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第一部 腰痛勇者編
第45話 アリスベルと公園デート
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アリスベルと仲直りして、フィオナと3人で結婚を前提にした親密なお付き合いをすることになった翌日。
俺はアリスベルと街のシンボルでもある大きな公園を散策デートしていた。
この町の行政府が管理・運営してる公園で、様々な木や草が植えられていて四季折々に合わせて色んな花が楽しめるのだそうだ。
実際、鬼ごっこして遊ぶ子供や身体を寄せ合う若いカップル、ランニングする中年男性、果ては年配のご老人まで全世代が楽しそうに公園を満喫していた。
そんな公園の中を、俺とアリスベルは手をつないでゆっくりと歩いていく。
もちろんつなぎ方は指を絡める恋人つなぎだ。
アリスベルの柔らかい手を握っていると、優しい温もりと心休まる安心感が感じられた。
「でもせっかくのデートなのに公園の散歩でよかったのか? 今回の討伐の報酬はかなりの額だったから、もっとこうゴージャスにデートできるお金は十分にあるんだぞ?」
「べつにー?」
「もしかして遠慮してるのか?」
「あはは、今さらおにーさんに遠慮はしないし」
「フィオナに聞いたんだけど、エルフ自治領の中心都市ミルズガルドには海みたいな大きな湖があって、その傍に高級ホテルが立ってるんだろ? 最上階のスイートルームを1カ月借り切っても余裕なくらいお金はあるんだぞ?」
「最上階のスイートに1か月も泊まって何するのさ?」
「それはもちろん……観光とか?」
「ならスイートじゃなくてよくない? 寝てる以外はほとんど外にいるんだよね?」
「そう言われるとすごくもったいない気がするな。あ、でも最上階から眺めたらきっといい眺めだぞ。湖が一望できるだろうし」
「1か月も見たら飽きそうなんだけど……」
「だよな、実は俺も言いながらそう思った。一週間も経ったら飽きそうって」
「偉い人とかお金持ちの人の考えることって、アタシたち庶民には時々わからないよねー」
「湯水のようにお金があるから、とりあえず一番高い部屋に泊まってるだけなのかもな。もったいないとか、そもそも気にすることもなさそうだし」
「ふふっ、それはあるかも」
「だろ?」
そんな何気ない会話を楽しみながら散策していると、公園の植物園ゾーンに差し掛かった。
「植物園ゾーンはね、この時期は緑が多くていろんなお花が咲いてて、特に綺麗なんだよね~。あ、ラベンダーだ。綺麗だしいい匂い~」
アリスベルが紫色の花の前で立ち止まって、嬉しそうに前かがみになる。
「へえ、これが有名なラベンダーか。名前だけは聞いたことがあったんだけど、こんな花だったんだな」
「おにーさんは花はあまり知らないの?」
「チューリップとバラはわかるぞ。あとはアサガオにタンポポだろ……それとアジサイもわかるな」
「あはは、未就学児童じゃないんだからさ……じゃあせっかくだし教えてあげるね。アタシも詳しいわけじゃないけど、間違いなくおにーさんよりは知ってると思うから」
「せっかくだし教えてもらおうかな」
というわけで、歩きながらアリスベルに初夏の花をあれこれ教えてもらうことになった。
【CASE.1】
「これはハナミズキっていうの」
アリスベルがまっ赤な大きな花をたくさんつけた低木を指差して言った。
「ハナミズキか、初めて聞いたな。でも大きくて綺麗な花がいっぱい咲いてて、豪奢な花だな」
「ふふーん、期待通りの感想をありがと。でもこの花に見える部分って、実は葉っぱなんだよね」
「え、そうなのか? でもどう見ても花だぞ? 俺を騙そうったってそうはいかないからな?」
「なんでアタシがおにーさんを騙す必要があるのよ? ほらよく見てよ、花はこの真ん中にあるここのところだけなの。よーく見たら小さい花がいくつも集まってるでしょ?」
「うわマジだ、大きな花の真ん中に小さな花がたくさんある!」
「外側の花に見える部分は、ここに花がありますよーって、虫や鳥に知らせるためのものなんだって」
「へぇ、そうなのか。世の中にはこんなものがあるんだな、驚いたよ」
俺はアリスベルと街のシンボルでもある大きな公園を散策デートしていた。
この町の行政府が管理・運営してる公園で、様々な木や草が植えられていて四季折々に合わせて色んな花が楽しめるのだそうだ。
実際、鬼ごっこして遊ぶ子供や身体を寄せ合う若いカップル、ランニングする中年男性、果ては年配のご老人まで全世代が楽しそうに公園を満喫していた。
そんな公園の中を、俺とアリスベルは手をつないでゆっくりと歩いていく。
もちろんつなぎ方は指を絡める恋人つなぎだ。
アリスベルの柔らかい手を握っていると、優しい温もりと心休まる安心感が感じられた。
「でもせっかくのデートなのに公園の散歩でよかったのか? 今回の討伐の報酬はかなりの額だったから、もっとこうゴージャスにデートできるお金は十分にあるんだぞ?」
「べつにー?」
「もしかして遠慮してるのか?」
「あはは、今さらおにーさんに遠慮はしないし」
「フィオナに聞いたんだけど、エルフ自治領の中心都市ミルズガルドには海みたいな大きな湖があって、その傍に高級ホテルが立ってるんだろ? 最上階のスイートルームを1カ月借り切っても余裕なくらいお金はあるんだぞ?」
「最上階のスイートに1か月も泊まって何するのさ?」
「それはもちろん……観光とか?」
「ならスイートじゃなくてよくない? 寝てる以外はほとんど外にいるんだよね?」
「そう言われるとすごくもったいない気がするな。あ、でも最上階から眺めたらきっといい眺めだぞ。湖が一望できるだろうし」
「1か月も見たら飽きそうなんだけど……」
「だよな、実は俺も言いながらそう思った。一週間も経ったら飽きそうって」
「偉い人とかお金持ちの人の考えることって、アタシたち庶民には時々わからないよねー」
「湯水のようにお金があるから、とりあえず一番高い部屋に泊まってるだけなのかもな。もったいないとか、そもそも気にすることもなさそうだし」
「ふふっ、それはあるかも」
「だろ?」
そんな何気ない会話を楽しみながら散策していると、公園の植物園ゾーンに差し掛かった。
「植物園ゾーンはね、この時期は緑が多くていろんなお花が咲いてて、特に綺麗なんだよね~。あ、ラベンダーだ。綺麗だしいい匂い~」
アリスベルが紫色の花の前で立ち止まって、嬉しそうに前かがみになる。
「へえ、これが有名なラベンダーか。名前だけは聞いたことがあったんだけど、こんな花だったんだな」
「おにーさんは花はあまり知らないの?」
「チューリップとバラはわかるぞ。あとはアサガオにタンポポだろ……それとアジサイもわかるな」
「あはは、未就学児童じゃないんだからさ……じゃあせっかくだし教えてあげるね。アタシも詳しいわけじゃないけど、間違いなくおにーさんよりは知ってると思うから」
「せっかくだし教えてもらおうかな」
というわけで、歩きながらアリスベルに初夏の花をあれこれ教えてもらうことになった。
【CASE.1】
「これはハナミズキっていうの」
アリスベルがまっ赤な大きな花をたくさんつけた低木を指差して言った。
「ハナミズキか、初めて聞いたな。でも大きくて綺麗な花がいっぱい咲いてて、豪奢な花だな」
「ふふーん、期待通りの感想をありがと。でもこの花に見える部分って、実は葉っぱなんだよね」
「え、そうなのか? でもどう見ても花だぞ? 俺を騙そうったってそうはいかないからな?」
「なんでアタシがおにーさんを騙す必要があるのよ? ほらよく見てよ、花はこの真ん中にあるここのところだけなの。よーく見たら小さい花がいくつも集まってるでしょ?」
「うわマジだ、大きな花の真ん中に小さな花がたくさんある!」
「外側の花に見える部分は、ここに花がありますよーって、虫や鳥に知らせるためのものなんだって」
「へぇ、そうなのか。世の中にはこんなものがあるんだな、驚いたよ」
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