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第二部 暴れん坊将軍編(セントフィリア国王編)
第133話 0番目
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「ってことはだよ? 言ってみればリヨンさんは0番目なわけでしょ?」
「勇者様も、美人で綺麗で頼りになるリヨンさんが王妃になってくれるなら、嬉しいですよね?」
「そりゃあそうだけど」
「じゃあ何の問題もないよね?」
「何の問題もありませんね」
「つまり3番目じゃなくて0番目だから、問題ないってことか?」
トンチって言うのかな?
「そーゆーこと。これでみんなハッピー!」
アリスベルが親指をグッと立て、
「正直言うと、リヨンさんのことは見ていられなかったんですよね」
フィオナが小さく苦笑した。
「そうそう。おにーさんへの好き好きオーラをこれでもかって出しているのに、全然気付いてもらえないんだもん」
「私はそんな、クロウへの好き好きオーラなんて全く――」
いつもの性分なのか、反射的に抗議の声を上げるリヨンに、
「リヨンさん、今はそーゆーのはいいから。素直に本音を語る場面だから」
アリスベルがピシャリと告げる。
「リヨンさん、素直になりましょうよ」
さらにはフィオナに背中を押されてしまい、
「まったく……ちょっとは気付こうとしなさいよねクロウ。ほんと鈍いんだから」
リヨンは少し顎を引いて上目遣いになりながら、かすれるような小声でつぶやいた。
「わ、悪い」
な、なんだよそのしおらしい態度。
いつもの強気なリヨンとのギャップに、胸が激しくキュンとしちゃうんだが!?
「別にいいわよ。元はと言えば、素直にならなかった私が悪いんだし」
「いや、悪いのは全部俺だよ。気付かなくってごめん」
勇者パーティ時代からずっと好意を寄せてくれていたリヨン。
その気持ちに全く気付かないなんて、もはや言い訳なんてしようがない。
俺は本当に女心が分かっていないバカ男だった。
俺とリヨンは無言で見つめ合い、そこで会話がプツリと途切れる。
なんともむず痒く、心がくすぐったくなるような沈黙が場を覆った。
しばらく沈黙が続いたのち、沈黙を破ったのは、
グ~~!
空腹を告げる盛大なお腹の音だった。
大きな音が聞こえてくる――なんとリヨンから。
「ん、んんんっ! だって仕方ないじゃない、昨日の朝から何も食べていないんだから!」
リヨンがお腹の音を誤魔化すようにわざとらしく咳払いをしてから、そっぽを向きながら言った。
恥ずかしいのだろう、その顔は真っ赤に染まっている。
そして色々と吹っ切れたのか、口調もすっかりいつものリヨンに戻っていた。
「じゃあ話もまとまったし、みんなでご飯でも食べない? リヨンさんの快気祝いと、朝ごはんと、プラスでリヨン第3王妃様の誕生記念パーティってことで」
「だ、第3王妃?」
「だってそうでしょ? アタシが王妃で、フィオナさんが第2王妃で、リヨンさんが第3王妃。第0王妃はさすがに変だからね」
「そうじゃなくて、私が王妃だなんて……」
「大丈夫だいじょうぶ。王妃って言ったって今は火急の時なんだし。一介の整体師のアタシにだってできるんだから、リヨンさんなら問題ないって」
「たしかにアリスベルは、貴族からも官僚からも絶大な支持を得ているけど……」
「だからリヨンさんなら、余裕よゆー」
「でもそれはアリスベルの神の手――ゴッドハンドと呼ばれる整体術と、人徳によるところが大きいわけでしょ?」
「それを言うならリヨンさんは、騎士や兵隊さんからの人気がすごく高いよね? 下手したら勇者のおにーさんよりも人気あるよね? ほらへ、最初から盤石の支持基盤を持っているんじゃないかな?」
リヨンは長らく勇者パーティの一員として最前線で活躍してきたため、軍部の人間から絶大な人気を誇っている。
アリスベルが言ったように、おそらく勇者の俺よりも人気があった。
「それは、まぁ……」
「じゃあ決まりね。はい拍手~!」
アリスベルの号令で、俺たちはみんなで拍手をして第3王妃リヨンの就任をお祝いした。
「ですが人気があり過ぎるのも問題かもですね」
と、フィオナが軽く握った拳を口元に当てながら言った。
「フィオナさん、それってどういうこと?」
「派閥ができてしまいそうです。貴族や官僚から庶民まで幅広く支持を集める王妃アリスベル派と、軍部を中心とした第3王妃リヨン派です」
「そこはそれ、おにーさんが全員を平等に愛することで、しっかりと国をまとめてもらうってことで」
「ふふっ、いい考えですね」
「だって、クロウ。頑張りなさいよ。私たちのためにもね」
「……はい」
俺の肩に国家運営やら王妃間の派閥の均衡という分不相応な重みが、どんどんとのし上がっていく今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか……。
「勇者様も、美人で綺麗で頼りになるリヨンさんが王妃になってくれるなら、嬉しいですよね?」
「そりゃあそうだけど」
「じゃあ何の問題もないよね?」
「何の問題もありませんね」
「つまり3番目じゃなくて0番目だから、問題ないってことか?」
トンチって言うのかな?
「そーゆーこと。これでみんなハッピー!」
アリスベルが親指をグッと立て、
「正直言うと、リヨンさんのことは見ていられなかったんですよね」
フィオナが小さく苦笑した。
「そうそう。おにーさんへの好き好きオーラをこれでもかって出しているのに、全然気付いてもらえないんだもん」
「私はそんな、クロウへの好き好きオーラなんて全く――」
いつもの性分なのか、反射的に抗議の声を上げるリヨンに、
「リヨンさん、今はそーゆーのはいいから。素直に本音を語る場面だから」
アリスベルがピシャリと告げる。
「リヨンさん、素直になりましょうよ」
さらにはフィオナに背中を押されてしまい、
「まったく……ちょっとは気付こうとしなさいよねクロウ。ほんと鈍いんだから」
リヨンは少し顎を引いて上目遣いになりながら、かすれるような小声でつぶやいた。
「わ、悪い」
な、なんだよそのしおらしい態度。
いつもの強気なリヨンとのギャップに、胸が激しくキュンとしちゃうんだが!?
「別にいいわよ。元はと言えば、素直にならなかった私が悪いんだし」
「いや、悪いのは全部俺だよ。気付かなくってごめん」
勇者パーティ時代からずっと好意を寄せてくれていたリヨン。
その気持ちに全く気付かないなんて、もはや言い訳なんてしようがない。
俺は本当に女心が分かっていないバカ男だった。
俺とリヨンは無言で見つめ合い、そこで会話がプツリと途切れる。
なんともむず痒く、心がくすぐったくなるような沈黙が場を覆った。
しばらく沈黙が続いたのち、沈黙を破ったのは、
グ~~!
空腹を告げる盛大なお腹の音だった。
大きな音が聞こえてくる――なんとリヨンから。
「ん、んんんっ! だって仕方ないじゃない、昨日の朝から何も食べていないんだから!」
リヨンがお腹の音を誤魔化すようにわざとらしく咳払いをしてから、そっぽを向きながら言った。
恥ずかしいのだろう、その顔は真っ赤に染まっている。
そして色々と吹っ切れたのか、口調もすっかりいつものリヨンに戻っていた。
「じゃあ話もまとまったし、みんなでご飯でも食べない? リヨンさんの快気祝いと、朝ごはんと、プラスでリヨン第3王妃様の誕生記念パーティってことで」
「だ、第3王妃?」
「だってそうでしょ? アタシが王妃で、フィオナさんが第2王妃で、リヨンさんが第3王妃。第0王妃はさすがに変だからね」
「そうじゃなくて、私が王妃だなんて……」
「大丈夫だいじょうぶ。王妃って言ったって今は火急の時なんだし。一介の整体師のアタシにだってできるんだから、リヨンさんなら問題ないって」
「たしかにアリスベルは、貴族からも官僚からも絶大な支持を得ているけど……」
「だからリヨンさんなら、余裕よゆー」
「でもそれはアリスベルの神の手――ゴッドハンドと呼ばれる整体術と、人徳によるところが大きいわけでしょ?」
「それを言うならリヨンさんは、騎士や兵隊さんからの人気がすごく高いよね? 下手したら勇者のおにーさんよりも人気あるよね? ほらへ、最初から盤石の支持基盤を持っているんじゃないかな?」
リヨンは長らく勇者パーティの一員として最前線で活躍してきたため、軍部の人間から絶大な人気を誇っている。
アリスベルが言ったように、おそらく勇者の俺よりも人気があった。
「それは、まぁ……」
「じゃあ決まりね。はい拍手~!」
アリスベルの号令で、俺たちはみんなで拍手をして第3王妃リヨンの就任をお祝いした。
「ですが人気があり過ぎるのも問題かもですね」
と、フィオナが軽く握った拳を口元に当てながら言った。
「フィオナさん、それってどういうこと?」
「派閥ができてしまいそうです。貴族や官僚から庶民まで幅広く支持を集める王妃アリスベル派と、軍部を中心とした第3王妃リヨン派です」
「そこはそれ、おにーさんが全員を平等に愛することで、しっかりと国をまとめてもらうってことで」
「ふふっ、いい考えですね」
「だって、クロウ。頑張りなさいよ。私たちのためにもね」
「……はい」
俺の肩に国家運営やら王妃間の派閥の均衡という分不相応な重みが、どんどんとのし上がっていく今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか……。
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