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第55話 聖女、出陣する。(下)
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「せやぁっ! はぁぁ――っ!」
ライオネルの神速の連続剣が、立て続けにキングウルフを斬り倒した。
「よし! ライオネル殿下のお力で道が開けたぞ! 隊形を維持したまま、一気に突破する! 私に続け!」
指揮官さんの号令で、わたしを乗せた馬車と第5師団選りすぐりの騎兵部隊は、速度を上げると数を減らしたキングウルフの群れを一気に突破した。
既に5度目となるキングウルフとの遭遇戦も、ライオネルの活躍と指揮官さんの巧みな手腕で見事に乗りきったのだった。
「でも、ブリスタニアに来るときは1回しか遭遇しなかったから、明らかにキングウルフの数が増えてるよね……」
事態はかなり深刻だと、わたしは改めて認識していた。
「だったら一秒でも早く、神龍さまの怒りを鎮めないとね!」
そして戦闘が一段落した後、わたしの乗る馬車の近くで、ライオネルと指揮官さんが馬に乗ったまま話を始めた。
ステキな男の人同士の会話に興味が無くもないわたしは、馬車の中からこっそりと聞き耳を立ててみた。
なになに……。
「ライオネル殿下、相変わらずの剣の冴えですな。我々が2人がかりでやっと相手ができるキングウルフを、たった1人で次々と倒してしまうのですから。“真紅の閃光”の異名は、伊達ではありませんな。たいへん感服いたしました」
「ありがとう。そういう君の指揮も実に素晴らしいね。さすが大国シェンロンで、師団長を務めていただけのことはある」
「お褒めにあずかかり光栄です。しかし今日選んだメンバーは皆、私が在籍していた当時に尽くしてくれた、気心の知れたメンバーでしてな。あうんの呼吸があると申しますか、意図がすぐ伝わるので指揮するのも楽なものなのですよ」
「そうは言っても、軍を除隊してからもうけっこう経つんだろう?」
ライオネルの質問に、
「今年でもう6年になりますか」
指揮官さんはしみじみとした声で答える。
「だって言うのに、いまだになお当時の部下からあつい信頼を受けている。どうだい、これが終わったらブリスタニア軍で働かないかい? 傭兵のまま燻らせておくのは色々と惜しい。いきなり師団長クラスは無理にしても、相応の地位で、迎え入れさせてもらうよ?」
おおっ、ライオネルがわたしの時みたいに勧誘した!
「なんともったいなきお言葉。ですがそう言った話も、まずはこのミッションを成功させてからですな。後のことは、その時にでも考えさせていただきたく」
わわっ、だけど王子さまに勧誘されたっていうのに、指揮官さんはあいまいに先延ばししちゃったよ!?
わたしなんかライオネルに提案された瞬間、二つ返事で飛びつくようにオッケーしたのに!?
なんていうか、人としての器が違う感じ!
「もちろんだとも。だけど良い返事が返ってくることを、期待しているよ?」
「殿下は見かけによらず、意外に押しが強いですなぁ」
「ははっ、優秀な人材を遊ばせておくほど、ブリスタニアは余裕のある国じゃないからね」
ライオネルはニコッと笑ってそう言うと、さらに言葉を続ける。
「ああ、もし傭兵団の部下のことを気にしているのなら、一緒に連れてきてもらってもかまわないよ。もちろん能力や素行面で、最低限の振るいにはかけさせてもらうけどね?」
「いやはや、そこまでお見通しでしたか。おみそれいたしました」
…………
……
はうー、なんだかオシャレでステキな会話だったねー。
胸の中がぽわーってなったよ。
ほんとステキ過ぎて、わたしには絶対できない会話っていうか?
わたしは、最終決戦に向けてたいへん英気を養わせてもらったのでした。
がんばるぞ、おー!
ライオネルの神速の連続剣が、立て続けにキングウルフを斬り倒した。
「よし! ライオネル殿下のお力で道が開けたぞ! 隊形を維持したまま、一気に突破する! 私に続け!」
指揮官さんの号令で、わたしを乗せた馬車と第5師団選りすぐりの騎兵部隊は、速度を上げると数を減らしたキングウルフの群れを一気に突破した。
既に5度目となるキングウルフとの遭遇戦も、ライオネルの活躍と指揮官さんの巧みな手腕で見事に乗りきったのだった。
「でも、ブリスタニアに来るときは1回しか遭遇しなかったから、明らかにキングウルフの数が増えてるよね……」
事態はかなり深刻だと、わたしは改めて認識していた。
「だったら一秒でも早く、神龍さまの怒りを鎮めないとね!」
そして戦闘が一段落した後、わたしの乗る馬車の近くで、ライオネルと指揮官さんが馬に乗ったまま話を始めた。
ステキな男の人同士の会話に興味が無くもないわたしは、馬車の中からこっそりと聞き耳を立ててみた。
なになに……。
「ライオネル殿下、相変わらずの剣の冴えですな。我々が2人がかりでやっと相手ができるキングウルフを、たった1人で次々と倒してしまうのですから。“真紅の閃光”の異名は、伊達ではありませんな。たいへん感服いたしました」
「ありがとう。そういう君の指揮も実に素晴らしいね。さすが大国シェンロンで、師団長を務めていただけのことはある」
「お褒めにあずかかり光栄です。しかし今日選んだメンバーは皆、私が在籍していた当時に尽くしてくれた、気心の知れたメンバーでしてな。あうんの呼吸があると申しますか、意図がすぐ伝わるので指揮するのも楽なものなのですよ」
「そうは言っても、軍を除隊してからもうけっこう経つんだろう?」
ライオネルの質問に、
「今年でもう6年になりますか」
指揮官さんはしみじみとした声で答える。
「だって言うのに、いまだになお当時の部下からあつい信頼を受けている。どうだい、これが終わったらブリスタニア軍で働かないかい? 傭兵のまま燻らせておくのは色々と惜しい。いきなり師団長クラスは無理にしても、相応の地位で、迎え入れさせてもらうよ?」
おおっ、ライオネルがわたしの時みたいに勧誘した!
「なんともったいなきお言葉。ですがそう言った話も、まずはこのミッションを成功させてからですな。後のことは、その時にでも考えさせていただきたく」
わわっ、だけど王子さまに勧誘されたっていうのに、指揮官さんはあいまいに先延ばししちゃったよ!?
わたしなんかライオネルに提案された瞬間、二つ返事で飛びつくようにオッケーしたのに!?
なんていうか、人としての器が違う感じ!
「もちろんだとも。だけど良い返事が返ってくることを、期待しているよ?」
「殿下は見かけによらず、意外に押しが強いですなぁ」
「ははっ、優秀な人材を遊ばせておくほど、ブリスタニアは余裕のある国じゃないからね」
ライオネルはニコッと笑ってそう言うと、さらに言葉を続ける。
「ああ、もし傭兵団の部下のことを気にしているのなら、一緒に連れてきてもらってもかまわないよ。もちろん能力や素行面で、最低限の振るいにはかけさせてもらうけどね?」
「いやはや、そこまでお見通しでしたか。おみそれいたしました」
…………
……
はうー、なんだかオシャレでステキな会話だったねー。
胸の中がぽわーってなったよ。
ほんとステキ過ぎて、わたしには絶対できない会話っていうか?
わたしは、最終決戦に向けてたいへん英気を養わせてもらったのでした。
がんばるぞ、おー!
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