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第2章 ブレイビア学園
第29話 初登校
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◇
好きなものを好きなだけ食べられる豪勢なビュッフェ形式の食事を終えて部屋に戻ると、制服に着替えてブレイビア学園に向かう。
もちろん俺はブレイビア学園のスタイリッシュで可愛いミニスカート女子制服ではなく、取り寄せてもらった一般の男性騎士の制服だ。
俺の隣にはアリエッタとリューネが肩を並べている。
学園と寮は同じ敷地内にあるものの、少し距離があるので歩かなければならない。
都市部のこぢんまりとした学校しか通ったことがない俺にとって、広大なブレイビア学園は新鮮ではあるが、やや不便に感じなくもない。
そして周囲には俺たち同様に、寮から学園へと向かう制服姿の姫騎士でいっぱいだった。
「ねえユータ。あの不思議な剣――神龍剣レクイエムだっけ? 私の魔法をことごとく打ち消すからビックリしたわ。あんなすごい武器をどうやって手に入れたの?」
歩きながらアリエッタが興味深そうに尋ねてくる。
「あれはまぁ特別な貰い物っていうか……」
さすがにソシャゲのイベント上位者の特典ですとは言えない俺だ。
「ふぅん?」
「あはは……」
「ま、いわくありげな剣だし、おいそれと出どころは明かせないわよね。譲ってくれた人に迷惑がかかるかもだし」
「まぁうん、そんな感じかな?」
良かった、いい感じに納得してくれたようだ。
秀才なだけあって、基本的にアリエッタは物分かりがいい。
「あとユータはなんであんなに強いの? 神龍精霊なんて初めて見たし。なんで男なのに精霊と契約できるの? ゲイなの?」
「才能があったとか……?」
この世界じゃみんな真面目に頑張っているであろうのに、『お小遣いやバイト代を全部つぎ込んで課金しまくり、僅かの隙間時間も寝る間も惜しんで周回しまくったから』とは、これまた口が裂けても言えない俺だった。
「才能かぁ。私にもユータやお姉さまみたいな飛びぬけた才能があればなぁ」
「アリエッタは十分凄いと思うよ? 5人しかいない1年生Aランク姫騎士の1人なんだから。ただちょっと、理想にしているエレナ会長がすごすぎるだけで」
ここまで俺たちの会話を聞きに徹していたリューネが、優しい声色でアリエッタを褒め褒めする。
「そう言うリューネだって、1年生Aランクの1人じゃない」
「私は戦闘はからっきしで、なんとか身を守るので精いっぱいだからねー」
リューネが恥ずかしそうに胸の前で両手を左右に振った。
胸が左右からぎゅっと押し上げられて、B98-W59-H89のJカップというゲーム内最高スペックが、極めてけしからんことになる。
くっ!
この絶景には、アリエッタ推しの俺でも思わず目を奪われてしまう!
まさか俺の推し心が、こうもたやすくねじ曲げられてしまうなんて!
リューネ、なんて恐ろしい子……!!
ただ幸いなことに、俺のいやらしい視線には2人とも気付いていないようで、2人は会話を続けていく。
「回復系で1年生Aランクはリューネが初めてなんでしょ? 王国騎士団からも、ブレイビア学園をスキップして今すぐにでも騎士団入りして欲しいって、要請が来てるって聞いたわよ?」
「ええっ、それ誰にも言わないでくださいって言っておいたのに! どうしてアリエッタが知ってるの~?」
リューネが素っ頓狂な声を上げた。
「なに言ってるのよ、みんな知ってるわよ」
「みんな!? みんなって、どのみんな!?」
「そんなの当然、学園の生徒みんなに決まってるでしょ?」
「ふえぇぇぇぇ~~!?」
「だってこんなすごい話、噂にならない方が不思議じゃない。お姉さんが王国騎士団の姫騎士をやってる生徒だっているんだから、口止めしたっていくらでも漏れ伝わってくるわよ」
「はうぅ、みんな知ってるなんて全然知らなかったし……」
よほど衝撃だったのか、驚きのあまり口をパクパクとさせるリューネだった。
「ま、アリエッタもリューネもどっちもすごいってことだな」
俺はうんうんと頷きながら、実にいい感じに話にオチを付けようとしたんだけど、
「よりにもよってそれをユータが言う!? 私を完膚なきまでにボコったユータが! バカにしてるのね? やっぱり私のことバカにしてるのね!?」
「あまりにもすごすぎるユータさんだけには、言われたくないですね……」
アリエッタからは怒りの、リューネからは呆れたような視線を向けられてしまった。
「あーあ。ほんとダメだなぁ私。ユータに手も足も出ずに負けちゃったし。これじゃお姉ちゃんみたいに素敵な生徒会長になるなんて、夢のまた夢だよね」
「そんなことないってば。私たちまだ1年生なんだし」
「そうだぞ。アリエッタなら大丈夫だって。俺が保証する」
「だからユータが私の何を知ってるってのよ!」
「あはは……」
(なんだかんだで、アリエッタとリューネとはすっかり打ち解けとけられた気がするな)
3人で他愛もない話をしながら、俺たちはブレイビア学園の1年1組へと入室した。
好きなものを好きなだけ食べられる豪勢なビュッフェ形式の食事を終えて部屋に戻ると、制服に着替えてブレイビア学園に向かう。
もちろん俺はブレイビア学園のスタイリッシュで可愛いミニスカート女子制服ではなく、取り寄せてもらった一般の男性騎士の制服だ。
俺の隣にはアリエッタとリューネが肩を並べている。
学園と寮は同じ敷地内にあるものの、少し距離があるので歩かなければならない。
都市部のこぢんまりとした学校しか通ったことがない俺にとって、広大なブレイビア学園は新鮮ではあるが、やや不便に感じなくもない。
そして周囲には俺たち同様に、寮から学園へと向かう制服姿の姫騎士でいっぱいだった。
「ねえユータ。あの不思議な剣――神龍剣レクイエムだっけ? 私の魔法をことごとく打ち消すからビックリしたわ。あんなすごい武器をどうやって手に入れたの?」
歩きながらアリエッタが興味深そうに尋ねてくる。
「あれはまぁ特別な貰い物っていうか……」
さすがにソシャゲのイベント上位者の特典ですとは言えない俺だ。
「ふぅん?」
「あはは……」
「ま、いわくありげな剣だし、おいそれと出どころは明かせないわよね。譲ってくれた人に迷惑がかかるかもだし」
「まぁうん、そんな感じかな?」
良かった、いい感じに納得してくれたようだ。
秀才なだけあって、基本的にアリエッタは物分かりがいい。
「あとユータはなんであんなに強いの? 神龍精霊なんて初めて見たし。なんで男なのに精霊と契約できるの? ゲイなの?」
「才能があったとか……?」
この世界じゃみんな真面目に頑張っているであろうのに、『お小遣いやバイト代を全部つぎ込んで課金しまくり、僅かの隙間時間も寝る間も惜しんで周回しまくったから』とは、これまた口が裂けても言えない俺だった。
「才能かぁ。私にもユータやお姉さまみたいな飛びぬけた才能があればなぁ」
「アリエッタは十分凄いと思うよ? 5人しかいない1年生Aランク姫騎士の1人なんだから。ただちょっと、理想にしているエレナ会長がすごすぎるだけで」
ここまで俺たちの会話を聞きに徹していたリューネが、優しい声色でアリエッタを褒め褒めする。
「そう言うリューネだって、1年生Aランクの1人じゃない」
「私は戦闘はからっきしで、なんとか身を守るので精いっぱいだからねー」
リューネが恥ずかしそうに胸の前で両手を左右に振った。
胸が左右からぎゅっと押し上げられて、B98-W59-H89のJカップというゲーム内最高スペックが、極めてけしからんことになる。
くっ!
この絶景には、アリエッタ推しの俺でも思わず目を奪われてしまう!
まさか俺の推し心が、こうもたやすくねじ曲げられてしまうなんて!
リューネ、なんて恐ろしい子……!!
ただ幸いなことに、俺のいやらしい視線には2人とも気付いていないようで、2人は会話を続けていく。
「回復系で1年生Aランクはリューネが初めてなんでしょ? 王国騎士団からも、ブレイビア学園をスキップして今すぐにでも騎士団入りして欲しいって、要請が来てるって聞いたわよ?」
「ええっ、それ誰にも言わないでくださいって言っておいたのに! どうしてアリエッタが知ってるの~?」
リューネが素っ頓狂な声を上げた。
「なに言ってるのよ、みんな知ってるわよ」
「みんな!? みんなって、どのみんな!?」
「そんなの当然、学園の生徒みんなに決まってるでしょ?」
「ふえぇぇぇぇ~~!?」
「だってこんなすごい話、噂にならない方が不思議じゃない。お姉さんが王国騎士団の姫騎士をやってる生徒だっているんだから、口止めしたっていくらでも漏れ伝わってくるわよ」
「はうぅ、みんな知ってるなんて全然知らなかったし……」
よほど衝撃だったのか、驚きのあまり口をパクパクとさせるリューネだった。
「ま、アリエッタもリューネもどっちもすごいってことだな」
俺はうんうんと頷きながら、実にいい感じに話にオチを付けようとしたんだけど、
「よりにもよってそれをユータが言う!? 私を完膚なきまでにボコったユータが! バカにしてるのね? やっぱり私のことバカにしてるのね!?」
「あまりにもすごすぎるユータさんだけには、言われたくないですね……」
アリエッタからは怒りの、リューネからは呆れたような視線を向けられてしまった。
「あーあ。ほんとダメだなぁ私。ユータに手も足も出ずに負けちゃったし。これじゃお姉ちゃんみたいに素敵な生徒会長になるなんて、夢のまた夢だよね」
「そんなことないってば。私たちまだ1年生なんだし」
「そうだぞ。アリエッタなら大丈夫だって。俺が保証する」
「だからユータが私の何を知ってるってのよ!」
「あはは……」
(なんだかんだで、アリエッタとリューネとはすっかり打ち解けとけられた気がするな)
3人で他愛もない話をしながら、俺たちはブレイビア学園の1年1組へと入室した。
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