69 / 142
第一部 腰痛勇者編
第68話「燃えよ我が身! 今ここに我は正義の光とならん――!」
しおりを挟む
「そうか、そういうことか。もうアリスベルの中の俺は最高にイケてる男の中の男だったから、これ以上は上がりようがなかったんだな。くっそー、それじゃあ出し惜しみして損したなぁ」
「もうおにーさんってば、ほんとブレないよね。ある意味尊敬するし」
うん。
いつもと同じ口調で、いつもと変わらない笑顔で言えたと思う。
「ってわけでちょっと見ててくれな、さくっと勝ってくるからさ」
そう言うと俺はアリスベルを抱き寄せてそっと優しくキスをした。
一瞬唇を合わせるだけの羽毛のように軽いキス。
それでも俺のアリスベルへの想いはしっかりと伝わったみたいで、
「えへへ……うん、見てるね。おにーさんのカッコいいところをしっかりと見てるから。だからビシッと勝ってよね?」
「ああ、任せとけ。俺が勇者であることを今から証明してくるからさ」
アリスベルは俺の答えに安心したようにうなずくと、ストラスブールの張った結界の中へと戻っていった。
その可愛らしい後ろ姿を、俺は胸に深く刻み込むように、大切に心の中にしまいこむように見送る。
最期にアリスベルと、いつもと変わらない何気ない会話ができてよかった。
アリスベルとキスができて良かった。
これで心置きなく逝ける――。
俺は、既に立ち上がってこちらを見据えていた超越魔竜イビルナークに向き直った。
こうやって覚悟を決めて冷静になって見てみると、向こうも身体中がボロボロで、漆黒の鱗はほとんどがひび割れているし、大きなダメージを受けているのが見て取れた。
ここまで俺は決して一方的にやられてたわけじゃないんだ。
向こうだってこの戦いに勝とうと必死なんだ。
SSSSランクに超越進化したことだってそうだ。
SSSランクの勇者ですら後れを取るほどの異次元の戦闘力は、超越魔竜イビルナークの身体に相当な負荷をかけているはずなんだ。
決して勝てない相手じゃない。
だから俺も――覚悟を決める!
「俺は勇者だ……世界の敵を討滅する人類最強の戦士なんだ!」
俺はもう一度、アリスベルの顔と声と温もりを心の中に思い描くと――、
「燃えよ我が身! 今ここに我は正義の光とならん――!」
全てをかける覚悟とともに、禁呪詠唱を開始した!
勇者が『破邪の聖剣』とともに受け継ぐ秘儀。
己の生命力を全て、戦う力へと問答無用で変換する一度限りの究極奥義。
師匠からは最後の最後どうしようもなくなるまで決して使うなと言われ、死闘を繰り広げた魔王との戦いでも使うことはなかった、文字通り命を代償にしたとっておきの勇者の切り札を、今ここに開放する!
「我こそは! 否! 我こそが世界をあまねく照らす光なり!」
一言一言、言の葉を刻むとともに、生命力がごっそりと根こそぎ持っていかれるようなうすら寒い感覚が襲ってくる。
しかしそんな喪失感にわずかの気後れも恐怖もすることなく、俺は禁呪詠唱を続けていく。
「これより我が身は正義の刃となりて! 我が前に立ちふさがりし全ての愚かなる者を、光り輝く刃でもって、滅し滅ぼし打ち砕かん!」
アリスベルという存在が。
かけがえのない大切な女の子が。
俺に戦う意思と力と覚悟をこれでもかと与えてくれる――!
いくぞ、これが勇者の力の究極顕現!
「破邪顕正は我にあり! 勇者相伝奥義――テアモ・エトシ・モリアートル!」
禁呪が完成した瞬間。
俺の身体から、世界をあまねく照らすがごとき煌々たる光の柱が立ち昇った――!
「もうおにーさんってば、ほんとブレないよね。ある意味尊敬するし」
うん。
いつもと同じ口調で、いつもと変わらない笑顔で言えたと思う。
「ってわけでちょっと見ててくれな、さくっと勝ってくるからさ」
そう言うと俺はアリスベルを抱き寄せてそっと優しくキスをした。
一瞬唇を合わせるだけの羽毛のように軽いキス。
それでも俺のアリスベルへの想いはしっかりと伝わったみたいで、
「えへへ……うん、見てるね。おにーさんのカッコいいところをしっかりと見てるから。だからビシッと勝ってよね?」
「ああ、任せとけ。俺が勇者であることを今から証明してくるからさ」
アリスベルは俺の答えに安心したようにうなずくと、ストラスブールの張った結界の中へと戻っていった。
その可愛らしい後ろ姿を、俺は胸に深く刻み込むように、大切に心の中にしまいこむように見送る。
最期にアリスベルと、いつもと変わらない何気ない会話ができてよかった。
アリスベルとキスができて良かった。
これで心置きなく逝ける――。
俺は、既に立ち上がってこちらを見据えていた超越魔竜イビルナークに向き直った。
こうやって覚悟を決めて冷静になって見てみると、向こうも身体中がボロボロで、漆黒の鱗はほとんどがひび割れているし、大きなダメージを受けているのが見て取れた。
ここまで俺は決して一方的にやられてたわけじゃないんだ。
向こうだってこの戦いに勝とうと必死なんだ。
SSSSランクに超越進化したことだってそうだ。
SSSランクの勇者ですら後れを取るほどの異次元の戦闘力は、超越魔竜イビルナークの身体に相当な負荷をかけているはずなんだ。
決して勝てない相手じゃない。
だから俺も――覚悟を決める!
「俺は勇者だ……世界の敵を討滅する人類最強の戦士なんだ!」
俺はもう一度、アリスベルの顔と声と温もりを心の中に思い描くと――、
「燃えよ我が身! 今ここに我は正義の光とならん――!」
全てをかける覚悟とともに、禁呪詠唱を開始した!
勇者が『破邪の聖剣』とともに受け継ぐ秘儀。
己の生命力を全て、戦う力へと問答無用で変換する一度限りの究極奥義。
師匠からは最後の最後どうしようもなくなるまで決して使うなと言われ、死闘を繰り広げた魔王との戦いでも使うことはなかった、文字通り命を代償にしたとっておきの勇者の切り札を、今ここに開放する!
「我こそは! 否! 我こそが世界をあまねく照らす光なり!」
一言一言、言の葉を刻むとともに、生命力がごっそりと根こそぎ持っていかれるようなうすら寒い感覚が襲ってくる。
しかしそんな喪失感にわずかの気後れも恐怖もすることなく、俺は禁呪詠唱を続けていく。
「これより我が身は正義の刃となりて! 我が前に立ちふさがりし全ての愚かなる者を、光り輝く刃でもって、滅し滅ぼし打ち砕かん!」
アリスベルという存在が。
かけがえのない大切な女の子が。
俺に戦う意思と力と覚悟をこれでもかと与えてくれる――!
いくぞ、これが勇者の力の究極顕現!
「破邪顕正は我にあり! 勇者相伝奥義――テアモ・エトシ・モリアートル!」
禁呪が完成した瞬間。
俺の身体から、世界をあまねく照らすがごとき煌々たる光の柱が立ち昇った――!
0
お気に入りに追加
607
あなたにおすすめの小説
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる