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第一部 腰痛勇者編

第12話 結成、臨時勇者パーティ!

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「お待たせ。それで話ってのは? フィオナは騎士だから、多分昨日の聞き取り調査かなにかかな?」

 ちゃんと服を身にまとった俺は、全裸応対という失態をなかったことにするために、極めて理性的かつ紳士的に、さわやかな笑顔でもってフィオナに話しかけた。

「それもありますが、今日は勇者様にぜひともグレートタイガーの群れの討伐を手伝っていただけないかと、依頼をしに参った次第です」

「あー、そういやアリスベルが言ってたな。キングウルフやグレートタイガーが群れで出るって。キングウルフは昨日全滅させたから、残ってるのはグレートタイガーってわけだな」

「昨日の話は町長よりうかがっております。ご助力いただき本当にありがとうございました」

「いやいや、勇者として当然のことをしたまでだから」
 もう元勇者なんだけど、それについては今はいいだろう。

「それでグレートタイガーの群れの討伐の話なのですが、もちろん討伐に見合う報酬は自治政府と騎士団からお出しします。なにとぞ勇者様のお力添えをご検討をいただければ――」

「その件ならアリスベルに頼まれてるからもちろんやるよ」

「アリスベルさんにですか?」
「最近近くに出て危ないから退治して欲しいって、頼まれてたんだよな」

「報酬などはどのような形なのでしょうか?」
「報酬っていうか俺の腰を治してくれたお礼だな」

「はぁ……つまり恋人に頼まれたからやるということでしょうか?」

「だからまだ恋人じゃないし!」
 フィオナの言葉にアリスベルがすかさず異議申し立てを行った。

「ではセフレに――」
「だから違うっつーの! 愛ありまくりだっつーの! アタシはそんな尻の軽い股ユル女じゃないもん!」

「そうだぞ、俺たちは結婚を誓いあった仲だ」
「それはもっと違うっつーの!」

「な!? まさか俺との事は遊びだったのか? 俺の身体だけが目的だったのか? ヤリモクだったのか!?」
「それむしろアタシのセリフだよね!?」

「たいへん盛り上がっているところ恐縮ですが、夫婦喧嘩はそのあたりにしていただければと」
「だから全然ちっとも夫婦じゃないってば!?」

「そうだぞ、まだ結婚はしていないが、婚約ちょい前くらいな感じだ」
「おにーさんはちょっと黙ってて。あとさらっと既成事実化しようとしないでください」

「はい……」
 アリスベルに怒られてしまったよ。
 
「こほん。結局、勇者様は討伐を手伝ってくれるということでよろしいでしょうか?」
「もちろんだ。あ、でも報酬は貰うからな? アリスベルから働からざるもの食うべからずって言われてるから」

「もちろんです」

「お金は全額アリスベルに渡しといてくれな」
「かしこまりました」

「え? 討伐の報奨金はおにーさんがもらうお金でしょ?」

「今は衣食住腰ぜんぶアリスベルのやっかいになってるからな、養い主にお金くらいは入れるさ」

「んーと、じゃあ使うのは一緒ってことで」
「俺は別にどういう形でも構わないから、アリスベルの考えに従おう」

「あ、もしかしてアタシに金銭的に恩を売っておこうとか、そういうセコいこと考えてないでしょうね?」

「……」

「図星か!」

「こほん……で、いつ行くんだ? グレートタイガーの住処や数は特定できているのか?」

 俺は咳ばらいをすると露骨に話を変えた。
 勇者には素早く的確な状況判断も求められるのである。

「もちろん全て調べてあります。後は討伐に行くだけです」
「なら早い方がいいな。よし、今から行くか」

「今からですか? 討伐部隊を編成・招集しなければなりませんので、できれば数日の猶予を――」

「そんな大人数は必要ないさ、むしろ足手まといだ。そうだな、俺とフィアナとアリスベルの3人で行こう」

「え、アタシも? アタシまったく戦えないよ?」
 アリスベルが驚いたように言って、

「いくら勇者様がお強いとはいえ、Aランク魔獣の群れを討伐にいくのに非戦闘員を連れていくのは、リスクを考えると少々賛成しかねるのですが……」

 フィアナも少し困ったように進言してくる。

「こう言っちゃなんだが、俺の側にいるのが一番安全なんだよ。逆に俺のいない間にアリスベルに何かあったら困る。町が襲われたばかりだしな。だからアリスベルも連れていくのが絶対条件だ」

「お、おにーさん……。もうあんまり恥ずかしいこと言わないでよね……」

 とかなんとか上目遣いで言いながら、赤らめた顔をプイっと背ける可愛らしいアリスベルであった、ふふっ。

 ちなみに今のは全部建前で、本当の理由は別にあったりする。
 つまりアリスベルに俺がグレートサーベルをボコボコにするカッコいい姿を見せたいからだった。

 でも言わなくていいことなので当然俺は言わなかった。

 ぶっちゃけAランクの魔獣討伐なんて、SSSランクの俺なら目をつぶっててもできるんだよな。
 だからアリスベルを連れていくリスクはまったくのゼロだし。

「わかりました。勇者様がそうおっしゃるのであればすぐに向かいましょう。馬車を用意してまいります。途中の町で一泊して、翌日徒歩で討伐に向かうと段取りでよろしいでしょうか」

「了解だ」
「一泊するなら着替えとか用意しないとだよね」

「では用意を整えて参りますので、そうですね、1時間後に迎えに参ります」

 ってなわけで。
 勇者の俺と、整体師のアリスベルと、女騎士フィオナの臨時勇者パーティは、Aランク魔獣グレートタイガーの群れの討伐に向かったのだった。
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