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第56話 聖女の帰還 (上)
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「クレア、ごめんだけど、そろそろ起きて。王都が見えてきたよ」
ふと耳元で聞こえたライオネルの優しい言葉を耳にして、
「ふぇ……? んふぁ……? ……んはあっ!? わ、わたし寝ちゃってました!?」
わたしはハッと目を覚ました。
見ると、ライオネルが入り口から馬車の中を覗きこんでいる。
「あはは、すごく気持ちよさそうに眠ってたね」
完全に寝起きなわたしに、ライオネルが優しく笑いかけてくる。
「えっとあの、こ、これはその! 決して気持ちが緩んでいたわけではなくてですね!?」
わたしはあたふたと言い訳をはじめた。
「王都に近づくにつれて、神龍さまの気配がどんどん濃くなってきたので、目をつむって集中して神龍さまの気の流れを読んでたんです! でもでも馬車の揺れがコトコトコトコト揺りかごみたいで、すごく気持ちよくて、そうしたらいつの間にかホワーってなって、気づいたら寝ちゃってたと言いますか……!?」
言い訳っていうか、ほんとのことなんだよ?
ほんとにほんとなんだよ……?
いざ神龍さまと向かい合った時に、その心にすぐに寄り添えるように、あらかじめその日の神龍さまの気分とか感覚をつかんでおくのは、大事な準備の1つなんだもん!
「あはは、別にクレアを責めたわけじゃないんだ。むしろそれくらい平然と落ち着いてくれてた方が、こっちとしても安心できるしね」
「えっと、はい、ありがとうございます……?」
褒められたよね?
うん、褒められたはず。
ライオネルにも褒めてもらえたし。
ぐっすり眠って頭もすっきりしてるし。
よーし、がんばるぞー!
わたしはふんすと気合を入れた。
そしてその数分後。
わたしたちはついに、神龍国家シェンロンの王都ウーフェイへとたどり着いた。
「まるで龍が怒っているような空だ――」
空を見上げたライオネルが、小さくつぶやいた。
わたしも同じ意見だ。
上空にはおどろおどろしい黒雲が立ち込めていて、神龍さまの怒りを体現したかのようなカミナリが、ゴロゴロピカーンと次々と鳴り響いている。
そんな黒雲とカミナリに覆われた王都は、気勢を上げる血気盛んな民衆であふれ返っていた。
ものすごい数の人々が、特に王宮とその近くに集まっている。
そんな彼らの一人がわたしたちに気がついた。
「おい、誰か来たぞ! 騎兵と馬車だ!」
「黒地に無骨な剣と盾……あれは第5師団の旗だぞ!」
「第5師団だって!? まさか俺たちを鎮圧しに来たのか!?」
「や、やれるもんならやってみろ!」
「待て、なにか変だ。だいたい鎮圧が目的なら、あんな少人数でやってくるわけがない。それにあの馬車――」
すぐに騒ぎを聞きつけて、民衆の代表みたいな人がやってきた。
「私は商業組合の代表者で、今は民衆たちの暫定代表も務めている者です。シェンロン軍第5師団がやってきた目的を、まずはお聞かせ願いたい。もし鎮圧するというのなら、我々は全力での抵抗を辞さないでしょう」
そこまで言って代表者は、目を見開いた。
「ラ、ライオネル殿下!? そちらにおられるのは、ブリスタニア王国の第3王子ライオネル殿下ではありませんか?」
ライオネルの顔を見て、ものすごくびっくりしている。
あ、そっか。
商業組合の代表者なら、他国の王族の顔を知っててもおかしくはないよね。
ライオネルはシェンロンにもよく来てたみたいだし。
おどろいてる代表者に向かって、ライオネルが言った。
「代表者殿、馬上から失礼する。ボクはブリスタニア王国第3王子ライオネルだ」
「おおっ、やはりライオネル殿下でございましたか」
代表者が「ハハァッ!」と頭を下げると、近くの民衆も次々と頭を下げた。
ふと耳元で聞こえたライオネルの優しい言葉を耳にして、
「ふぇ……? んふぁ……? ……んはあっ!? わ、わたし寝ちゃってました!?」
わたしはハッと目を覚ました。
見ると、ライオネルが入り口から馬車の中を覗きこんでいる。
「あはは、すごく気持ちよさそうに眠ってたね」
完全に寝起きなわたしに、ライオネルが優しく笑いかけてくる。
「えっとあの、こ、これはその! 決して気持ちが緩んでいたわけではなくてですね!?」
わたしはあたふたと言い訳をはじめた。
「王都に近づくにつれて、神龍さまの気配がどんどん濃くなってきたので、目をつむって集中して神龍さまの気の流れを読んでたんです! でもでも馬車の揺れがコトコトコトコト揺りかごみたいで、すごく気持ちよくて、そうしたらいつの間にかホワーってなって、気づいたら寝ちゃってたと言いますか……!?」
言い訳っていうか、ほんとのことなんだよ?
ほんとにほんとなんだよ……?
いざ神龍さまと向かい合った時に、その心にすぐに寄り添えるように、あらかじめその日の神龍さまの気分とか感覚をつかんでおくのは、大事な準備の1つなんだもん!
「あはは、別にクレアを責めたわけじゃないんだ。むしろそれくらい平然と落ち着いてくれてた方が、こっちとしても安心できるしね」
「えっと、はい、ありがとうございます……?」
褒められたよね?
うん、褒められたはず。
ライオネルにも褒めてもらえたし。
ぐっすり眠って頭もすっきりしてるし。
よーし、がんばるぞー!
わたしはふんすと気合を入れた。
そしてその数分後。
わたしたちはついに、神龍国家シェンロンの王都ウーフェイへとたどり着いた。
「まるで龍が怒っているような空だ――」
空を見上げたライオネルが、小さくつぶやいた。
わたしも同じ意見だ。
上空にはおどろおどろしい黒雲が立ち込めていて、神龍さまの怒りを体現したかのようなカミナリが、ゴロゴロピカーンと次々と鳴り響いている。
そんな黒雲とカミナリに覆われた王都は、気勢を上げる血気盛んな民衆であふれ返っていた。
ものすごい数の人々が、特に王宮とその近くに集まっている。
そんな彼らの一人がわたしたちに気がついた。
「おい、誰か来たぞ! 騎兵と馬車だ!」
「黒地に無骨な剣と盾……あれは第5師団の旗だぞ!」
「第5師団だって!? まさか俺たちを鎮圧しに来たのか!?」
「や、やれるもんならやってみろ!」
「待て、なにか変だ。だいたい鎮圧が目的なら、あんな少人数でやってくるわけがない。それにあの馬車――」
すぐに騒ぎを聞きつけて、民衆の代表みたいな人がやってきた。
「私は商業組合の代表者で、今は民衆たちの暫定代表も務めている者です。シェンロン軍第5師団がやってきた目的を、まずはお聞かせ願いたい。もし鎮圧するというのなら、我々は全力での抵抗を辞さないでしょう」
そこまで言って代表者は、目を見開いた。
「ラ、ライオネル殿下!? そちらにおられるのは、ブリスタニア王国の第3王子ライオネル殿下ではありませんか?」
ライオネルの顔を見て、ものすごくびっくりしている。
あ、そっか。
商業組合の代表者なら、他国の王族の顔を知っててもおかしくはないよね。
ライオネルはシェンロンにもよく来てたみたいだし。
おどろいてる代表者に向かって、ライオネルが言った。
「代表者殿、馬上から失礼する。ボクはブリスタニア王国第3王子ライオネルだ」
「おおっ、やはりライオネル殿下でございましたか」
代表者が「ハハァッ!」と頭を下げると、近くの民衆も次々と頭を下げた。
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