【それでも俺は】腰痛で追放された勇者、行き倒れていた所をエルフ整体師にゴキャァ!と整体してもらい完治する【世界を救う】

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第一部 腰痛勇者編

第70話 天地焼却セシ創世ノ黄金光――レーヴァテイン・ブラスト

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 『天地焼却セシ創世ノ黄金光レーヴァテイン・ブラスト』とSSSSランク・ダークネス・ブレス。

 共にSSSSランクの全力が込められた巨大な光の柱と闇のブレスが、ちょうど中間地点で激しくぶつかり合うと。

 互いに互いが喰らい合い、自分の色で相手の色を染め抜かんと獰猛にせめぎ合った!

「おおおおおおおっっ!!」

 グギャァァァァァッッ!!

 SSSSランクの超必殺技の撃ち合いは完全に互角だった。
 技術が要らない単純な力の押し合いなら、同じランク同士優劣はないからだ。

 しかし!

 グルルアアアァァァァァァァァァァッッッ!!

 超越魔竜イビルナークが耳をつんざく咆哮をあげるとともに、SSSSランク・ダークネス・ブレスがさらにどんどんと力を増していく――!

「くっそ、半端ない馬鹿力だな!? さすがは神様を殺した黒き炎ってだけのことはあるぞ――!」

 『天地焼却セシ創世ノ黄金光レーヴァテイン・ブラスト』がじりじりと押され始める。

 それを好機と見たか、超越魔竜イビルナークがさらに力を高めて勝負にくる――!

「――けどな? 俺もパワーだけなら勇者史上最強だって言われてるんだよ! 代々力を継承してきた勇者の中でも最強と言われる俺に! たかが神を殺した程度のお前が、力比べで勝てると思うなよ! うおおおおおおおおおぁぁぁぁぁぁぁぁっっ――――!!!!」

 対して俺も裂帛の気合とともに、力押しには力押しで負けじと押し返していく。

 もはや完全な消耗戦だった。

 互いに限界を超えてさらにさらにと力を注ぎ込み、相手を上まわらんとさらにより一層の力を燃やす究極の我慢比べ。

 全力をさらに超えた全力の全力を込めた最終奥義同士の真っ向勝負の力比べは、しかし――次第に均衡が崩れ始め、光の柱が闇のブレスを喰らい侵食し始める!

 グギャアアアアアアアッッ!

 納得いかぬとばかりに吠え猛り、さらに力を込めようとする超越魔竜イビルナーク。
 それでも闇のブレスは少しずつ少しずつ、俺の放つ光の柱によって押し込まれていった。

「どうして押し込まれるのか不思議そうな顔をしているな? だったら教えてやる、俺の後ろにはアリスベルがいるんだ! アリスベルが見ている前で! アリスベルが俺の背中を押してくれるってのに! だって言うのに俺が負けるにわけにはいかねえだろうが!」

 アリスベルを想うだけで、俺の中には無限の力が湧いてくるんだよ!

 そしてついに!

 煌々たる太陽と化した『破邪の聖剣』が闇のブレスを斬り裂き、その先にいる超越魔竜イビルナークを直撃する!

 決着の時が、きた。

「世界に仇なす古の邪竜よ! 今ここに光と消え去るがいい! 『天地焼却セシ創世ノ黄金光レーヴァテイン・ブラスト』!!」

 大量の光が爆ぜて、周囲一帯が真っ白な輝きに覆われていく。

 まるで目の前に太陽が生まれたかのような激しい光の爆発が、連鎖しながら超越魔竜イビルナークを包み込み――しばらくすると色褪せるように収束していった。

 そうして完全に元の景色に戻った時、そこに超越魔竜イビルナークの姿はもうありはしなかった。

 『天地焼却セシ創世ノ黄金光レーヴァテイン・ブラスト』が欠片も残さず塵と消し去ったのだ。

「俺の勝ちだ――!」

 俺が。
 勇者クロウが超越魔竜イビルナークを見事討伐したのだ。

 そしてそう認識した途端、俺の身体からなにもかもが潮が引くように失われ始めた。

「あ――う――ぁ――」

 ガラン。

 既にその輝きを失っていた『破邪の聖剣』が俺の手から抜け落ちる。
 わずかに遅れて俺の身体も仰向けに倒れはじめた。

 戦闘力をSSSSランクへと引き上げる『テアモ・エトシ・モリアートル』は、自らの命を代償とする勇者の最終奥義だ。

 つまり俺は、生きるために必要な全ての力を完全に使い果たしてしまっていて。

 だからもう『破邪の聖剣』を握っていることも、満足に立っていることすらもできなかったのだ――。

「おにーさん!? おにーさん! おにーさん!!」

 アリスベルが倒れた俺に猛ダッシュで駆け寄ってくるのが、視界の隅でわずかに見える。

 ははっ。
 まったくお前ってやつはそんな必死な顔しやがって。

 いったいどれだけ俺のことが心配で。
 いったいどれほど俺のことを好きすぎるんだよ――。

「あ……う……」

 地面に仰向けに倒れ伏した俺は、アリスベルと呼びかけようとして――だけど俺の口はもう上手くは動いてくれはしなかった。

 どころか俺はもう指一本動かせはしなかったのだ。

 まるで自分の身体が自分のものじゃないみたいだった。

 今の俺は、命が燃え尽きる寸前の燃えカスみたいなもので。
 生命活動が完全に停止しようとしていたのだ。

 さらには身体だけでなく、意識もどんどんと薄れていって――。

 俺のところまで走ってきたアリスベルはしゃがみ込むと、俺の身体をゆすりながら必死に何ごとかを叫んでいる。
 だけど俺の耳はもう、その言葉をわずかたりとも聞きとることはできなかった。

「あり……る、あ……べ……」

 消えゆく意識の中で、俺は懸命に大切な女の子の名を呼ぼうとして。
 最後に一言でいいからその可愛い名前を呼ぼうとして――。

 それでもどうしても呼ぶことができないまま。

 俺の意識は死という名の永劫の闇の中に沈んでいったのだった――。
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