神龍の巫女 ~聖女としてがんばってた私が突然、追放されました~ 嫌がらせでリストラ → でも隣国でステキな王子様と出会ったんだ

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

文字の大きさ
上 下
3 / 64

第3話 バーバラ SIDE

しおりを挟む
「あはははははっ! やったわ! ついに、あのいけ好かない庶民を、追い出してやったわ!」

 肩を下ろしてトボトボ王宮を出ていくクレアを、屋上庭園のテラスから見下ろしながら、バーバラはにまにまと、底意地の悪い笑みを浮かべた。

「まったく、庶民のブンザイで『神龍の巫女』になるなんて100年早いのよ」

 龍の声を聞くことができる巫女の力は、100万人に1人しかいないレアスキルだ。

 そして神龍はドラゴンの中でも最高位とされており、『神龍の巫女』はシェンロン国内だけでなく、他国からも敬意を表される高い地位、選ばれた存在なのだった。

 そんな高貴な地位に、こともあろうに孤児院出身の貧乏庶民が選ばれたのだ。

「ありえないでしょ! 常識的に考えて!」

 『神龍の巫女』としてチヤホヤされるあの庶民を見て、私はすぐに、それを奪ってやろうと考えた。

 まずは私も『神龍の巫女』になった。
 『神龍の巫女』になること自体は、4大貴族の父、ブラスター公爵の圧倒的権力を使えば、いとも簡単だった。

 そして私は、あいつの「結果」をすべて、私のものにしてやったのだ。

 最初の頃はあいつも、自分が全部やっているんだって必死に説明してたけど、私がそれを全否定してやったので、あいつの言うことなんて誰も聞き入れはしなかった。

 すごくすごくいい気味だったわ。

 でもあの庶民はめげなかった。

 ま、よく考えたらそれも当然だよね。

 だって『神龍の巫女』には、庶民では考えられないほどの高い給金が出るんだもん。

 私たちのような優雅で尊い貴族とは違って、泥くさい貧乏人たちはすぐに金になびき、金を欲しがる。

 まったくこれだから貧乏庶民はイヤなのだ。

 金、カネ、かね。

 本当に汚らわしい、金の亡者どもだ。

 だから今回、国の財政難をちょうどいい理由にして、金に汚い貧乏庶民を上手いこと追い出してやったというわけだ。

「ひひっ、ざまぁみろ」

 我ながら、実にエレガントに事を運んだと思うね。
 ま、あの庶民はアホだから、論破するなんて簡単だっただけど。

 だいたい偉そうに『神龍の巫女』とか言ってるけど、いったい何の仕事してるのよ?

 もう100年以上も『神龍災害』は起こってないのよ?

 起こらないことを、怖がる必要なんてないじゃない?

「ま、万が一なにかあったら、あいつがやってたみたいに、適当に『奉納の舞』を踊ってみせればいいんでしょう?」

 それくらい、龍の声が聞けなくたってできるんだから。

 なにが100万人に1人の、龍の声を聞けるレアスキルよ。

「そんなモノをいまだにありがたがってる、頭の固い老害ジジイどもには、ほんと辟易へきえきするわ……」

 ま、今日のところは、あの庶民を追い出してせいせいしたってことで、良しとしましょうか。

 ねぇクレア?
 私はね、自分より目立つ女が、大嫌いなの。

 上級貴族や王族ならまだしも、孤児院出身の庶民が私より目立つとか、絶対に許せないから。

「聖女とか呼ばれて調子に乗ったバツよ。どこぞでみじめに野垂れ死ぬがいいわ! あはははははははっ――!」

 私は最っ高にステキな気分で、テラスを後にした。

 もちろん『祭壇さいだんの間』に行ったりなんかはしない。

「だって今日は、お気に入りのネイルサロンに行かなくちゃいけないんだもの」

 今日は丸一日、貸し切りにしてあるんだから、早く行かないともったいないもんね。

「まっ、どうせ今日も、何も起こらないんでしょ?」
しおりを挟む
感想 133

あなたにおすすめの小説

【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

蜜柑
ファンタジー
レイラは生まれた時から強力な魔力を持っていたため、キアーラ王国の大神殿で大司教に聖女として育てられ、毎日祈りを捧げてきた。大司教は国政を乗っ取ろうと王太子とレイラの婚約を決めたが、王子は身元不明のレイラとは結婚できないと婚約破棄し、彼女を国外追放してしまう。 ――え、もうお肉も食べていいの? 白じゃない服着てもいいの? 追放される道中、偶然出会った冒険者――剣士ステファンと狼男のライガに同行することになったレイラは、冒険者ギルドに登録し、冒険者になる。もともと神殿での不自由な生活に飽き飽きしていたレイラは美味しいものを食べたり、可愛い服を着たり、冒険者として仕事をしたりと、外での自由な生活を楽しむ。 その一方、魔物が出るようになったキアーラでは大司教がレイラの回収を画策し、レイラの出自をめぐる真実がだんだんと明らかになる。 ※序盤1話が短めです(1000字弱) ※複数視点多めです。 ※小説家になろうにも掲載しています。 ※表紙イラストはレイラを月塚彩様に描いてもらいました。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

蛙の王女様―醜女が本当の愛を見つけるまで―

深石千尋
恋愛
 若い娘でありながら、老婆のような容姿を持つ娘——『シグルン』は、周囲に陰口を叩かれることもあったが、賢さを活かして人々に寄り添いながら、田舎で静かに暮らしていた。  その頃王都では、王太子の婚約を決める儀式が執り行われていた。『聖なる矢』を天に放ち、矢の刺さった屋敷の娘を正妃に決めるというものだ。王太子は運任せの婚約行事に辟易していたが、結局は従わざるを得なかった。  そして王太子の放った矢は、奇妙な容姿を持ったシグルンの家に突き刺さった。シグルンは選ばれし聖女として王都に招かれることになるが、王宮では歓迎されていないばかりか、王太子にすら会わせてもらえないようだ。こんな醜い顔では、王太子の正妃にはなれないということだろうか。  その後、シグルンは王宮で密かに過ごしていく内に、気になる話し相手と知り合った。お互い素性を明かさず、声だけの交流。その正体が王太子であることを知らないまま、また、王太子も聖女であることを知らないまま、二人は心惹かれ合っていった。  二人の愛の前に、シグルンの醜い顔の秘密と王宮に蠢(うごめ)く陰謀が立ちはだかる……!    童話『蛙の王子』やロシア昔話『蛙の王女』のオマージュ。  醜女が王太子に溺愛され、本当の愛を見つけるまでのファンタジーラブストーリー。 <注意事項> *初投稿作品のため、色々ゆるゆるです 「よし! 何でもバッチコーイ!」という心の広い方に読んでいただきたいですm(_ _)m ※旧ペンネーム・狸

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

処理中です...