13 / 132
第1章 突然のゲーム内転移
第13話「ここは俺に任せろ!」
しおりを挟む
「ちょ、ちょっとアンタ! これは私の問題であって、アンタに関係はないわ」
アリエッタがその誇り高き性格ゆえに、余計なことはするなと言ってくるが、
「俺は決闘の当事者だろ。当然、関係はあるさ」
俺は有無を言わせないように強めに言ってから――だけど安心させるように優しく微笑んだ。
そうさ!
推しの子が目の前で窮地に陥っているのに、黙って見ているだけでいられるかよ!
大丈夫だ、ここは俺に任せろ!
普段の俺なら、他人の話に口出しなんてしない。
偉い人には絶対に逆らわない。
怒られたら自分に非がなくても、ごめんなさいと謝る。
へらへら愛想笑いしてやり過ごす。
それがカースト底辺でボッチ陰キャをしていた俺の生き方だった。
だがしかし!
推しのピンチという場面が、俺に尋常ならざるモチベーションを与えてくれていた。
「あなたは?」
「ユウタ・カガヤと申します」
「ユウタ・カガヤ……不思議な響きのお名前ですね?」
「ええ、まぁ」
としか言えないけど、言いたい気持ちは分かる。
なにせアリエッタ・ローゼンベルク、リューネ・フリージアといった名前の中で、ユウタ・カガヤだからな。
どう考えても異質だ。
「カガヤさんとお呼びしてもよろしいですか?」
「カガヤでも、カガヤくんでもカガヤさんでも、好きに呼んでいただいて構いません。特にこだわりはないので」
「では親しみを込めてユウタさんとお呼びしますね」
なっ、まさかの名前呼びだと!?
そりゃ好きに呼んでいいとは言ったけど、美人から名前を呼んでもらうことは人生初めての経験だから、なんかすげー気恥ずかしい――って今はそれはおいといて。
「それで決闘についてなんですが、先ほども言いましたように、俺が最初にアリエッタに無礼を働いたことが、そもそもの発端なんです。だからアリエッタは責めないでやってください」
俺はもう一度深々と頭を下げた。
「なるほど。決闘については分かりました。お互いに譲れないものがあったのでしょう。とりあえずのところは不問と致します」
「お心遣い、ありがとうございます」
頭を上げて感謝の言葉を伝えた俺の隣で、アリエッタがホッとしたように小さく息をはいた。
「ただしアリエッタは当面の間、決闘は挑むのも受けるのも禁止します」
「ええ~!?」
「ええ~、じゃありません。こうして話す限りユウタさんはとても常識的な人です。そんなユウタさんに、話も聞かずに一方的にカッとなって決闘を挑んだのでしょう? しばらくは頭を冷やして静かにしてなさい」
「は、はい」
アリエッタがシュンとうなだれた。
「決闘については分かりました。ですがこの学園はそもそも男子禁制です。なぜ男子であるユウタさんが学園内にいるのでしょうか? この件に関しては、事と次第によってはただではすみませんよ?」
俺を見るエレナ会長の顔から笑みが消え、目がスッと鋭くなる。
当然だな。
男子禁制、女の園であるブレイビア学園を預かる生徒会長として、男という存在は何よりも警戒すべき対象だ。
「実は、俺もなんで自分がここにいるのか分からないんです。気付いたら学園の大浴場にいて。その辺りの記憶が曖昧で、記憶喪失に近いのかな?」
とりあえず「そういうこと」にしてみた。
まさか異世界から来たと言うわけにはいかないが、この世界には俺の知り合いはいないし、俺の存在を証明してくれる人もいない。
身分も戸籍もない。
そもそも戸籍というシステムがあるかどうか知らないけど。
ソシャゲじゃ国家が人口をどうやって把握しているのかとか、そういう面倒くさい要素は出てこないしな。
それはさておき。
俺はついさっきまでこの世界にいなかったんだから「この世界の記憶がない」のは間違いないし、よって記憶喪失と主張しても差し支えはないだろう。
それに記憶喪失はソシャゲのプレイヤーキャラが入学するのと同じ設定だから、ゲームの展開を再現しようとする「世界の運命強制力」のようなものが働いて、きっと信じてくれるはず……だと思う。
俺は強引に自分を納得させた。
「記憶喪失……ですか。話した感じでは受け答えもしっかりしていますし、自分の事や現状に関する記憶だけがすっぽりと抜け落ちている、という認識でよろしいでしょうか?」
「まぁうん、多分そんな感じかな」
「なるほど……」
エレナ会長がわずかに眉を寄せた。
考え込むように軽く握った右手を口元に当てる。
「なにせ自分の名前と、男なのに姫騎士であること以外は、何も分からなくてさ」
「男の姫騎士……」
そう小さく呟いたエレナ会長が、俺の顔をじっと見つめてきた。
絶世の美女たるエレナ会長に見つめられて、心がふわふわっとしてしまうのを感じていると、
「む~~!」
横にいるアリエッタから、ガン!と割と痛めの肘打ちをくらった。
アリエッタがその誇り高き性格ゆえに、余計なことはするなと言ってくるが、
「俺は決闘の当事者だろ。当然、関係はあるさ」
俺は有無を言わせないように強めに言ってから――だけど安心させるように優しく微笑んだ。
そうさ!
推しの子が目の前で窮地に陥っているのに、黙って見ているだけでいられるかよ!
大丈夫だ、ここは俺に任せろ!
普段の俺なら、他人の話に口出しなんてしない。
偉い人には絶対に逆らわない。
怒られたら自分に非がなくても、ごめんなさいと謝る。
へらへら愛想笑いしてやり過ごす。
それがカースト底辺でボッチ陰キャをしていた俺の生き方だった。
だがしかし!
推しのピンチという場面が、俺に尋常ならざるモチベーションを与えてくれていた。
「あなたは?」
「ユウタ・カガヤと申します」
「ユウタ・カガヤ……不思議な響きのお名前ですね?」
「ええ、まぁ」
としか言えないけど、言いたい気持ちは分かる。
なにせアリエッタ・ローゼンベルク、リューネ・フリージアといった名前の中で、ユウタ・カガヤだからな。
どう考えても異質だ。
「カガヤさんとお呼びしてもよろしいですか?」
「カガヤでも、カガヤくんでもカガヤさんでも、好きに呼んでいただいて構いません。特にこだわりはないので」
「では親しみを込めてユウタさんとお呼びしますね」
なっ、まさかの名前呼びだと!?
そりゃ好きに呼んでいいとは言ったけど、美人から名前を呼んでもらうことは人生初めての経験だから、なんかすげー気恥ずかしい――って今はそれはおいといて。
「それで決闘についてなんですが、先ほども言いましたように、俺が最初にアリエッタに無礼を働いたことが、そもそもの発端なんです。だからアリエッタは責めないでやってください」
俺はもう一度深々と頭を下げた。
「なるほど。決闘については分かりました。お互いに譲れないものがあったのでしょう。とりあえずのところは不問と致します」
「お心遣い、ありがとうございます」
頭を上げて感謝の言葉を伝えた俺の隣で、アリエッタがホッとしたように小さく息をはいた。
「ただしアリエッタは当面の間、決闘は挑むのも受けるのも禁止します」
「ええ~!?」
「ええ~、じゃありません。こうして話す限りユウタさんはとても常識的な人です。そんなユウタさんに、話も聞かずに一方的にカッとなって決闘を挑んだのでしょう? しばらくは頭を冷やして静かにしてなさい」
「は、はい」
アリエッタがシュンとうなだれた。
「決闘については分かりました。ですがこの学園はそもそも男子禁制です。なぜ男子であるユウタさんが学園内にいるのでしょうか? この件に関しては、事と次第によってはただではすみませんよ?」
俺を見るエレナ会長の顔から笑みが消え、目がスッと鋭くなる。
当然だな。
男子禁制、女の園であるブレイビア学園を預かる生徒会長として、男という存在は何よりも警戒すべき対象だ。
「実は、俺もなんで自分がここにいるのか分からないんです。気付いたら学園の大浴場にいて。その辺りの記憶が曖昧で、記憶喪失に近いのかな?」
とりあえず「そういうこと」にしてみた。
まさか異世界から来たと言うわけにはいかないが、この世界には俺の知り合いはいないし、俺の存在を証明してくれる人もいない。
身分も戸籍もない。
そもそも戸籍というシステムがあるかどうか知らないけど。
ソシャゲじゃ国家が人口をどうやって把握しているのかとか、そういう面倒くさい要素は出てこないしな。
それはさておき。
俺はついさっきまでこの世界にいなかったんだから「この世界の記憶がない」のは間違いないし、よって記憶喪失と主張しても差し支えはないだろう。
それに記憶喪失はソシャゲのプレイヤーキャラが入学するのと同じ設定だから、ゲームの展開を再現しようとする「世界の運命強制力」のようなものが働いて、きっと信じてくれるはず……だと思う。
俺は強引に自分を納得させた。
「記憶喪失……ですか。話した感じでは受け答えもしっかりしていますし、自分の事や現状に関する記憶だけがすっぽりと抜け落ちている、という認識でよろしいでしょうか?」
「まぁうん、多分そんな感じかな」
「なるほど……」
エレナ会長がわずかに眉を寄せた。
考え込むように軽く握った右手を口元に当てる。
「なにせ自分の名前と、男なのに姫騎士であること以外は、何も分からなくてさ」
「男の姫騎士……」
そう小さく呟いたエレナ会長が、俺の顔をじっと見つめてきた。
絶世の美女たるエレナ会長に見つめられて、心がふわふわっとしてしまうのを感じていると、
「む~~!」
横にいるアリエッタから、ガン!と割と痛めの肘打ちをくらった。
31
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
十年間片思いしていた幼馴染に告白したら、完膚なきまでに振られた俺が、昔イジメから助けた美少女にアプローチを受けてる。
味のないお茶
恋愛
中学三年の終わり、俺。桜井霧都(さくらいきりと)は十年間片思いしていた幼馴染。南野凛音(みなみのりんね)に告白した。
十分以上に勝算がある。と思っていたが、
「アンタを男として見たことなんか一度も無いから無理!!」
と完膚なきまでに振られた俺。
失意のまま、十年目にして初めて一人で登校すると、小学生の頃にいじめから助けた女の子。北島永久(きたじまとわ)が目の前に居た。
彼女は俺を見て涙を流しながら、今までずっと俺のことを想い続けていたと言ってきた。
そして、
「北島永久は桜井霧都くんを心から愛しています。私をあなたの彼女にしてください」
と、告白をされ、抱きしめられる。
突然の出来事に困惑する俺。
そんな俺を追撃するように、
「な、な、な、な……何してんのよアンタ……」
「………………凛音、なんでここに」
その現場を見ていたのは、朝が苦手なはずの、置いてきた幼なじみだった。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スウィートカース(Ⅷ):魔法少女・江藤詩鶴の死点必殺
湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
ファンタジー
眼球の魔法少女はそこに〝死〟を視る。
ひそかに闇市場で売買されるのは、一般人を魔法少女に変える夢の装置〝シャード〟だ。だが粗悪品のシャードから漏れた呪いを浴び、一般市民はつぎつぎと狂暴な怪物に変じる。
謎の売人の陰謀を阻止するため、シャードの足跡を追うのはこのふたり。
魔法少女の江藤詩鶴(えとうしづる)と久灯瑠璃絵(くとうるりえ)だ。
シャードを帯びた刺客と激闘を繰り広げ、最強のタッグは悪の巣窟である来楽島に潜入する。そこで彼女たちを待つ恐るべき結末とは……
真夏の海を赤く染め抜くデッドエンド・ミステリー。
「あんたの命の線は斬った。ここが終点や」
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
学園のマドンナの渡辺さんが、なぜか毎週予定を聞いてくる
まるせい
青春
高校に入学して暫く経った頃、ナンパされている少女を助けた相川。相手は入学早々に学園のマドンナと呼ばれている渡辺美沙だった。
それ以来、彼女は学校内でも声を掛けてくるようになり、なぜか毎週「週末の御予定は?」と聞いてくるようになる。
ある趣味を持つ相川は週末の度に出掛けるのだが……。
焦れ焦れと距離を詰めようとするヒロインとの青春ラブコメディ。ここに開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる