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第41話 使者来訪(中)

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「ははっ、たわむれてなどはおらぬ。そこにいる我が息子、ブリスタニア王国第3王子ライオネル・クリムゾンレッド・ブリスタニアと、『水龍の巫女』聖女クレア殿は既に婚約をしておる」

「は、は、はい……?」
 追放ヤロウが、目を白黒させた。

「つまりだ。王族であるクレア殿を連れ戻そうとするそなたの行動は、我がブリスタニア王国への不当な内政干渉となるが、いかがか?」

「な、な――」
 追放ヤロウが完全に絶句した。

 わたしや王さま、そしてライオネルの顔を交互に見ながら、過呼吸気味にヒーヒーヒューヒューと、空気で喉を鳴らしている。

「クレアは紛れもなくボクの婚約者だ。大切なクレアを、勝手にシェンロン王国に連れてゆくなどと言う暴挙は、このボク、ライオネル・クリムゾンレッド・ブリスタニアが許しはしない」

 トドメのようにライオネルがそう言って、追放ヤロウはついに口を金魚のようにパクパクさせはじめた。

「そう言えば、たしかバーバラというのは、シェンロン王国の『神龍の巫女』だったね?」
「そ、それがなにか……」

「なら帰ってこう伝えることだ。クレアの名誉回復もせず、これまでの『神龍の巫女』としての正しい評価も行わず。それだけでなく手柄まで横取りし、クレアのことをまるで虫けらのようにあつかった。挙句の果てに追放したというのに、必要だと言ってこうやって一方的に呼び戻そうとする。そのような無法な振る舞いを、ブリスタニア王国は金輪際許しはしないとね」

「――っ!」

「ライオネルの今の言葉は、ブリスタニア王である余の言葉と受け取ってもらってかまわぬぞ」

 王さまが最後のダメ押しをする。

「ぐ――っ!」

 追放ヤロウが目を見開いたまま、完全に固まった。

「おやおや、どうしたんだい? 偉大な神龍国家シェンロンの使者というのは、他国の王の言葉に、返事も返すことができないのかな?」

 そこに容赦なく追い打ちをかけるライオネル。

「た、た、た、確かに承りました……一言一句たがわず、お伝えいたします……」

 追放ヤロウは、のどの奥からどうにか絞りだすようにそう言うと、すごすごと謁見えっけんの間を出ていった。

 ちいさく振り返って、すがるようにわたしを見た追放ヤロウ。
 だけど、謁見えっけんの間のドアは、無慈悲にも閉められたのだった。

 へへーんだ!
 ざまーみろ!

 わたしは突然訪れたざまぁ展開に、気分がスカッとしていた。

 それと同時に、わたしのことを守ってくれたブリスタニア王とライオネルに、すごくすごく感謝もしてたんだ。

「ありがとうございました、王さま」
 わたしはまずブリスタニア王に、感謝の言葉を述べた。

「なに。礼を言われるようなことではない。我が息子ライオネルの大切な想い人が、あのような愚物に好き放題言われる理由などないゆえな」

 王さまはそう言うと、してやったりという顔で笑った。

「ライオネルも、ありがとうございした。ライオネルがわたしの言いたいことを全部言ってくれて、すごくスカッとして、とっても嬉しかったです」

「ボクも父と一緒で、ずっと思っていたことを言ったまでさ。だけど、気になるな――」
 ライオネルが口元に手を当てて、考え込むような仕草を見せた。

「えっと、なにがでしょうか?」
 相変わらずよくわかってないわたしが聞き返すと、

「うん、バーバラが急に、クレアを呼び戻したいって使者を寄こしたことさ」
 ライオネルが優しく答えてくれる。
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