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第26話 初夜。

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「わたしこれから、どうなっちゃうの――!?」

 ――――
 ―――
 ――
 ―

 どうにもなりませんでした、てへっ!


 婚約したその日の夜も、ライオネルとは特に何ごともなく、いつも通りに過ごしていた。

「クレア、今日は本当にお疲れさま。君のおかげでブリスタニア王国は救われた。疲れてるだろう? 今日は少し早く寝たほうがいいよ。そうだ、寝る前に足のマッサージをしてあげるよ」

 ライオネルはそう言うと、ベッドで横になったわたしの、太ももやふくらはぎを丁寧にマッサージしてくれたんだ。

「はぅー……気持ちいいです……ライオネルは王子さまなのに、マッサージも上手なんですね……へぅー……はふぅ……」

 ライオネルの絶妙なフィンガーテクニックの、天にも昇るような気持ちよさの前に、わたしの口からは、はしたない声が漏れ出でつづける。

「ははっ、子供の頃はよく、父にマッサージをしてあげてたからね。慣れたもんなのさ」

 言葉どおり、ライオネルは慣れた手つきで、わたしの足を丁寧にさすって血行をよくしてくたり、疲労回復のツボみたいなところをぐりぐり押したりしてくれる。

 そのどれもこれもが全部、超気持ちいいんだもん……。

 あっ、そこ、そこそこ!

 足の親指と、人さし指の根元のちょうど間のとこ!

 へうっ!? へぅへうっ!!??
 あひぃっ、イタ気持ちよくて癖になりそう……!?

 とまぁ、ライオネルにそこかしこをマッサージしてもらった結果、どうなったかと言うと――。

「すやー……すやすや……」

 わたしは見事に寝落ちしてしまった。

 最初はちゃんと寝ないようにしようって思ったんだけど、無理だった。
 押し寄せる快楽の波に、それはもうものの見事に寝落ちしちゃったのだ。

「おやおや、寝ちゃったか。ふふっ、今日はすごく頑張ったもんね。じゃ、ボクも疲れたし寝るとするか。おやすみクレア、願わくばいい夢を――」

 うつ伏せでマッサージされたまま寝ちゃって、だらしない顔で転がってたわたしを、ライオネルが優しくあお向けにしてくれたのは、なんとなく覚えてる……ような気がしなくもないような?

 その時におでこにやさしくキスされた気も、するような、しないような……的な?

 とまぁ、そういうわけでして。

 わたしはマッサージの途中で気持ちよくなりすぎて、そこに山登りの疲れも相まってはしたなく寝落ちしてしまい――。


 そして、新しい朝が来た!

 ぐっすり眠れて、とてもとても気持ちのいい朝だった。

 いつものように、上半身裸のライオネルの引き締まった身体に抱かれながら、わたしは、

「ライオネルと婚約して初めての夜が、マッサージされて気持ちよくなって寝落ちとか……それってどうなの……?」

 我ながらなんてアホな女の子なのかと思ったものだった、うん。

 事と次第によっては、大人の関係になっちゃったかもしれなかったのにね。

 つまり。

 今までと同じように、一緒の部屋で過ごして。
 今までどおりに一緒に寝て。
 ベッドでぎゅってされるだけの、ここに来てからまったく変わらない日常だったわけなんだ。

「うーん……これってもしかしなくても、元々の関係がおかしかったのかな?」
 今さらだけどね。

 あ、でもでも、いつも優しいライオネルだけど、昨日はさらにその3倍増しで優しかったかも?

 あと、おでこにキスされちゃった、よね?

 えへへっ……えへへへっ……。

 わたしが、だらしなくにやけていると、

「おはようクレア、よく眠れたみたいだね」

 目覚めたライオネルが、優しく笑いながら言った。

「おはようございますライオネル。昨日は途中で寝ちゃってすみませんでした」

 わたしはあまりのアホっぷりを、まず謝ったんだけど、

「それはもう気持ちよさそうに眠るクレアの顔を見れたから、ボクとしては役得だったけどね」

 ライオネルってば、ウインクしながらそんなこと言うんだもん。

「ぁ……ぅ……」

 そんなの、わたしが照れて何も言えなくなっちゃっても、仕方ないよねっ!?
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