3 / 64
第3話 バーバラ SIDE
しおりを挟む
「あはははははっ! やったわ! ついに、あのいけ好かない庶民を、追い出してやったわ!」
肩を下ろしてトボトボ王宮を出ていくクレアを、屋上庭園のテラスから見下ろしながら、バーバラはにまにまと、底意地の悪い笑みを浮かべた。
「まったく、庶民のブンザイで『神龍の巫女』になるなんて100年早いのよ」
龍の声を聞くことができる巫女の力は、100万人に1人しかいないレアスキルだ。
そして神龍はドラゴンの中でも最高位とされており、『神龍の巫女』はシェンロン国内だけでなく、他国からも敬意を表される高い地位、選ばれた存在なのだった。
そんな高貴な地位に、こともあろうに孤児院出身の貧乏庶民が選ばれたのだ。
「ありえないでしょ! 常識的に考えて!」
『神龍の巫女』としてチヤホヤされるあの庶民を見て、私はすぐに、それを奪ってやろうと考えた。
まずは私も『神龍の巫女』になった。
『神龍の巫女』になること自体は、4大貴族の父、ブラスター公爵の圧倒的権力を使えば、いとも簡単だった。
そして私は、あいつの「結果」をすべて、私のものにしてやったのだ。
最初の頃はあいつも、自分が全部やっているんだって必死に説明してたけど、私がそれを全否定してやったので、あいつの言うことなんて誰も聞き入れはしなかった。
すごくすごくいい気味だったわ。
でもあの庶民はめげなかった。
ま、よく考えたらそれも当然だよね。
だって『神龍の巫女』には、庶民では考えられないほどの高い給金が出るんだもん。
私たちのような優雅で尊い貴族とは違って、泥くさい貧乏人たちはすぐに金になびき、金を欲しがる。
まったくこれだから貧乏庶民はイヤなのだ。
金、カネ、かね。
本当に汚らわしい、金の亡者どもだ。
だから今回、国の財政難をちょうどいい理由にして、金に汚い貧乏庶民を上手いこと追い出してやったというわけだ。
「ひひっ、ざまぁみろ」
我ながら、実にエレガントに事を運んだと思うね。
ま、あの庶民はアホだから、論破するなんて簡単だっただけど。
だいたい偉そうに『神龍の巫女』とか言ってるけど、いったい何の仕事してるのよ?
もう100年以上も『神龍災害』は起こってないのよ?
起こらないことを、怖がる必要なんてないじゃない?
「ま、万が一なにかあったら、あいつがやってたみたいに、適当に『奉納の舞』を踊ってみせればいいんでしょう?」
それくらい、龍の声が聞けなくたってできるんだから。
なにが100万人に1人の、龍の声を聞けるレアスキルよ。
「そんなモノをいまだにありがたがってる、頭の固い老害ジジイどもには、ほんと辟易するわ……」
ま、今日のところは、あの庶民を追い出してせいせいしたってことで、良しとしましょうか。
ねぇクレア?
私はね、自分より目立つ女が、大嫌いなの。
上級貴族や王族ならまだしも、孤児院出身の庶民が私より目立つとか、絶対に許せないから。
「聖女とか呼ばれて調子に乗ったバツよ。どこぞでみじめに野垂れ死ぬがいいわ! あはははははははっ――!」
私は最っ高にステキな気分で、テラスを後にした。
もちろん『祭壇の間』に行ったりなんかはしない。
「だって今日は、お気に入りのネイルサロンに行かなくちゃいけないんだもの」
今日は丸一日、貸し切りにしてあるんだから、早く行かないともったいないもんね。
「まっ、どうせ今日も、何も起こらないんでしょ?」
肩を下ろしてトボトボ王宮を出ていくクレアを、屋上庭園のテラスから見下ろしながら、バーバラはにまにまと、底意地の悪い笑みを浮かべた。
「まったく、庶民のブンザイで『神龍の巫女』になるなんて100年早いのよ」
龍の声を聞くことができる巫女の力は、100万人に1人しかいないレアスキルだ。
そして神龍はドラゴンの中でも最高位とされており、『神龍の巫女』はシェンロン国内だけでなく、他国からも敬意を表される高い地位、選ばれた存在なのだった。
そんな高貴な地位に、こともあろうに孤児院出身の貧乏庶民が選ばれたのだ。
「ありえないでしょ! 常識的に考えて!」
『神龍の巫女』としてチヤホヤされるあの庶民を見て、私はすぐに、それを奪ってやろうと考えた。
まずは私も『神龍の巫女』になった。
『神龍の巫女』になること自体は、4大貴族の父、ブラスター公爵の圧倒的権力を使えば、いとも簡単だった。
そして私は、あいつの「結果」をすべて、私のものにしてやったのだ。
最初の頃はあいつも、自分が全部やっているんだって必死に説明してたけど、私がそれを全否定してやったので、あいつの言うことなんて誰も聞き入れはしなかった。
すごくすごくいい気味だったわ。
でもあの庶民はめげなかった。
ま、よく考えたらそれも当然だよね。
だって『神龍の巫女』には、庶民では考えられないほどの高い給金が出るんだもん。
私たちのような優雅で尊い貴族とは違って、泥くさい貧乏人たちはすぐに金になびき、金を欲しがる。
まったくこれだから貧乏庶民はイヤなのだ。
金、カネ、かね。
本当に汚らわしい、金の亡者どもだ。
だから今回、国の財政難をちょうどいい理由にして、金に汚い貧乏庶民を上手いこと追い出してやったというわけだ。
「ひひっ、ざまぁみろ」
我ながら、実にエレガントに事を運んだと思うね。
ま、あの庶民はアホだから、論破するなんて簡単だっただけど。
だいたい偉そうに『神龍の巫女』とか言ってるけど、いったい何の仕事してるのよ?
もう100年以上も『神龍災害』は起こってないのよ?
起こらないことを、怖がる必要なんてないじゃない?
「ま、万が一なにかあったら、あいつがやってたみたいに、適当に『奉納の舞』を踊ってみせればいいんでしょう?」
それくらい、龍の声が聞けなくたってできるんだから。
なにが100万人に1人の、龍の声を聞けるレアスキルよ。
「そんなモノをいまだにありがたがってる、頭の固い老害ジジイどもには、ほんと辟易するわ……」
ま、今日のところは、あの庶民を追い出してせいせいしたってことで、良しとしましょうか。
ねぇクレア?
私はね、自分より目立つ女が、大嫌いなの。
上級貴族や王族ならまだしも、孤児院出身の庶民が私より目立つとか、絶対に許せないから。
「聖女とか呼ばれて調子に乗ったバツよ。どこぞでみじめに野垂れ死ぬがいいわ! あはははははははっ――!」
私は最っ高にステキな気分で、テラスを後にした。
もちろん『祭壇の間』に行ったりなんかはしない。
「だって今日は、お気に入りのネイルサロンに行かなくちゃいけないんだもの」
今日は丸一日、貸し切りにしてあるんだから、早く行かないともったいないもんね。
「まっ、どうせ今日も、何も起こらないんでしょ?」
12
お気に入りに追加
3,318
あなたにおすすめの小説
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
黎
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!
蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。
――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの?
追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。
その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。
※序盤1話が短めです(1000字弱)
※複数視点多めです。
※小説家になろうにも掲載しています。
※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。

姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】
小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。
しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。
そして、リーリエルは戻って来た。
政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

【完結】無能聖女と呼ばれ婚約破棄された私ですが砂漠の国で溺愛されました
よどら文鳥
恋愛
エウレス皇国のラファエル皇太子から突然婚約破棄を告げられた。
どうやら魔道士のマーヤと婚約をしたいそうだ。
この国では王族も貴族も皆、私=リリアの聖女としての力を信用していない。
元々砂漠だったエウレス皇国全域に水の加護を与えて人が住める場所を作ってきたのだが、誰も信じてくれない。
だからこそ、私のことは不要だと思っているらしく、隣の砂漠の国カサラス王国へ追放される。
なんでも、カサラス王国のカルム王子が国の三分の一もの財宝と引き換えに迎え入れたいと打診があったそうだ。
国家の持つ財宝の三分の一も失えば国は確実に傾く。
カルム王子は何故そこまでして私を迎え入れようとしてくれているのだろうか。
カサラス王国へ行ってからは私の人生が劇的に変化していったのである。
だが、まだ砂漠の国で水など殆どない。
私は出会った人たちや国のためにも、なんとしてでもこの国に水の加護を与えていき住み良い国に変えていきたいと誓った。
ちなみに、国を去ったエウレス皇国には距離が離れているので、水の加護はもう反映されないけれど大丈夫なのだろうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる