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第二部 暴れん坊将軍編(セントフィリア国王編)
第99話 地上げ屋
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「はぁ? なんだてめぇは? どこのどいつだ?」
「俺らに意見するとはいい度胸だな! 名を名乗れ!」
「俺か? 俺の名前はクロノスケだ」
「クロノスケだと? ダセー名前だなぁおい!」
「ぎゃはは、まったくだぜ、犬みたいな名前しやがって。だいたい何が言いがかりだ、いきなり出てきて難癖つけてんじゃねーよ」
チンピラ2人組がスゴんでくるが、もちろんそれでビビるような俺ではない。
「残念ながら、お前らが入ってきた時からずっと観察してたんだ。あまりに態度が悪かったからな。そっちのお前が服のポケットからダンゴムシを取りだしたのも、ちゃんと見てたぞ?」
「なっ、なんのこと言ってんのか分かんねーな?」
「お、おうよ! お前が見た以外に証拠あるのかよ?」
「さっきから証拠証拠うるさいなぁ。なんなら出るとこ出たっていいんだぜ?」
「なにぃっ!?」
「裁判でもやろうってのか?」
「ああ、俺は王宮にも顔が利くからな。王宮の法務官に話をつけて、どっちに非があるか公正に裁いてもらってもいいぞ? お前らがやりたいならいくらでも受けて立ってやる、望むところだ」
腰に下げた剣の柄に俺が軽く触れながら言うと、
「げっ、クロノスケ、お前まさか王宮騎士かよ?」
「なんで王宮騎士がこんなところに……」
チンピラ2人組は露骨に目を泳がせ始めた。
ははっ、だよな。
そうだよな。
こいつらが普段真っ当な生き方をしているとは思えない。
叩けばいくらでもホコリが出るだろう。
出るところに出たせいで余罪のオンパレードになって困るのは、こいつらの方なのだから。
「チッ……くそが……まぁいい! 今日のところは勘弁してやるぜ」
「けっ! また来るからな、じじい!」
「おい、ちょっと待てお前ら」
「な、なんだよ?」
「今日は帰るって言ってんだろ」
「さっき蹴り飛ばした机をちゃんと直していけよ」
「はぁ?」
「なんで俺らがんなことしねーといけねーんだよ?」
「そんなもん、お前らが蹴り飛ばしたからに決まってるだろ。こういうの、威力業務妨害って言うんだっけ? なんならさっきの件とまとめて、出るとこ出たっていいんだぜ?」
「チッ……マジクソが……」
「クロノスケ、名前は覚えたからな。覚えてやがれ」
チンピラ2人組はしぶしぶと言った様子で机を直すと、逃げるように立ち去って行った。
チンピラ2人組が立ち去ったのを見て、ここまで成り行きを見守っていたアリスベルとフィオナがやってくる。
「おにーさん、お疲れさま。喉乾いてない?」
「どうぞ勇者様、お茶です」
「サンキュー、アリスベル、フィオナ」
俺はお茶をごくごくと飲み干して喉を潤してから、老店主に問いかけた。
「それで店主。あいつらに心当たりは? どうも顔見知りだったみたいだったけど」
「顔見知りというか、あいつらはこの辺り一帯で最近幅を利かせている地上げ屋なんです。ここ最近何度も来られていて、そのたびにこうやって立ち退きを迫られていて……」
老店主が顔を曇らせた。
「ごめん、地上げ屋ってなんだ?」
あんまり馴染みのない言葉だな。
「勇者様、地上げ屋とは土地や建物を強引な手段で安く買い取って、それを高値で転売するヤクザ者たちのことです」
「流行り言葉で、転売ヤーって言うんだよね」
「さすがアリスベルさん、よくご存じですね。彼らは非合法スレスレの手段を平然と行うため、多くの民から忌み嫌われているんです」
「そんなあこぎな職業があるのか。ならいっそ国の方で禁止したらいいんじゃないのか?」
「物を買って、他の人に売る。それ自体は普通の商売だから、一律に禁止するのはちょっと難しいの」
「どんな法律を定めても、頭のいい悪人は法のギリギリを狙って――いえ、それどころか法律を逆手に取って悪用して活動するんです」
「はぁ……悪い奴らがいるって分かっているのに取り締まれないなんて、世の中ってほんと面倒くさいよなぁ……」
アリスベルとフィオナの説明を聞いて、俺は大きなため息をついた。
「俺らに意見するとはいい度胸だな! 名を名乗れ!」
「俺か? 俺の名前はクロノスケだ」
「クロノスケだと? ダセー名前だなぁおい!」
「ぎゃはは、まったくだぜ、犬みたいな名前しやがって。だいたい何が言いがかりだ、いきなり出てきて難癖つけてんじゃねーよ」
チンピラ2人組がスゴんでくるが、もちろんそれでビビるような俺ではない。
「残念ながら、お前らが入ってきた時からずっと観察してたんだ。あまりに態度が悪かったからな。そっちのお前が服のポケットからダンゴムシを取りだしたのも、ちゃんと見てたぞ?」
「なっ、なんのこと言ってんのか分かんねーな?」
「お、おうよ! お前が見た以外に証拠あるのかよ?」
「さっきから証拠証拠うるさいなぁ。なんなら出るとこ出たっていいんだぜ?」
「なにぃっ!?」
「裁判でもやろうってのか?」
「ああ、俺は王宮にも顔が利くからな。王宮の法務官に話をつけて、どっちに非があるか公正に裁いてもらってもいいぞ? お前らがやりたいならいくらでも受けて立ってやる、望むところだ」
腰に下げた剣の柄に俺が軽く触れながら言うと、
「げっ、クロノスケ、お前まさか王宮騎士かよ?」
「なんで王宮騎士がこんなところに……」
チンピラ2人組は露骨に目を泳がせ始めた。
ははっ、だよな。
そうだよな。
こいつらが普段真っ当な生き方をしているとは思えない。
叩けばいくらでもホコリが出るだろう。
出るところに出たせいで余罪のオンパレードになって困るのは、こいつらの方なのだから。
「チッ……くそが……まぁいい! 今日のところは勘弁してやるぜ」
「けっ! また来るからな、じじい!」
「おい、ちょっと待てお前ら」
「な、なんだよ?」
「今日は帰るって言ってんだろ」
「さっき蹴り飛ばした机をちゃんと直していけよ」
「はぁ?」
「なんで俺らがんなことしねーといけねーんだよ?」
「そんなもん、お前らが蹴り飛ばしたからに決まってるだろ。こういうの、威力業務妨害って言うんだっけ? なんならさっきの件とまとめて、出るとこ出たっていいんだぜ?」
「チッ……マジクソが……」
「クロノスケ、名前は覚えたからな。覚えてやがれ」
チンピラ2人組はしぶしぶと言った様子で机を直すと、逃げるように立ち去って行った。
チンピラ2人組が立ち去ったのを見て、ここまで成り行きを見守っていたアリスベルとフィオナがやってくる。
「おにーさん、お疲れさま。喉乾いてない?」
「どうぞ勇者様、お茶です」
「サンキュー、アリスベル、フィオナ」
俺はお茶をごくごくと飲み干して喉を潤してから、老店主に問いかけた。
「それで店主。あいつらに心当たりは? どうも顔見知りだったみたいだったけど」
「顔見知りというか、あいつらはこの辺り一帯で最近幅を利かせている地上げ屋なんです。ここ最近何度も来られていて、そのたびにこうやって立ち退きを迫られていて……」
老店主が顔を曇らせた。
「ごめん、地上げ屋ってなんだ?」
あんまり馴染みのない言葉だな。
「勇者様、地上げ屋とは土地や建物を強引な手段で安く買い取って、それを高値で転売するヤクザ者たちのことです」
「流行り言葉で、転売ヤーって言うんだよね」
「さすがアリスベルさん、よくご存じですね。彼らは非合法スレスレの手段を平然と行うため、多くの民から忌み嫌われているんです」
「そんなあこぎな職業があるのか。ならいっそ国の方で禁止したらいいんじゃないのか?」
「物を買って、他の人に売る。それ自体は普通の商売だから、一律に禁止するのはちょっと難しいの」
「どんな法律を定めても、頭のいい悪人は法のギリギリを狙って――いえ、それどころか法律を逆手に取って悪用して活動するんです」
「はぁ……悪い奴らがいるって分かっているのに取り締まれないなんて、世の中ってほんと面倒くさいよなぁ……」
アリスベルとフィオナの説明を聞いて、俺は大きなため息をついた。
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