神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

文字の大きさ
上 下
27 / 64

第27話 ネックレス

しおりを挟む
「――とまぁ、そういうわけなんです」

 水龍さまの神通力を元に戻すためのミッションを、無事にクリアしたことを、わたしは朝一で水龍さまに報告した。

 水龍さまは神通力が戻ったのを分かってたから、だからわたしが説明する前から、上手くいったのは分かってたみたいだけどね。

 ライオネルとの関係が変わらなかったように、『水龍の巫女』の仕事も、今までと特には変わらない。

 優しい水龍さまはわたしに理不尽な要求をすることもないし、むしろ気をつかってくれたりもする。

 シェンロンで気難しい神龍さまにお仕えしていたときみたいに、まる1日ぶっつけで『奉納の舞』を踊ったりなんてことも、もちろん1回もない。

 おかげでわたしの仕事は快適そのもの――というか、もはや仕事というか年上の友だちか面倒見のいい先輩と、世間話をしてる感覚だった。

 それはそれで、ブリスタニアの皆さんに申し訳ない気がするんだけど。
 なにせ『水龍の巫女』としてのわたしのお給金は、皆さんから集めた税金から出てるわけだし。

『ねぇねぇクレア。神通力がもどったとか、そんなどうでもいいことより、もっとイケメン王子さまとのラブい話を聞かせてよ~』

 そして水龍さまは、わたしの恋バナにいたく興味があるらしく。

「どうでもいいことって……」
 わたしが苦笑すると、

『だってそれはもう終わったことだもん。無事に解決、万事オッケー。でもクレアがイケメン王子さまの婚約者になって、大変なのはこれからなわけでしょ?』

 水龍さまは、すごく親身な感じでそう言ってくれたんだ。
 
「た、たしかに……」

『例えばほら、貴族たちの血で血を洗う権力闘争に、クレアが巻き込まれちゃったりするんだよ! 高い塔の窓際に追い詰められたクレア! そんなクレアの大ピンチに、颯爽と助けに現れたイケメン王子さま! お前たち、ボクのクレアに手を出すな! ってね! きゃー!!』

 水龍さまはニャハー!とかヒャー!とか大きな声で、楽しそうにキャーキャー言っている。
 もはやハシが転がっても笑う、10代女子のノリだった。

「あはは、そういうのはあまり無さそうです。王さまをはじめ、王族の人たちはみんな仲がいい上に、皆さんそろって、貴族の方や国民からも人望があるみたいで」

 贅沢ぜいたくすることと、自分たちの派閥を大きくすることに明け暮れてたシェンロンの貴族たちとは、大違いだ。

 風通しがよくて、より良い国にしていくためにみんなが一致団結してる感じ。
 だから、すごく居心地がいいんだ。

『そうなんだー。でも王子さまの婚約者になったら、クレアはここにはあまり来れなくなるよねー。それはちょっと残念かも?』

「それこそまさかです。わたしは『水龍の巫女』ですから、水龍さまには毎日会いに来ますもん。当然ですよ」

『あはは、前にも言ったけど毎日はいいよ? クレアも大変だろうし。私、暇なときは寝てるから、そんなうるさくいうつもりはないしー』

「ですが先代の『水龍の巫女』がいなくなってから、水龍さまは何年もお一人で過ごされてました。きっとさみしかったと思うんです。だからわたしは毎日来て、水龍さまに楽しんでもらいたいなって思います」

『ううっ、クレアは本当にいい子だねぇ……うんうん、じゃあ無理のない程度にお願いするねー』

「お任せください!」

『うんうん。じゃあ、そんな偉いクレアには、これをあげるよ』

 水龍さまがそう言うと、わたしの手の中に、何か小さくて硬いものが出現した。

 見ると、

「ネックレスですか? 宝石がすごく綺麗です……って、もしかして、ダイヤモンド……!?」

 小さいけれどキラキラ透明に輝く――だけどうっすらと水色がかったようにも見える――それはとてもとても綺麗な宝石がついた、ネックレスだった。

『クレアの婚約祝いねー』
「こ、こんなすごいものいただけません!」

『いいからいいからー』
「で、ですが――」

 ただでさえ水龍さまには良くしてもらってるのに、こんなものまでもらってしまったら、もはや『水龍の巫女』じゃなく『水龍のヒモ』だよ……。

 あ、ヒモっていうのは、貴族でもないのに働かずに誰かに養ってもらう、特別な職業のことね。
 私も良くは知らないんだけど、世の中にはそういうのがあるんだって。
 不思議だよね。

『ちなみに! ダイヤの中には、わたしの力を入れておいたんだ。もしピンチになった時は使ってね。ブワーってすごいことが起こるから。ちなみに何が起こるかは、その時のお楽しみだよー』

「えええええっ!?」

 だってそんな、水龍さまの力が込められた宝石とか、下手したら国宝級じゃない!?
 王家に先祖代々受け継がれていっちゃうヤツだよ!?

『クレアはおどろく顔も可愛いねー。じゃあま、そういうことで。あ、拒否は認めませんので。これは水龍である私から『水龍の巫女』クレアへの、命令ですからー』

 水龍さまがいたずらっぽく笑いながら、そう言った。

 ここまで言われてしまったら、もはや拒否する方が失礼にあたるというものだ。

「水龍さま、ありがとうございます。肌身離さず身につけておきますので!」
 わたしは最大限の感謝の気持ちを込めて、お礼を言った。

『お礼なんていいって、いいって。おっと、もうこんな時間だね。楽しい時間ってすぐ過ぎちゃうんだよねー。私はいつものように、そろそろお昼寝するから。クレアも帰っていいよー』

「それではおいとまいたします、どうか良い夢を」

『おやすみー』

 こうして。
 わたしは水龍さまから、水龍さまの力が込められた国宝級のダイヤのネックレスを、受け取ったのだった。
しおりを挟む
感想 133

あなたにおすすめの小説

【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。 ――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの? 追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。 その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。 ※序盤1話が短めです(1000字弱) ※複数視点多めです。 ※小説家になろうにも掲載しています。 ※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

蛙の王女様―醜女が本当の愛を見つけるまで―

深石千尋
恋愛
 若い娘でありながら、老婆のような容姿を持つ娘——『シグルン』は、周囲に陰口を叩かれることもあったが、賢さを活かして人々に寄り添いながら、田舎で静かに暮らしていた。  その頃王都では、王太子の婚約を決める儀式が執り行われていた。『聖なる矢』を天に放ち、矢の刺さった屋敷の娘を正妃に決めるというものだ。王太子は運任せの婚約行事に辟易していたが、結局は従わざるを得なかった。  そして王太子の放った矢は、奇妙な容姿を持ったシグルンの家に突き刺さった。シグルンは選ばれし聖女として王都に招かれることになるが、王宮では歓迎されていないばかりか、王太子にすら会わせてもらえないようだ。こんな醜い顔では、王太子の正妃にはなれないということだろうか。  その後、シグルンは王宮で密かに過ごしていく内に、気になる話し相手と知り合った。お互い素性を明かさず、声だけの交流。その正体が王太子であることを知らないまま、また、王太子も聖女であることを知らないまま、二人は心惹かれ合っていった。  二人の愛の前に、シグルンの醜い顔の秘密と王宮に蠢(うごめ)く陰謀が立ちはだかる……!    童話『蛙の王子』やロシア昔話『蛙の王女』のオマージュ。  醜女が王太子に溺愛され、本当の愛を見つけるまでのファンタジーラブストーリー。 <注意事項> *初投稿作品のため、色々ゆるゆるです 「よし! 何でもバッチコーイ!」という心の広い方に読んでいただきたいですm(_ _)m ※旧ペンネーム・狸

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】

小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。 しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。 そして、リーリエルは戻って来た。 政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

処理中です...