40 / 132
第2章 ブレイビア学園
第39話 ~謎のお嬢さまSIDE~ ユリーナ・リリィホワイト(1)
しおりを挟む
~謎のお嬢さまSIDE~
ユウタが学園生活初日を迎え、アリエッタとの充実した模擬戦闘訓練を行った日の午後。
学生寮の一画に特別にしつらえられた豪奢な部屋にて、一人のブレイビア学園生が優雅にアフタヌーンなティーを嗜んでいた。
高貴さをこれでもかと主張している端正な顔立ち。
長く美しい金髪を豪奢な縦ロールにセットしているのが、特に目を引いている。
名をユリーナ・リリィホワイトと言う。
王国一のお金持ち姫騎士家系であるリリィホワイト家。
そんな名門の中の名門を継ぐべくして生まれたユリーナは、幼い頃より最高の環境で姫騎士の英才教育を受け、満を持してここブレイビア学園に入学した。
1年生主席こそアリエッタに譲ったものの、たった5人しかいない1年生Aランクの1人でもある、それはもう優秀な姫騎士だった。
そんな高貴お嬢さまなユリーナすぐ側には、可愛らしいメイド服をまとった10代の女の子が――見れば誰もが幸せになる慈愛に満ちた柔らかい笑顔を湛えている――背筋をピンと伸ばした美しい姿勢で佇んでいる。
「今日の紅茶はとてもよろしいですわね。透きとおるような透明感の中に、一筋のまろやかなフレーバーが控えめな自己主張をしていて、実に鮮やかな飲み心地ですわ。おかげで今日一日の疲れが吹き飛びました」
紅茶のカップを置いたユリーナが、満足そうに呟いた。
ちなみにユリーナは午後の実技訓練には参加していない。
姫騎士として高い修練を積んできたユリーナにとって、1年生同士の実技訓練などたいして意味を持たないからだ。
アリエッタやルナとの模擬戦闘訓練ならそれなりの意味はあるだろうが、特に目の上のたんこぶなアリエッタと仲良しこよしをするつもりは、ユリーナにはありはしなかった。
「ユリーナ様のご実家より、大変珍しい茶葉が届きましたので、早速ブレンドしてお出しいたしました。お口にあったようでなによりです」
お側に控えていたメイドがすぐに、わずかに笑みを深めながら言葉を返す。
「クララ、あなたは本当にできたメイドですわね。お母さまにも、改めて伝えておきますわ」
「お褒めにあずかり光栄です」
「ええ、本当に気に入りましたわ。お代わりを貰えるかしら」
「かしこまりました」
空になったカップにクララが2杯目の紅茶を注ぐ。
ユリーナお嬢さまとメイドのクララが、優雅な午後のお紅茶タイムをしていると、
ドンドンドンドン!
部屋のドアが騒々しくノックされたかと思うと、バタンと勢いよく開かれて、
「ユリーナ様! ユリーナ様! ビッグニュースだよビッグニュース! しかもベリーベリービッグなニュース!」
クララと同じ仕立ての可愛らしいメイド服をまとった女の子がもう一人、息せき切って駆け込んできた。
「キララお姉さま、ユリーナ様の前で騒々しいですよ」
すぐにクララがその品のない言動を嗜めるが、キララと呼ばれた元気少女は気にも留めずに口を開く。
「もうクララってば、今はそんなことは、どーでもいいの! あのねあのねユリーナ様! 極秘情報を掴んだの! 聞いて聞いて!」
「極秘情報? 一体何の情報なのかしら?」
キララの無作法には慣れたものなのか、特に気にした様子もなく、優雅な仕草で先を促すユリーナ。
ちなみにキララとクララという2人のメイドは、背格好だけでなく顔までもがうり二つというレベルで酷似している。
事実、2人は一卵性の双子だった。
落ち着いているクララが妹で、騒々しいキララが姉である。
どう考えても姉妹が逆の方が収まりがいいのだが。
悲しいかな、赤子の時分に内面的な性格に気付ける人間などいはしない。
たとえそれが産みの親であってもだ。
さらにこの2人は共に姫騎士の才能を持ったメイド姫騎士であり、ユリーナの学園生活をサポートするため、ユリーナと時を同じくしてブレイビア学園に入学してきたのだった。
「ユリーナ様のライバルのアリエッタを負かした、ユウタって男の姫騎士の情報なんだけどね」
「彼について何か分かりましたの?」
キララの言葉に、ユリーナは大いに興味を示したように身を乗り出した。
というのもだ。
アリエッタのローゼンベルク家と、ユリーナのリリィホワイト家は、どちらも優秀な姫騎士を多数輩出している名門中の名門なのだが。
しかし入学時の姫騎士適性試験でアリエッタが1位で主席、ユリーナが僅差の2位にという結果になり、首席入学するつもり満々だったユリーナのプライドは、ズタズタのボロボロのボロクソのギタンギタンの、ポイする寸前のボロ雑巾がごとくズタボロにされてしまったのだ。
それ以来ユリーナは、アリエッタのことを一方的に激しくライバル視していた。
ユウタが学園生活初日を迎え、アリエッタとの充実した模擬戦闘訓練を行った日の午後。
学生寮の一画に特別にしつらえられた豪奢な部屋にて、一人のブレイビア学園生が優雅にアフタヌーンなティーを嗜んでいた。
高貴さをこれでもかと主張している端正な顔立ち。
長く美しい金髪を豪奢な縦ロールにセットしているのが、特に目を引いている。
名をユリーナ・リリィホワイトと言う。
王国一のお金持ち姫騎士家系であるリリィホワイト家。
そんな名門の中の名門を継ぐべくして生まれたユリーナは、幼い頃より最高の環境で姫騎士の英才教育を受け、満を持してここブレイビア学園に入学した。
1年生主席こそアリエッタに譲ったものの、たった5人しかいない1年生Aランクの1人でもある、それはもう優秀な姫騎士だった。
そんな高貴お嬢さまなユリーナすぐ側には、可愛らしいメイド服をまとった10代の女の子が――見れば誰もが幸せになる慈愛に満ちた柔らかい笑顔を湛えている――背筋をピンと伸ばした美しい姿勢で佇んでいる。
「今日の紅茶はとてもよろしいですわね。透きとおるような透明感の中に、一筋のまろやかなフレーバーが控えめな自己主張をしていて、実に鮮やかな飲み心地ですわ。おかげで今日一日の疲れが吹き飛びました」
紅茶のカップを置いたユリーナが、満足そうに呟いた。
ちなみにユリーナは午後の実技訓練には参加していない。
姫騎士として高い修練を積んできたユリーナにとって、1年生同士の実技訓練などたいして意味を持たないからだ。
アリエッタやルナとの模擬戦闘訓練ならそれなりの意味はあるだろうが、特に目の上のたんこぶなアリエッタと仲良しこよしをするつもりは、ユリーナにはありはしなかった。
「ユリーナ様のご実家より、大変珍しい茶葉が届きましたので、早速ブレンドしてお出しいたしました。お口にあったようでなによりです」
お側に控えていたメイドがすぐに、わずかに笑みを深めながら言葉を返す。
「クララ、あなたは本当にできたメイドですわね。お母さまにも、改めて伝えておきますわ」
「お褒めにあずかり光栄です」
「ええ、本当に気に入りましたわ。お代わりを貰えるかしら」
「かしこまりました」
空になったカップにクララが2杯目の紅茶を注ぐ。
ユリーナお嬢さまとメイドのクララが、優雅な午後のお紅茶タイムをしていると、
ドンドンドンドン!
部屋のドアが騒々しくノックされたかと思うと、バタンと勢いよく開かれて、
「ユリーナ様! ユリーナ様! ビッグニュースだよビッグニュース! しかもベリーベリービッグなニュース!」
クララと同じ仕立ての可愛らしいメイド服をまとった女の子がもう一人、息せき切って駆け込んできた。
「キララお姉さま、ユリーナ様の前で騒々しいですよ」
すぐにクララがその品のない言動を嗜めるが、キララと呼ばれた元気少女は気にも留めずに口を開く。
「もうクララってば、今はそんなことは、どーでもいいの! あのねあのねユリーナ様! 極秘情報を掴んだの! 聞いて聞いて!」
「極秘情報? 一体何の情報なのかしら?」
キララの無作法には慣れたものなのか、特に気にした様子もなく、優雅な仕草で先を促すユリーナ。
ちなみにキララとクララという2人のメイドは、背格好だけでなく顔までもがうり二つというレベルで酷似している。
事実、2人は一卵性の双子だった。
落ち着いているクララが妹で、騒々しいキララが姉である。
どう考えても姉妹が逆の方が収まりがいいのだが。
悲しいかな、赤子の時分に内面的な性格に気付ける人間などいはしない。
たとえそれが産みの親であってもだ。
さらにこの2人は共に姫騎士の才能を持ったメイド姫騎士であり、ユリーナの学園生活をサポートするため、ユリーナと時を同じくしてブレイビア学園に入学してきたのだった。
「ユリーナ様のライバルのアリエッタを負かした、ユウタって男の姫騎士の情報なんだけどね」
「彼について何か分かりましたの?」
キララの言葉に、ユリーナは大いに興味を示したように身を乗り出した。
というのもだ。
アリエッタのローゼンベルク家と、ユリーナのリリィホワイト家は、どちらも優秀な姫騎士を多数輩出している名門中の名門なのだが。
しかし入学時の姫騎士適性試験でアリエッタが1位で主席、ユリーナが僅差の2位にという結果になり、首席入学するつもり満々だったユリーナのプライドは、ズタズタのボロボロのボロクソのギタンギタンの、ポイする寸前のボロ雑巾がごとくズタボロにされてしまったのだ。
それ以来ユリーナは、アリエッタのことを一方的に激しくライバル視していた。
10
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる