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第2章 ブレイビア学園
第37話 アリエッタがデレている……?
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「学園の授業なんだから、アリエッタに感謝されるようなことじゃないっての」
妙に真面目な声色のアリエッタに、俺は軽く笑って言葉を返す。
「そんなこと言って、途中からは自分の事よりも、私が効率よく強くなれるようにって、上手く立ち回ってくれてたでしょ?」
「なんだ、気付いてたのか」
「そりゃあ気付くわよ。私の攻撃がギリギリが届かないところで回避したり、私がなんとか防御できるように少し力を抜いた攻撃をしてきたり、絶妙な手加減具合だったんだもん。まるでお姉さまに指導手合わせをしてもらっているみたいだったわ」
「ごめん、別に馬鹿にして手を抜いていたとかじゃないんだ。ただ、アリエッタに少しでも強くなって欲しいって思っただけでさ」
ソシャゲでは才能限界が低めに設定されていたせいで、とかく戦闘面で不遇ヒロインだったアリエッタに強くなってもらいたい。
俺の全てを注ぎ込んでアリエッタをサポートして、誰もが憧れる最強で最高の姫騎士にする。
その一心からの行動だったんだけど、あくまでそれは俺の気持ちの話であって、アリエッタにはバカにされているように感じたのかもしれなかった。
また「上から目線!」「調子乗って!」とか言われるのかと思ったら、
「最初にありがとうって言ったでしょ? ユータに悪意がなかったことくらい、分かってるわよ。それこそ私をあまりバカにしないでよね」
アリエッタが苦笑気味に呟いた。
そこには負の感情はこれっぽっちも感じられない。
しかもすごく素直な感じがした。
はっ!?
もしかしてもうデレているのか?
って、それはないか。
『運営がデレを設定し忘れている』『ツンの女王』とまで言われたアリエッタが、こんなすぐにデレるわけがない。
そりゃよほど相手のことが気に入ったとか、一目惚れしちゃったとかならまだしも、なにせ対象は元陰キャの俺なのだ。
今の俺はたしかに神騎士Lv99だが、大浴場で全裸で胸を揉まれるという、アリエッタにしてみれば『最悪の出会い』に始まり。
決闘では自分の強さに浮かれて、推し子のはずのアリエッタを完膚なきまでにボコってしまい。
相変わらずコミュニケーションは下手くそで、すぐにアリエッタを怒らせちゃっている俺だ。
そんな俺に既にアリエッタがデレている可能性は、どれだけ多めに見積もってもゼロだった。
だよな、うん。
俺だったからアリエッタがありえないくらいに特別早くデレてくれたとか、さすがに妄想が過ぎるよな。
完全に厄介オタクの思考だ。
非常によろしくない。
「アリエッタが俺の何を知ってるって言うんだ?」
俺は限りなく自分に都合のいい『イタイタしい妄想』を振り払うように、ちょっとおちゃらけた感じで、アリエッタによく言われる台詞を今度は俺が使ってみた。
「少なくとも、ユータが私のことを妙に気にかけてくれることくらいは知っているわね。なんでかは分かんないけどね。もしかして私とユータ、昔どこかで会ったことある?」
しかし絶妙にマジレをスされてしまう。
アリエッタはとっても真面目な子なのだ。
知ってたけど。
「いや、ないよ。でもちょっと分かんないかな」
そして、この問いに俺はこう答えるしかできなかった。
ソシャゲでパートナーヒロインに選んでいたからよく知っている――なんてことは信じてもらえないだろうから。
「そういえばユータは自分に関することとかが記憶喪失なんだっけ。ごめんね、変なことを聞いちゃって」
「全然気にしてないから、そこはスルーしてくれていいよ」
というか実は記憶喪失でもなんでもなくて、本当のことは言えないから黙っているだけなので、あまりに気にされてしまうと俺が心苦しい。
「それにユータみたいなすごい男の人に会ったことがあったら、忘れるわけがないもんね」
「それはちょっと買い被りすぎだ。俺は平凡以下だからさ」
「そんなことないでしょ。男の姫騎士って時点で前代未聞なんだし。ユータが平凡なら王国中の人間が平凡になっちゃうわ。私も含めてね」
「まぁその話はいいだろ?」
「なに? 照れてるの? ユータのくせに」
「そりゃ、今日もアリエッタにお世話してもらえるんだからな。照れもするさ」
「ふふん、名門ローゼンベルク家の姫騎士にお世話してもらえるんだから、光栄に思いなさいよね!」
「はいはい」
「はいは1回!」
「はーい」
シリアスな雰囲気から一転、アリエッタはすっかり元の調子を取り戻していた。
やっぱりアリエッタはこうじゃなくちゃな。
勝ち気でツンツン、一生懸命なのが俺の推すアリエッタ・ローゼンベルクなのだから。
そしていつかアリエッタにも、俺が異世界から来たことを話す日が来るのかもしれない。
その時アリエッタはどんな反応を示すんだろうか?
でもそれは今考えてもしょうがないことだ。
今は推しのアリエッタと一緒にいられる幸せに心行くまで浸っていよう。
その後もう少しだけ話をしてから、俺はとても幸せな気持ちで、今日もアリエッタと一緒のベッドで眠りについたのだった――。
むにゃあ……、推しのアリエッタと2日続けて一緒のベッドとか、この世界、最高過ぎるだろ……。
妙に真面目な声色のアリエッタに、俺は軽く笑って言葉を返す。
「そんなこと言って、途中からは自分の事よりも、私が効率よく強くなれるようにって、上手く立ち回ってくれてたでしょ?」
「なんだ、気付いてたのか」
「そりゃあ気付くわよ。私の攻撃がギリギリが届かないところで回避したり、私がなんとか防御できるように少し力を抜いた攻撃をしてきたり、絶妙な手加減具合だったんだもん。まるでお姉さまに指導手合わせをしてもらっているみたいだったわ」
「ごめん、別に馬鹿にして手を抜いていたとかじゃないんだ。ただ、アリエッタに少しでも強くなって欲しいって思っただけでさ」
ソシャゲでは才能限界が低めに設定されていたせいで、とかく戦闘面で不遇ヒロインだったアリエッタに強くなってもらいたい。
俺の全てを注ぎ込んでアリエッタをサポートして、誰もが憧れる最強で最高の姫騎士にする。
その一心からの行動だったんだけど、あくまでそれは俺の気持ちの話であって、アリエッタにはバカにされているように感じたのかもしれなかった。
また「上から目線!」「調子乗って!」とか言われるのかと思ったら、
「最初にありがとうって言ったでしょ? ユータに悪意がなかったことくらい、分かってるわよ。それこそ私をあまりバカにしないでよね」
アリエッタが苦笑気味に呟いた。
そこには負の感情はこれっぽっちも感じられない。
しかもすごく素直な感じがした。
はっ!?
もしかしてもうデレているのか?
って、それはないか。
『運営がデレを設定し忘れている』『ツンの女王』とまで言われたアリエッタが、こんなすぐにデレるわけがない。
そりゃよほど相手のことが気に入ったとか、一目惚れしちゃったとかならまだしも、なにせ対象は元陰キャの俺なのだ。
今の俺はたしかに神騎士Lv99だが、大浴場で全裸で胸を揉まれるという、アリエッタにしてみれば『最悪の出会い』に始まり。
決闘では自分の強さに浮かれて、推し子のはずのアリエッタを完膚なきまでにボコってしまい。
相変わらずコミュニケーションは下手くそで、すぐにアリエッタを怒らせちゃっている俺だ。
そんな俺に既にアリエッタがデレている可能性は、どれだけ多めに見積もってもゼロだった。
だよな、うん。
俺だったからアリエッタがありえないくらいに特別早くデレてくれたとか、さすがに妄想が過ぎるよな。
完全に厄介オタクの思考だ。
非常によろしくない。
「アリエッタが俺の何を知ってるって言うんだ?」
俺は限りなく自分に都合のいい『イタイタしい妄想』を振り払うように、ちょっとおちゃらけた感じで、アリエッタによく言われる台詞を今度は俺が使ってみた。
「少なくとも、ユータが私のことを妙に気にかけてくれることくらいは知っているわね。なんでかは分かんないけどね。もしかして私とユータ、昔どこかで会ったことある?」
しかし絶妙にマジレをスされてしまう。
アリエッタはとっても真面目な子なのだ。
知ってたけど。
「いや、ないよ。でもちょっと分かんないかな」
そして、この問いに俺はこう答えるしかできなかった。
ソシャゲでパートナーヒロインに選んでいたからよく知っている――なんてことは信じてもらえないだろうから。
「そういえばユータは自分に関することとかが記憶喪失なんだっけ。ごめんね、変なことを聞いちゃって」
「全然気にしてないから、そこはスルーしてくれていいよ」
というか実は記憶喪失でもなんでもなくて、本当のことは言えないから黙っているだけなので、あまりに気にされてしまうと俺が心苦しい。
「それにユータみたいなすごい男の人に会ったことがあったら、忘れるわけがないもんね」
「それはちょっと買い被りすぎだ。俺は平凡以下だからさ」
「そんなことないでしょ。男の姫騎士って時点で前代未聞なんだし。ユータが平凡なら王国中の人間が平凡になっちゃうわ。私も含めてね」
「まぁその話はいいだろ?」
「なに? 照れてるの? ユータのくせに」
「そりゃ、今日もアリエッタにお世話してもらえるんだからな。照れもするさ」
「ふふん、名門ローゼンベルク家の姫騎士にお世話してもらえるんだから、光栄に思いなさいよね!」
「はいはい」
「はいは1回!」
「はーい」
シリアスな雰囲気から一転、アリエッタはすっかり元の調子を取り戻していた。
やっぱりアリエッタはこうじゃなくちゃな。
勝ち気でツンツン、一生懸命なのが俺の推すアリエッタ・ローゼンベルクなのだから。
そしていつかアリエッタにも、俺が異世界から来たことを話す日が来るのかもしれない。
その時アリエッタはどんな反応を示すんだろうか?
でもそれは今考えてもしょうがないことだ。
今は推しのアリエッタと一緒にいられる幸せに心行くまで浸っていよう。
その後もう少しだけ話をしてから、俺はとても幸せな気持ちで、今日もアリエッタと一緒のベッドで眠りについたのだった――。
むにゃあ……、推しのアリエッタと2日続けて一緒のベッドとか、この世界、最高過ぎるだろ……。
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