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第一部 腰痛勇者編

第36話 ギガントグリズリー(複数)討伐戦(下)

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 勇者の力とは生命エネルギーを戦闘力に変換したものだ。
 『気』などという概念で呼ばれることもある。

 つまり勇者というのは、常に自らの命を力に変えて戦っているのだった。
 だから限界を越えて勇者の力を使うと、生命エネルギーが枯渇して死ぬ可能性があった。

 そういうリスクのある力なので普段はリミッターがかかっていて、だから限界を超えて勇者の力を使うことはできなくなっている。

 しかし強大な敵を相手にするには、時に人間の限界を超えることが必要だった。

 そして俺は今そのストッパーを外し、人間の限界を超えて己の生命力を燃やして強大な勇者の力へと変換していく――!

 4体のSSランク・ギガントグリズリーと渡り合う中、『破邪の神楽』が進むにつれて俺の勇者パワーが今までとはけた違いに増幅していく。
 一部過剰に発露した勇者パワーは、俺の身体からオーラとなって立ち昇りはじめていた。

「ってわけで接近戦用のスーパーモードでいくぜ! オラァッっ!!」
 やりすぎると本気で死んでしまう、そんな短期決戦専用の真なる勇者の力を俺はついに完全解放する。
 
 すると今まで剛毛によってどうにも通らなかった斬撃が、1体のSSランク・ギガントグリズリーの右腕の肘から先を一発で斬り飛ばした!

 グルウギャァァァァァァッッ!!??

 俺の攻撃が急に威力を増し、自慢の防御力を貫通されたことで、SSランク・ギガントグリズリーは驚いたようにビクッと身体を震わせる。
 痛みと怒りを猛烈に吠え散らかしながら、しかし一歩二歩と俺と距離を取るように後ずさった。

「ははっ、戦いの場で怯えたな?」
 そしてSSランク・ギガントグリズリーが初めて見せたその弱気な姿勢を、見逃すような俺ではなかった。

 目にも止まらぬ鮮烈な踏み込みで一気に肉薄すると、右腕を失った個体に激烈なる連続攻撃を叩き込んで追撃する。
 身体中を斬り刻まれ、全身から鮮血を吹き上げたSSランク・ギガントグリズリーは、そのまま倒れて動かぬ屍となり果てた。

「まずは一体。次はお前らだぜ、お仲間の隣に並べてやる」

 俺はニヤッと笑いながら言うと、左手の中指を立ててクイクイと2回折り曲げ、残った3体を挑発する。

 それを見た1体が、俺に向かって怒りの咆哮とともに突っこんできた。

 グルゥアァァァァァァッッッ――――ッ!!

 勢いそのままに巨大な爪を振り下ろしてくる!
 だがしかし――!

「味方がいるんだから協力くらいしろよな? 単騎で正面から突っ込んでくるとか、力を全開放した勇者を舐めてんじゃねぇっつーの!」

 その瞬間、俺の身体が残像を残して消えた。
 突っこんできた1体は盛大に攻撃を空振り、既に何もない空間ごと地面をたたいてもうもうと土煙を巻きあげる。

 その時すでに爆発的な跳躍によって、俺の身体は宙に舞っていた。
 さらに何もない空中を蹴ると猛加速し、攻撃を空振って無防備になっていたSSランク・ギガントグリズリーの首を、着地と同時に一気に叩き落とす!

 空中ステップ。
 真の力を解放した勇者は、空中でも自在に戦闘機動を行えるのだ!

「乗ってくれたらラッキーくらいで挑発したら、我を忘れて馬鹿みたいに突っこんでくるとはな。SSランクとはいえしょせんは魔獣か」

 労せず2体目も倒した俺は、残る2体へと視線を向ける。
 さすがに残る2体は、協力して戦おうとしている様子だった。

 だが時すでに遅し。
 もはや2体のSSランク・ギガントグリズリーなぞ、勇者の真の力を解放した今の俺の敵ではない!!

「おおおおっっっ!!」

 俺は際限なく湧き上がる力をあますところなく発揮し、『破邪の聖剣』を振るう。
 そしてそのまま残る2体のSSランク・ギガントグリズリーを、圧倒的なまでの力でもって完膚なきまでに叩き伏せたのだった。
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