上 下
14 / 132
第1章 突然のゲーム内転移

第14話 ツンツンツンツンツンツンツンツン

しおりを挟む
「いてて……。いきなりなんだよ? 変なことは言ってないだろ」
「別に! ふん!」

 せっかく助け舟を出してやってるってのに、よく分からん奴だな。

 まさか焼きもちか?
 って、まだ出会ったばかりでそれはないか。

 ソシャゲだと序盤のアリエッタは、プレイヤーキャラに対してツンデレじゃなくてツンツンだ。

 もうツンツンツンツンツンツンツンツン。
 バグじゃね?ってくらいに、明らかにツンの配分が過剰なのだ。

 そして「いつデレる?」「本当にデレるのか?」とプレイヤーをやきもきさせ続けながら。

 しかし溺れた猫を助けるイベントで唐突にデレて、
『アンタを見ていると、なんだか胸がフワフワするの』
 とか言い出して、そこからデレデレマシマシの「デレ時々ツン」なヒロインになるのだ。

 このジェットコースターのような激しい展開(不人気ゆえの手抜き疑惑有り)が、その時点で既に調教され尽くしていたドMなアリエッタ使いには、激しくツボる萌えポイントだったんだよな。

 それはそれとして。
 俺の説明を聞いたエレナ会長が話をまとめた。

「なるほど。ユウタさんについては、現状では情報が少なすぎるため、いったん保留ということにさせてください」

 おおっ!
 信じてくれたっぽいぞ!
 やはりあったか、世界の運命強制力!
 知らんけど!

「分かりました。でもいいんですか、こんなに簡単に信じてくれて」
「少なくともユウタさんは悪い人ではなさそうですから」

「えっと、自分で言うのもなんですけど、そんなに説得力のあるような説明でもなかったと思うんですが」

 異世界転移したことに関しては、ガッツリ嘘をついてるしな。

「直感でそう思いました」
「直感ですか」

 なるほどね。
 そういやそうだった。
 この人はエレナ・ローゼンベルクなのだ。

「ふふっ、こう見えて私の直感は昔からよく当たるんです」

 うん、知ってる。
 っていうか思い出した。
 エレナ会長の固有魔法の、精霊幻視――エレメンタル・フォーサイトだな。

「ふふん、すごいでしょ。お姉さまの直感を支えるエレメンタル・フォーサイトは、契約精霊の炎魔神イフリートを通して、世界のことわりに触れていると言われてるんだから」

「なんでアリエッタがそんな自慢げなんだよ……」

 ま、コンプレックスを感じてしまうほどに優秀な自慢の姉のことを、なんだかんだで誇りたいんだろうな。
 難しいお年頃というやつだ。

「そう言えば聞いていませんでしたが、決闘はどちらが勝ったのでしょうか?」

「俺が勝ちました」

「アリエッタに……ユウタさんが勝った?」
「はい、俺が勝ちました」

 俺がアリエッタに勝ったと聞いたエレナ会長が、驚きでそのルビーのような赤い瞳を大きく目を見開いた。

「将来有望な姫騎士が特に多い今年の1年生の中で、主席入学を果たしたアリエッタに? 男のユウタさんが勝ったのですか? にわかには信じられません」

「こう見えて戦闘は得意なんだ」

 そろそろ丁寧にしゃべるのがしんどくなってきたので、少しフランクな感じで言いながら――ほぼ同じ年なんだからいいよな?――俺は鞘に納めた神竜剣レクイエムの柄を、軽く叩いて見せた。

「お姉さま、こいつ男なのに精霊と契約して姫騎士になれる上に、魔法を打ち消す剣まで持っているの!」

「魔法を打ち消す剣……?」
「そうなの。だから全然相手にならなくて! 無敵の剣なの! だから仕方なかったの!」

「アリエッタ、それは理由にはなりません。どんなに苦しい状況でも、どんなに強い相手でも、戦う以上は勝ってみせるのが真の姫騎士というものです。そもそも人の扱うものである以上、完全無敵な存在などあり得ないのですから」

「うぐぅ……」

 姫騎士の何たるかをアリエッタに言い聞かせたエレナ会長の中では、既に俺と戦うためのプランができているのかもしれなかった。

 神龍剣レクイエムは強力だが、エレナ会長が言ったように決して無敵ってわけじゃない。

 例えば『否定』の概念魔法によって魔法を無効化するには、神龍剣レクイエムが相手の魔法に触れるか、魔法にある程度近くなければならない。

 だから例えば、神龍剣レクイエムを正面に構えている時に、背後から魔法攻撃されたら、それを無効化することはできないのだ。

 こんな風に攻略のしようはいくらでもある。
 聡明かつ、エレメンタル・フォーサイトを持つエレナ会長なら、戦えばすぐに神龍剣レクイエムの効果範囲の狭さに気付くことだろう。

「申し訳ありませんユウタさん。話が少し逸れましたね。ここまでの話をまとめると、どうやらユウタさんは本当に男の姫騎士なのですね」

「男なんで姫じゃないかもだけど、おおむねそういうことだな」

 俺は大きくうなずいた。

「身内の贔屓目ひいきめを抜きにしても、アリエッタの強さはかなりのもの。そのアリエッタになんなく勝ってしまう男の姫騎士……。どうやら通常ではありえない、摩訶不思議まかふしぎなことが起こっているようですね」

「みたいだな」

 なにせゲームの世界に異世界転生してしまったのだ。
 これ以上不思議なことなんて想像もつかないよ。

「時にユウタさん、なぜここにいるのか記憶がないとおっしゃいましたよね? となると当然、住む場所もないということですよね?」

「そうなるかな」
「では私から一つ提案があります」
「提案?」

 急に提案と言われて、俺はおうむ返しに聞き返した。
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

腹ぺこお嬢様の飯使い ~隣の部屋のお嬢様にご飯を振舞ったら懐かれた件~

味のないお茶
恋愛
「お腹が空きました。何か食べさせてください」 春休みの最終日。俺、海野凛太郎(うみのりんたろう)の部屋に同年代くらいの一人の女が腹を空かせてやって来た。 そいつの名前は美凪優花(みなぎゆうか) 今日。マンションの隣の部屋に母親と一緒に引っ越して来た奴だった。 「なんで初対面の人間に飯を振る舞わなきゃなんねぇんだよ?」 そう言う俺に、 「先程お母さんに言ったそうですね。『何か困り事があったら言ってください。隣人同士、助け合いで行きましょう』と」 と笑顔で言い返して来た。 「まさか、その言葉を言って数時間でこんな事になるとは思いもしなかったわ……」 「ふふーん。こんな美少女にご飯を振る舞えるのです。光栄に思ってくださ……」 パタン 俺は玄関の扉を閉めた。 すると直ぐに バンバンバン!!!! と扉を叩く音 『ごめんなさい!!嘘です!!お腹ぺこぺこなんです!!助けてください!!隣人さん!!』 そんな声が扉を突きぬけて聞こえて来る。 はぁ……勘弁してくれよ…… 近所の人に誤解されるだろ…… 俺はため息をつきながら玄関を開ける。 そう。これが俺と彼女のファーストコンタクト。 腹ぺこお嬢様の飯使いになった瞬間だった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる

まるせい
青春
高校に入学して暫く経った頃、ナンパされている少女を助けた相川。相手は入学早々に学園のマドンナと呼ばれている渡辺美沙だった。 それ以来、彼女は学校内でも声を掛けてくるようになり、なぜか毎週「週末の御予定は?」と聞いてくるようになる。 ある趣味を持つ相川は週末の度に出掛けるのだが……。 焦れ焦れと距離を詰めようとするヒロインとの青春ラブコメディ。ここに開幕

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

処理中です...