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第50話 バーバラ SIDE 4 ~シェンロン~(上)
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~神龍国家シェンロン~
「はぁっ!? クレアを連れてくるのに失敗したですって!? あんだけ大口叩いておいて、なに考えてんのよ、このグズ!」
ハリソンから、クレアの拉致に失敗したと聞かされたバーバラは、髪を振り乱しながら、張り裂けるような怒鳴り声をあげた。
手近にあった本を、ハリソンに向かってぶん投げる。
「お、俺だって失敗したくてしたわけじゃない! こっちの動きが読まれてたんだよ! あの剣技無双と名高いライオネル殿下が、すぐさま助けに入ったんだ!」
「言い訳はいいのよ! なにがなんでもやれって言ったでしょ! 国家反逆罪で死罪になりたいわけ!? 『神龍災害』の被害は、どんどん大きくなってんのよ!? この先どうすんのよ! 大臣たちも、もういい加減、私の力を疑いだしてるのよ!?」
「わかってる、なんとかしてみせる……!」
「クレアなしで、なにがどうなるってのよ! このバカ! 無能! アホ! グズ! 間抜け! トンマ!!」
バーバラは罵詈雑言を並べたてながら、プチ『神龍災害』のごとく怒り狂った。
しかし、怒り散らすバーバラの元に、更なる凶報がもたらされる。
「バーバラ様、大変です! ここ1か月続く『神龍災害』に業を煮やした民衆が、暴動をおこしました! 次々とその数を増やして、この王宮に押し寄せてきております!」
下級貴族が1人、血相を変えて部屋に飛び込んできたのだ!
「はぁっ!? そんなの私に関係ないでしょ! 軍隊でも近衛兵でも何でも使って、とっとと鎮圧しなさいよ!」
「そ、それが! シェンロン軍は今、度重なる『神龍災害』の対応で東西南北の各地に派遣されており、今の王都にはこれだけの数の暴徒を鎮圧するだけの十分な余剰戦力が、残っていないのです! しかも王都を守る軍の一部が離反し、暴徒に加担するありさまでして――」
「な、なんですって――!?」
軍人が裏切った、ですって!?
軍人っていうのは私たち王侯貴族に忠義を尽くし、時には命を賭けてでも守らなくてはならない存在だろうに。
だっていうのに、忠義を尽くすべき王侯貴族を見捨てて、よりにもよって暴徒に加担するとは、なんというハレンチな軍人どもだろうか!
バーバラは物の道理も知らない、低能で愚劣で知性の欠片もない愚鈍な軍人どもに、吐き気がしそうになった。
しかし事態がこうなってしまった以上、ぐだぐだ言っていても始まらない。
「お逃げ下さい、バーバラ様。暴徒どもは、バーバラ様がニセモノの『神龍の巫女』であると、だから『神龍災害』がおさまらないのだと言って、バーバラ様の御身を狙っております。もはやここも――王宮も安全ではありません!」
そう言っている間にも、バーバラの私室にまで、民衆たちの怒号が聞こえ始めた。
もう王宮の中にまで、暴徒たちに入りこまれているのだ!
「なんてこと! く――っ!」
バーバラは逃げた。
速攻で逃げた。
事態を教えてくれた下級貴族も、婚約者であるハリソンも、ぜんぶ見捨てて自分だけ逃げた。
「とりあえず上ね、上にいきましょう」
暴徒たちは下から来るんだから、上に逃げるのは当然だろう。
「どうにかして、隠れてやりすごさないと」
『神龍災害』に対応するため各地に派遣された軍の部隊が、事態を知ってすぐに各地から救援に戻ってくるはず。
だからそれまで隠れぬくんだ。
そしてバーバラは、逃げ場のない屋上に――綺麗な花が咲き誇る、シェンロン王宮の屋上庭園へとやってきた。
逃げ場のない屋上に、やってきてしまった――。
「はぁっ!? クレアを連れてくるのに失敗したですって!? あんだけ大口叩いておいて、なに考えてんのよ、このグズ!」
ハリソンから、クレアの拉致に失敗したと聞かされたバーバラは、髪を振り乱しながら、張り裂けるような怒鳴り声をあげた。
手近にあった本を、ハリソンに向かってぶん投げる。
「お、俺だって失敗したくてしたわけじゃない! こっちの動きが読まれてたんだよ! あの剣技無双と名高いライオネル殿下が、すぐさま助けに入ったんだ!」
「言い訳はいいのよ! なにがなんでもやれって言ったでしょ! 国家反逆罪で死罪になりたいわけ!? 『神龍災害』の被害は、どんどん大きくなってんのよ!? この先どうすんのよ! 大臣たちも、もういい加減、私の力を疑いだしてるのよ!?」
「わかってる、なんとかしてみせる……!」
「クレアなしで、なにがどうなるってのよ! このバカ! 無能! アホ! グズ! 間抜け! トンマ!!」
バーバラは罵詈雑言を並べたてながら、プチ『神龍災害』のごとく怒り狂った。
しかし、怒り散らすバーバラの元に、更なる凶報がもたらされる。
「バーバラ様、大変です! ここ1か月続く『神龍災害』に業を煮やした民衆が、暴動をおこしました! 次々とその数を増やして、この王宮に押し寄せてきております!」
下級貴族が1人、血相を変えて部屋に飛び込んできたのだ!
「はぁっ!? そんなの私に関係ないでしょ! 軍隊でも近衛兵でも何でも使って、とっとと鎮圧しなさいよ!」
「そ、それが! シェンロン軍は今、度重なる『神龍災害』の対応で東西南北の各地に派遣されており、今の王都にはこれだけの数の暴徒を鎮圧するだけの十分な余剰戦力が、残っていないのです! しかも王都を守る軍の一部が離反し、暴徒に加担するありさまでして――」
「な、なんですって――!?」
軍人が裏切った、ですって!?
軍人っていうのは私たち王侯貴族に忠義を尽くし、時には命を賭けてでも守らなくてはならない存在だろうに。
だっていうのに、忠義を尽くすべき王侯貴族を見捨てて、よりにもよって暴徒に加担するとは、なんというハレンチな軍人どもだろうか!
バーバラは物の道理も知らない、低能で愚劣で知性の欠片もない愚鈍な軍人どもに、吐き気がしそうになった。
しかし事態がこうなってしまった以上、ぐだぐだ言っていても始まらない。
「お逃げ下さい、バーバラ様。暴徒どもは、バーバラ様がニセモノの『神龍の巫女』であると、だから『神龍災害』がおさまらないのだと言って、バーバラ様の御身を狙っております。もはやここも――王宮も安全ではありません!」
そう言っている間にも、バーバラの私室にまで、民衆たちの怒号が聞こえ始めた。
もう王宮の中にまで、暴徒たちに入りこまれているのだ!
「なんてこと! く――っ!」
バーバラは逃げた。
速攻で逃げた。
事態を教えてくれた下級貴族も、婚約者であるハリソンも、ぜんぶ見捨てて自分だけ逃げた。
「とりあえず上ね、上にいきましょう」
暴徒たちは下から来るんだから、上に逃げるのは当然だろう。
「どうにかして、隠れてやりすごさないと」
『神龍災害』に対応するため各地に派遣された軍の部隊が、事態を知ってすぐに各地から救援に戻ってくるはず。
だからそれまで隠れぬくんだ。
そしてバーバラは、逃げ場のない屋上に――綺麗な花が咲き誇る、シェンロン王宮の屋上庭園へとやってきた。
逃げ場のない屋上に、やってきてしまった――。
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