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第2章 ブレイビア学園
第38話 ~アリエッタSIDE~
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~アリエッタSIDE~
ベッドでのユータとの会話を終えた私は、真っ暗な部屋で静かに目を閉じた。
すぐに隣から、スースーという規則正しいユータの寝息が聞こえてくる。
「さっきの今で、ユータってばもう寝てるし。ちょっと寝つきがよすぎるんじゃない? 寝つきがよすぎるのもダメらしいわよ?」
ユータのあまりの寝つきの良さに、私は思わず苦笑してしまう。
「ほんと、変な男」
学園入学まで長らく面倒を見てくれていた教育係のメイドによると、庶民の男というものは、初対面でもさも知り合いであるかのように振る舞って、甘い言葉と献身的な行動で女の子を誘惑してくるらしい。
メイドはたしかナンパと呼んでいた。
そして仲良くなった途端に本性を剥き出しにして、子孫を残そうという本能に従って隙あらば女の子を妊娠させようとする、それはもうハレンチ極まりない生き物なのだそうだ。
そしてユータはというと、初対面なのに妙に優しくて、私のことをまるで王家のプリンセスであるかのように扱ってきた。
ユータは一見、メイドの言った通りのナンパ男に見える。
というか、そのものズバリだ。
「でもユータが言ってることはなんとなく、スッと受け入れられちゃうのよね。見守ってくれているっていうのかな? 好意を向けてくるのに、わずかに一歩引いているっていうか」
付かず離れずのユータと話していると、胸の中がなんだかフワフワとしてくるのだ。
「それに今日の模擬戦闘訓練だって、私が強くなれるようにって色々と考えて戦ってくれていたみたいだし」
いくら男の目的が女の子を妊娠させるためだとしても、果たしてそこまでするだろうか?
しかもそれをひけらかすでもなく、私に指摘されるまでは黙っていたときた。
もし下劣なナンパからの妊娠が目的なら、こんな回りくどいことはしないはず。
むしろここぞとばかりにアピールしまくるのでは?
気を使ってくれていて、明らかに好意を感じるのに、適度な距離感を保ってくる。
ユータの行動はメイドの言っていたナンパ男とは、どこか違っている気がした。
「そういえば『推し』だっけ? そんなことを言ってたわよね」
イマイチ正確な意味は分からないが、これが『推し』なのだとしたら、決して嫌な気分ではなかった。
でもなんとも気恥ずかしくて、つい『ユータが私の何を知ってるっていうのよ!』とか言っちゃうんだよね。
だって言うでしょ!
「――って。さっきから私、ユータのことばっかり考えちゃってるし。なんでだろう? まぁいいや。いい加減、寝ようっと」
私は布団を首元まで引き上げた。
(ふふっ、昨日はすごくよく眠れたんだよね。ユータってば、実は回復効果のある魔法でも持ってるのかな? うん、今日も気持ちよく寝れちゃいそう)
そんなことを考えていると、数分も経たないうちに、私の意識は眠りへと落ちて行った――。
~アリエッタSIDE END~
ベッドでのユータとの会話を終えた私は、真っ暗な部屋で静かに目を閉じた。
すぐに隣から、スースーという規則正しいユータの寝息が聞こえてくる。
「さっきの今で、ユータってばもう寝てるし。ちょっと寝つきがよすぎるんじゃない? 寝つきがよすぎるのもダメらしいわよ?」
ユータのあまりの寝つきの良さに、私は思わず苦笑してしまう。
「ほんと、変な男」
学園入学まで長らく面倒を見てくれていた教育係のメイドによると、庶民の男というものは、初対面でもさも知り合いであるかのように振る舞って、甘い言葉と献身的な行動で女の子を誘惑してくるらしい。
メイドはたしかナンパと呼んでいた。
そして仲良くなった途端に本性を剥き出しにして、子孫を残そうという本能に従って隙あらば女の子を妊娠させようとする、それはもうハレンチ極まりない生き物なのだそうだ。
そしてユータはというと、初対面なのに妙に優しくて、私のことをまるで王家のプリンセスであるかのように扱ってきた。
ユータは一見、メイドの言った通りのナンパ男に見える。
というか、そのものズバリだ。
「でもユータが言ってることはなんとなく、スッと受け入れられちゃうのよね。見守ってくれているっていうのかな? 好意を向けてくるのに、わずかに一歩引いているっていうか」
付かず離れずのユータと話していると、胸の中がなんだかフワフワとしてくるのだ。
「それに今日の模擬戦闘訓練だって、私が強くなれるようにって色々と考えて戦ってくれていたみたいだし」
いくら男の目的が女の子を妊娠させるためだとしても、果たしてそこまでするだろうか?
しかもそれをひけらかすでもなく、私に指摘されるまでは黙っていたときた。
もし下劣なナンパからの妊娠が目的なら、こんな回りくどいことはしないはず。
むしろここぞとばかりにアピールしまくるのでは?
気を使ってくれていて、明らかに好意を感じるのに、適度な距離感を保ってくる。
ユータの行動はメイドの言っていたナンパ男とは、どこか違っている気がした。
「そういえば『推し』だっけ? そんなことを言ってたわよね」
イマイチ正確な意味は分からないが、これが『推し』なのだとしたら、決して嫌な気分ではなかった。
でもなんとも気恥ずかしくて、つい『ユータが私の何を知ってるっていうのよ!』とか言っちゃうんだよね。
だって言うでしょ!
「――って。さっきから私、ユータのことばっかり考えちゃってるし。なんでだろう? まぁいいや。いい加減、寝ようっと」
私は布団を首元まで引き上げた。
(ふふっ、昨日はすごくよく眠れたんだよね。ユータってば、実は回復効果のある魔法でも持ってるのかな? うん、今日も気持ちよく寝れちゃいそう)
そんなことを考えていると、数分も経たないうちに、私の意識は眠りへと落ちて行った――。
~アリエッタSIDE END~
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