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第一部 腰痛勇者編
第58話『勇者パーティ』再結成
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「アリスベルはそれでいいのか? 死ぬかもしれないんだぞ?」
「それでも、それでもアタシはおにーさんといたいよ。おにーさんだけを行かせたくない、おにーさんの戦いを見届けたいの」
アリスベルが力強い意思のこもった瞳で俺を見つめ、
「私もです! 私も勇者担当特務騎士として、一人の恋人として、勇者様のお側にあり続けたいと思います!」
フィオナもアリスベルに負けじと切なる気持ちを伝えてくる。
これ以上ないほどに2人の想いを受け取った俺は――、
「わかった、一緒に行こう!」
もうここに至っては、その気持ちに応えるしかないのだった。
なぜなら、俺は勇者だから。
好きな女の子の気持ちに応えられないで、なにが勇者だってんだ――!
「おにーさん!」
俺の決断に、アリスベルの顔に極上の笑顔が花開く。
「ただし、絶対に俺の言うことは聞くこと。危険なことは絶対にしないと約束してくれ。してくれるなら一緒に来ていい――いいや違うな、一緒に来てくれアリスベル、フィオナ。俺には君たち2人が必要だ」
「うん!」
「ありがとうございます勇者様、微力を尽くします」
アリスベルとフィオナがそろって俺に抱き着いてきて、俺はそれを強く抱き返す。
触れあったところから、2人の想いが温もりとともに俺の中に染み入るように伝わってきて――。
「ふぉっふぉっふぉ、ここに『勇者パーティ』は再結成とあいなったわけじゃの」
ストラスブールが長い白髭を撫でつけながら満足そうに目を細めた。
話はこれ以上なく完全無欠にまとまった――そう思ってた時期が俺にもありました。
「ところでクロウ、1つ質問なんだけど」
「なんだリヨン?」
「あなた、この2人を両方とも恋人にしてるわけ?」
リヨンがとても冷めた声で指摘した。
「え? いや、その……」
「まさか二股してるの? ありえないんだけど? いつからそんな穴さえあればどこでも挿し込むクズのヤリチンになったのかしら?」
リヨンが静かな声で問うてくる。
だけどその静けさの中に今日一番の怒りをはらんでいることを、かつて勇者パーティの仲間としてともに戦った俺はひしひしと感じ取っていた。
「待ってくれリヨン、これにはいろいろと込み入った事情があってだな……」
「あらそう。じゃあ久しぶりに再会したんだから、旧交を温めるついでにその込み入った事情とやらを聞かせてもらいましょうか」
「ぷ、プライベートなことなので、あまり他人に語って聞かせるようなことではないというか……」
俺は個人の尊厳を大義名分にして誤魔化そうとしたのだが、
「じゃあアタシが説明するね」
突然アリスベルがそんなことを言ったのだ。
「あ、アリスベル!?」
「リヨンさんはさっきアタシの味方してくれたし、おかげでおにーさんと一緒に連れてってもらえることになったからね。だからちょっとしたお礼も兼ねて聞きたいことがあったら答えようかなって」
「だってクロウ。じゃあ晩ご飯でも食べながらアリスベルに話を聞きましょうかしら。そうめんを茹でてたんでしょ? ご相伴にあずかるわ」
「おっと残念! そうめんは3人分しか茹でてないんだよな~。いやー、これは残念だなぁ~」
「おにーさん、アタシたちは話しながら先に食べてるから、おにーさんとストラスブールさんの分は追加で今から茹でといてよ? そうめんは細いからすぐ茹だるでしょ?」
「あ、うん……わかったよ……」
「ふぉっふぉっふぉ、クロウは完全にそのお嬢さんの尻に敷かれておるのぅ」
そういういきさつで、俺は追加のそうめんを茹でることになりました。
見ての通り、一応話は上手くまとまりました。
そして初対面のフィオナに全裸を見せびらかした話とかを詳細に知ったリヨンに、それはもう厳しく言葉責めされたのでした……。
「それでも、それでもアタシはおにーさんといたいよ。おにーさんだけを行かせたくない、おにーさんの戦いを見届けたいの」
アリスベルが力強い意思のこもった瞳で俺を見つめ、
「私もです! 私も勇者担当特務騎士として、一人の恋人として、勇者様のお側にあり続けたいと思います!」
フィオナもアリスベルに負けじと切なる気持ちを伝えてくる。
これ以上ないほどに2人の想いを受け取った俺は――、
「わかった、一緒に行こう!」
もうここに至っては、その気持ちに応えるしかないのだった。
なぜなら、俺は勇者だから。
好きな女の子の気持ちに応えられないで、なにが勇者だってんだ――!
「おにーさん!」
俺の決断に、アリスベルの顔に極上の笑顔が花開く。
「ただし、絶対に俺の言うことは聞くこと。危険なことは絶対にしないと約束してくれ。してくれるなら一緒に来ていい――いいや違うな、一緒に来てくれアリスベル、フィオナ。俺には君たち2人が必要だ」
「うん!」
「ありがとうございます勇者様、微力を尽くします」
アリスベルとフィオナがそろって俺に抱き着いてきて、俺はそれを強く抱き返す。
触れあったところから、2人の想いが温もりとともに俺の中に染み入るように伝わってきて――。
「ふぉっふぉっふぉ、ここに『勇者パーティ』は再結成とあいなったわけじゃの」
ストラスブールが長い白髭を撫でつけながら満足そうに目を細めた。
話はこれ以上なく完全無欠にまとまった――そう思ってた時期が俺にもありました。
「ところでクロウ、1つ質問なんだけど」
「なんだリヨン?」
「あなた、この2人を両方とも恋人にしてるわけ?」
リヨンがとても冷めた声で指摘した。
「え? いや、その……」
「まさか二股してるの? ありえないんだけど? いつからそんな穴さえあればどこでも挿し込むクズのヤリチンになったのかしら?」
リヨンが静かな声で問うてくる。
だけどその静けさの中に今日一番の怒りをはらんでいることを、かつて勇者パーティの仲間としてともに戦った俺はひしひしと感じ取っていた。
「待ってくれリヨン、これにはいろいろと込み入った事情があってだな……」
「あらそう。じゃあ久しぶりに再会したんだから、旧交を温めるついでにその込み入った事情とやらを聞かせてもらいましょうか」
「ぷ、プライベートなことなので、あまり他人に語って聞かせるようなことではないというか……」
俺は個人の尊厳を大義名分にして誤魔化そうとしたのだが、
「じゃあアタシが説明するね」
突然アリスベルがそんなことを言ったのだ。
「あ、アリスベル!?」
「リヨンさんはさっきアタシの味方してくれたし、おかげでおにーさんと一緒に連れてってもらえることになったからね。だからちょっとしたお礼も兼ねて聞きたいことがあったら答えようかなって」
「だってクロウ。じゃあ晩ご飯でも食べながらアリスベルに話を聞きましょうかしら。そうめんを茹でてたんでしょ? ご相伴にあずかるわ」
「おっと残念! そうめんは3人分しか茹でてないんだよな~。いやー、これは残念だなぁ~」
「おにーさん、アタシたちは話しながら先に食べてるから、おにーさんとストラスブールさんの分は追加で今から茹でといてよ? そうめんは細いからすぐ茹だるでしょ?」
「あ、うん……わかったよ……」
「ふぉっふぉっふぉ、クロウは完全にそのお嬢さんの尻に敷かれておるのぅ」
そういういきさつで、俺は追加のそうめんを茹でることになりました。
見ての通り、一応話は上手くまとまりました。
そして初対面のフィオナに全裸を見せびらかした話とかを詳細に知ったリヨンに、それはもう厳しく言葉責めされたのでした……。
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