃっただけじゃん!

 カルシウム足りてないんじゃないのか?
 牛乳飲もう!

 正直、決闘するほどでもなくね?
 ってナチュラルに思っちゃうのは、俺が自由平等の日本で育った庶民だからなのだろうか?

 俺がどうしたものかと頭を悩ませていると、

「ユータ、真面目に相手しなくていいわよ」
 アリエッタが呆れ声で呟いた。
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