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第一部 腰痛勇者編
第46話「ば、ぼ、び、べ、ぶ……ブーゲンビリアだ!」
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【CASE.2】
「おにーさん、これはね――」
アリスベルが腰の高さほどしかない背の低い木を指差しながら名前を言いかけて――それに俺は待ったをかけた。
「待ってくれアリスベル、これは知ってる気がするぞ? えっとたしかこれは――ば、ぼ、び、べ、ぶ……ブーゲンビリアだ!」
俺は忘却の彼方にあったその花の名前のサルベージに、見事に成功した。
「うわっ、すごい、大正解!」
アリスベルが目を真ん丸にして驚く。
「ふぅ、俺の記憶力もなかなかのもんだよな。アリスベルの驚いた顔も見れたしよかったよ」
「驚いたは驚いたけど正解したことへの驚きよりも、むしろおにーさんの口からブーゲンビリアなんてハイソな花の名前が出てきたことの方が驚きかな」
「そっちかい……」
まぁ気持ちはわかるけど。
「だってチューリップやバラしか知らないおにーさんが、なんとなんとブーゲンビリアを知ってるだなんて、普通思わないでしょ?」
「ふふん、俺はこう見えて勇者だからな」
「勇者ぜんぜん関係ないし。右足の小指と左足の薬指くらい無関係だし。ちなみにブーゲンビリアもさっきのハナミズキと同じで、花に見えるのは葉っぱなんだよね」
「そこまでは知らなかったな。意外と多いんだな、花みたいな葉っぱをしてる植物って」
「ちなみについでに、おにーさんがブーゲンビリアって名前を知ってた理由を聞いてもいい?」
「えっ!?」
その発言に俺はドキッとして、ついつい大きな声で反応してしまった。
「おにーさんは今なんでそんなに驚いたの?」
「いや、その……なんでもないよ」
俺は言葉を濁した。
「はぁ、どーせおにーさんのことだから、綺麗な女の人に聞いたから覚えてたんだよね?」
「……」
いきなりの鋭すぎるツッコミに、完全に言葉に詰まってしまう俺である。
「はい図星だね」
「はい図星です……」
念押しするように確認されて、俺は小さな声で肯定の言葉を返した。
「ちなみにどんな女の人に聞いたから、全然興味ない花の名前をしっかり記憶に残せたのかな? 参考までに教えてくれない?」
アリスベルがにっこり笑顔で問いかけてくる。
しかし俺はそこに、言いようのない重々しいプレッシャーを感じとっていた。
こ、ここは正直に答えないと……。
「セントフィリア王国の第三王女です」
「へぇ王女さまかぁ。すごく巨乳だったんだよね、きっと」
「ええ、まぁ、はい……とても巨乳でした」
「ミライト商会のマリアンヌさんより?」
「ま、勝るとも劣らずといったところかな……?」
「ふーん。ちなみにどうやって王女さまとお知り合いになったの?」
「セントフィリア王家主催の園遊会に呼ばれて、そこでちょっと仲良くなりまして……」
「ふぅん」
アリスベルがゴミでも見るような冷たい目で俺を見た。
「いや勘違いはしないでくれな? 仲良くって言っても一緒に花を見て、その後庭園でお茶をしたくらいだからな? やましいことはちっともないからな?」
「アタシ別にそんなこと一言も聞いてないよ?」
「……」
「人ってやましいことがあるとやたらと多弁になるよね。あ、あくまで一般論の話ね」
「ううっ、アリスベルにいいところを見せようとしたのに完全に藪蛇だったぞ……」
「もう、そんな迷子になった子供みたいな泣きそうな目をしないの。おにーさんが大きなおっぱいが大好きなえっちっち勇者なのは、今さらなんだから」
そんな俺を、苦笑しながら慰めて(?)くれたアリスベルだった。
……慰めてくれたんだよね?
ともあれ、アリスベルに色々教えてもらいながら、俺は公園散策デートを目いっぱい楽しんだのだった。
「おにーさん、これはね――」
アリスベルが腰の高さほどしかない背の低い木を指差しながら名前を言いかけて――それに俺は待ったをかけた。
「待ってくれアリスベル、これは知ってる気がするぞ? えっとたしかこれは――ば、ぼ、び、べ、ぶ……ブーゲンビリアだ!」
俺は忘却の彼方にあったその花の名前のサルベージに、見事に成功した。
「うわっ、すごい、大正解!」
アリスベルが目を真ん丸にして驚く。
「ふぅ、俺の記憶力もなかなかのもんだよな。アリスベルの驚いた顔も見れたしよかったよ」
「驚いたは驚いたけど正解したことへの驚きよりも、むしろおにーさんの口からブーゲンビリアなんてハイソな花の名前が出てきたことの方が驚きかな」
「そっちかい……」
まぁ気持ちはわかるけど。
「だってチューリップやバラしか知らないおにーさんが、なんとなんとブーゲンビリアを知ってるだなんて、普通思わないでしょ?」
「ふふん、俺はこう見えて勇者だからな」
「勇者ぜんぜん関係ないし。右足の小指と左足の薬指くらい無関係だし。ちなみにブーゲンビリアもさっきのハナミズキと同じで、花に見えるのは葉っぱなんだよね」
「そこまでは知らなかったな。意外と多いんだな、花みたいな葉っぱをしてる植物って」
「ちなみについでに、おにーさんがブーゲンビリアって名前を知ってた理由を聞いてもいい?」
「えっ!?」
その発言に俺はドキッとして、ついつい大きな声で反応してしまった。
「おにーさんは今なんでそんなに驚いたの?」
「いや、その……なんでもないよ」
俺は言葉を濁した。
「はぁ、どーせおにーさんのことだから、綺麗な女の人に聞いたから覚えてたんだよね?」
「……」
いきなりの鋭すぎるツッコミに、完全に言葉に詰まってしまう俺である。
「はい図星だね」
「はい図星です……」
念押しするように確認されて、俺は小さな声で肯定の言葉を返した。
「ちなみにどんな女の人に聞いたから、全然興味ない花の名前をしっかり記憶に残せたのかな? 参考までに教えてくれない?」
アリスベルがにっこり笑顔で問いかけてくる。
しかし俺はそこに、言いようのない重々しいプレッシャーを感じとっていた。
こ、ここは正直に答えないと……。
「セントフィリア王国の第三王女です」
「へぇ王女さまかぁ。すごく巨乳だったんだよね、きっと」
「ええ、まぁ、はい……とても巨乳でした」
「ミライト商会のマリアンヌさんより?」
「ま、勝るとも劣らずといったところかな……?」
「ふーん。ちなみにどうやって王女さまとお知り合いになったの?」
「セントフィリア王家主催の園遊会に呼ばれて、そこでちょっと仲良くなりまして……」
「ふぅん」
アリスベルがゴミでも見るような冷たい目で俺を見た。
「いや勘違いはしないでくれな? 仲良くって言っても一緒に花を見て、その後庭園でお茶をしたくらいだからな? やましいことはちっともないからな?」
「アタシ別にそんなこと一言も聞いてないよ?」
「……」
「人ってやましいことがあるとやたらと多弁になるよね。あ、あくまで一般論の話ね」
「ううっ、アリスベルにいいところを見せようとしたのに完全に藪蛇だったぞ……」
「もう、そんな迷子になった子供みたいな泣きそうな目をしないの。おにーさんが大きなおっぱいが大好きなえっちっち勇者なのは、今さらなんだから」
そんな俺を、苦笑しながら慰めて(?)くれたアリスベルだった。
……慰めてくれたんだよね?
ともあれ、アリスベルに色々教えてもらいながら、俺は公園散策デートを目いっぱい楽しんだのだった。
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