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第一部 腰痛勇者編
第3話 腰痛勇者、凄腕整体師エルフにプロポーズする。
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「その様子だとまったく問題はなさそうだね」
「嘘だろ? 信じられない! 長年の悩みだった腰痛がこんなに簡単に解消するなんて! 王都一の回復術師の治癒魔法でも治らなかったっていうのに」
俺は驚きと感動を隠せないでいた。
これを一言で言うならば、まさに奇跡! 神の御業だ!!
「それは良かったね。そんなに喜んでくれたらアタシも施術した甲斐があったかな」
「いやいや本当に凄いよ、近所評判だってのも納得だ。ありがとう、君は俺の命と俺の腰の恩人だ」
「いえいえ、どういたしまして」
「本当に感謝してもしきれないよ」
俺はそう言うと美しい所作で片膝をつき、さらには右手を心臓に、左手は腰の後ろに回してから頭を下げる、騎士の最敬礼でもって、これ以上ない感謝の気持ちを示してみせた。
「そんな大げさだってば」
「おおげさなもんか。今の気持ちを表すなら――」
「表すなら?」
「君が好きだ、結婚してくれないか?」
俺は片膝をついたまま顔を上げると、右手を差し出してプロボーズをした。
「いやあの、いきなりなに言ってるの? おにーさんって真面目そうに見えて、実は女好きで経験人数豊富なチャラ男? アタシ、チャラ男は嫌いなんだけど。変な病気移されそうだし」
「それはよかった。白状すると俺は女性経験が全くない、どこに出しても恥ずかしくない完全無欠の童貞だよ」
「完全無欠の童貞って……童貞の時点でいろいろ恥ずかしくて足りてないんじゃ……」
「なにぶん俺は10代の頃はずっと魔王討伐の戦いに明け暮れてたし、討伐した後はずっと腰痛に苦しんでたからな。女性とそういう関係になる機会は皆無だったんだよ、なにせ腰が痛かったから。ここ最近は腰をどうにかすることしか考えてなかった」
「人生で初めて童貞を告白されたし……しかもその理由ときたら前半は超すごいのに、後半が超切ない……ほろり」
「俺はこの腰痛が一生治らないと思ってたんだ。日常生活も辛くて、本当に人生真っ暗だった。あげく国を追放までされてしまった。それを君は治してくれたんだよ。俺はこの辛い腰痛を治してくれた君と結婚したい、これが俺の素直な気持ちなんだ!」
腰痛に苦しむ人間にとって、腰痛が治ることはどんな栄誉や称号よりも価値のあることなのだ。
だから俺が凄腕美少女エルフ整体師に一発で惚れてしまったのは、これはもう当然のことなのだった。
重い腰痛持ちならこの気持ちをきっと理解してくれるはず。
あとはまぁその、顔も好みです。
綺麗な中に可愛いらしい感じがあって、すごく好みな感じ。
さらさらの銀髪は神秘的だし、行き倒れの俺に声をかけてくれた優しいところか、明るくて話しやすい性格もとても素敵だと思う。
「ま、まぁ冗談はそのあたりにして」
「俺は本気だよ、いつかプロポーズの答えをくれると嬉しい」
「ま、まぁいつかね……せめてもう少しおにーさんの人となりを知ってからね……」
「死ぬまで待ってるからな」
「うぐ、重い、すごく重い……。あ、そうだ。それはそれとして、悪い状態が長くて身体がそれを覚えちゃってて。だからしばらくはまた悪い状態に身体が戻ろうとすると思うの。だから今日やったみたいな身体の中の矯正を、定期的に続けたほうがいいと思うよ」
「ふむ、つまり俺が君と一緒にいる理由ができたわけだな。俺の腰を任せられるのは君しかいない。これからも俺の腰と、あと俺のことも頼みたい」
「あはは……おにーさんって意外と押しが強いよね。ところでお兄さんは人間なのにこんなところで何をしてたの? エルフになにか用事?」
エルフの少女が少しだけ警戒するように尋ねてきた。
「嘘だろ? 信じられない! 長年の悩みだった腰痛がこんなに簡単に解消するなんて! 王都一の回復術師の治癒魔法でも治らなかったっていうのに」
俺は驚きと感動を隠せないでいた。
これを一言で言うならば、まさに奇跡! 神の御業だ!!
「それは良かったね。そんなに喜んでくれたらアタシも施術した甲斐があったかな」
「いやいや本当に凄いよ、近所評判だってのも納得だ。ありがとう、君は俺の命と俺の腰の恩人だ」
「いえいえ、どういたしまして」
「本当に感謝してもしきれないよ」
俺はそう言うと美しい所作で片膝をつき、さらには右手を心臓に、左手は腰の後ろに回してから頭を下げる、騎士の最敬礼でもって、これ以上ない感謝の気持ちを示してみせた。
「そんな大げさだってば」
「おおげさなもんか。今の気持ちを表すなら――」
「表すなら?」
「君が好きだ、結婚してくれないか?」
俺は片膝をついたまま顔を上げると、右手を差し出してプロボーズをした。
「いやあの、いきなりなに言ってるの? おにーさんって真面目そうに見えて、実は女好きで経験人数豊富なチャラ男? アタシ、チャラ男は嫌いなんだけど。変な病気移されそうだし」
「それはよかった。白状すると俺は女性経験が全くない、どこに出しても恥ずかしくない完全無欠の童貞だよ」
「完全無欠の童貞って……童貞の時点でいろいろ恥ずかしくて足りてないんじゃ……」
「なにぶん俺は10代の頃はずっと魔王討伐の戦いに明け暮れてたし、討伐した後はずっと腰痛に苦しんでたからな。女性とそういう関係になる機会は皆無だったんだよ、なにせ腰が痛かったから。ここ最近は腰をどうにかすることしか考えてなかった」
「人生で初めて童貞を告白されたし……しかもその理由ときたら前半は超すごいのに、後半が超切ない……ほろり」
「俺はこの腰痛が一生治らないと思ってたんだ。日常生活も辛くて、本当に人生真っ暗だった。あげく国を追放までされてしまった。それを君は治してくれたんだよ。俺はこの辛い腰痛を治してくれた君と結婚したい、これが俺の素直な気持ちなんだ!」
腰痛に苦しむ人間にとって、腰痛が治ることはどんな栄誉や称号よりも価値のあることなのだ。
だから俺が凄腕美少女エルフ整体師に一発で惚れてしまったのは、これはもう当然のことなのだった。
重い腰痛持ちならこの気持ちをきっと理解してくれるはず。
あとはまぁその、顔も好みです。
綺麗な中に可愛いらしい感じがあって、すごく好みな感じ。
さらさらの銀髪は神秘的だし、行き倒れの俺に声をかけてくれた優しいところか、明るくて話しやすい性格もとても素敵だと思う。
「ま、まぁ冗談はそのあたりにして」
「俺は本気だよ、いつかプロポーズの答えをくれると嬉しい」
「ま、まぁいつかね……せめてもう少しおにーさんの人となりを知ってからね……」
「死ぬまで待ってるからな」
「うぐ、重い、すごく重い……。あ、そうだ。それはそれとして、悪い状態が長くて身体がそれを覚えちゃってて。だからしばらくはまた悪い状態に身体が戻ろうとすると思うの。だから今日やったみたいな身体の中の矯正を、定期的に続けたほうがいいと思うよ」
「ふむ、つまり俺が君と一緒にいる理由ができたわけだな。俺の腰を任せられるのは君しかいない。これからも俺の腰と、あと俺のことも頼みたい」
「あはは……おにーさんって意外と押しが強いよね。ところでお兄さんは人間なのにこんなところで何をしてたの? エルフになにか用事?」
エルフの少女が少しだけ警戒するように尋ねてきた。
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