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第25話 聖女、イケメン王子さまと婚約してしまう。

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「覚えてる? クレアのことを、何度かシェンロンの王宮で見かけたことがあるって、言ったよね?」

「はい、初めて会ったときに、何度か見かけたことがあると言われました」

 キングウルフの群れから助けてもらったときだ。
 だからライオネルは、わたしの顔と名前や、『神龍の巫女』をやってたことも知ってたんだよね?

「シェンロンの王宮で見かける君は、いつも忙しそうに働いていた。サポート役と聞いていたのにね。もう1人の『神龍の巫女』――たしかブラスター公爵の一人娘でバーバラと言ったかな?――よりも一生懸命に動きまわる姿に、ボクは目を奪われていたんだ」

「そうだったんですか――」

「キングウルフを追い払ったあとに、追放された理由とかいろんなことを話してくれたよね? だからあの話を聞いて、ボクはすぐにストンと納得できたんだ。ああ、今までのあれやこれは全部、そう言うことだったのか、ってね」

「わたしのことをよく知ってたから、だからあんなにすぐに、わたしの話を信じてくれたんですね?」

 そっかそっか、そういうことだったんだね。
 今さらながらに、あの時のことを納得したわたしだった。

 ……察しが悪いとも言う(*'ω'*)

 でも、わたしの知らないところで、わたしをちゃんと評価する人がいてくれたんだ。
 うれしいな……。

「なんどか話しかけようかと思ったんだけど、クレアはいつも忙しそうで、ぜんぜんチャンスがなくてね。ボクも向こうではお客さまだから、あまり勝手なことはできないし。クレアはクレアで仕事熱心すぎて、ボクには全然気づいてくれなかったし」

「それはその、本当にすみませんでした」

 まさか隣国のイケメン王子さまが話しかけようとしてくれてたのを、気づかずにガンスルーしてたなんて……。

「あはは。クレアが謝る必要はないさ。だってボクは今、クレアが仕事熱心だったことを、褒めてるんだから」

「そう言っていただけると、助かります――えっと、幸甚こうじんに存じます」

 今さらながらに貴族になったことを思いだしたわたしが、がんばって貴族言葉をこねくりだすと、

「普通にしゃべってくれて大丈夫だよ。ボクもその方が嬉しいし」
 ライオネルはいつもの優しい笑顔で、そう言ってくれたんだ。

「ではお言葉に甘えさせてもらいます」

「とまぁそういうわけでね。ボクはクレアのことを、ずっと知っていたってわけさ」

「えっと、そうみたい、ですね」

「その上でもう一回言うね。クレア、ボクと結婚してほしい。ボクはまだ、君のお眼鏡にかなってないかもしれないけれど。でもきっと、君に相応しい男になってみせるから」

 そう、ライオネルに真剣な表情で言われたわたしは、

「わたしでよければ、喜んでお受けします――!」

 そう答えたんだ。

 だってもう、ここまで言われちゃったら、あとはもう自分の気持ちに正直になるだけだよね――!

 だってライオネルは、王子さまで、イケメンで、イケボで、サラサラの金髪で、透き通るような蒼い瞳で、高身長で、すらっとしてて、立ち居ふるまいが優雅で、言葉遣いもジェントルメンで、すごく優しくて、笑顔がとってもチャーミングで、リリーナさんみたいな綺麗なお姉さんがいて、夜は優しく抱きしめてくれて、わたしのことをずっとずっと見てくれていた、ステキなステキなステキ過ぎる男の人なんだもん!

 大好きだもん!

 こうして。

 わたしクレアは、いやがらせで『神龍の巫女』をリストラされたんだけど。

 ブリスタニア王国第3皇子ライオネルと偶然、出会ったおかげで、すぐに『水龍の巫女』として、隣国ブリスタニアで再就職することになり。

 そして、あれよあれよという間に貴族になって、ライオネルの婚約者になって、そして王族の一員になってしまったのだった!


 わたしの新しい人生が、またまた始まる――!

 っていうか王子さまの婚約者だよ!?

「ふえぇぇっ!? わたしこれから、どうなっちゃうの――!?」
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