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アフターストーリー
第62話 ~エピローグ~ 折り紙
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「はい、完成よ。みんな、なんだか分かるかしら?」
わたしが折り紙で作った鶴を園児たちに見せてあげると、
「鳥さん!」
「とりー!」
「これは鶴って言うんだよー」
「ツルー!」
「セージョさますごーい!」
「じょーず!」
「あたしも作りたい」
「あたしもー」
「ぼくもー」
園児たちから次々と歓声が上がった。
「じゃあ作り方を教えるわね。さっき配った紙を、まずはこうやって真ん中で三角に山折りして……」
わたしはそのまま子供たちに鶴の教え方を実演しながら伝授する。
「できたー!」
「ツルできたー!」
「うんうん、みんな上手ね」
とまぁそんな風に折り紙を子供たちに教えているわたしが今どこにいるかというと、ジェイクが保育園の視察に行くというので一緒についてきていたのだった。
なにぶんすることがなくて暇なのよね。
それにわたしってば一応エルフィーナを救った救国の聖女様なので、ジェイクについていくとみんなとても喜んでくれるのだ。
そして今は偉い人とお話し中のジェイクとは別れて、園児たちのところにやってきたというわけだった。
「それにしても何が役に立つか分からないものねぇ」
ヴァルス禍が収束して以降、完膚なきまでに無職になってしまったわたしは余りにすることがなさ過ぎて、王宮で使い終わった不要紙を貰っては折り紙を作って遊んでいたんだけれど。
それがまさか、こんなところで役に立つなんてね。
「聖女さま、他にはないのー?」
「もっと見たいー」
わたしが人生に起こる不思議な縁のようなものを感じていると、鶴を折り終えた園児たちが可愛くおねだりをしてきた。
「あるわよ? ふふふ、じゃあ今からわたしのとっておきを見せてあげるわね」
ズバリその言葉を待っていたわたしはどや顔でそう答えると、折り紙に熱中するあまりついには自分で考案してしまった『羽を広げたクジャク』を折って見せてあげた。
「クジャクだ! きれー!」
「聖女さま、すごーい!」
「ふふん、そうでしょうともよ」
自分で言うのもなんだけれど、この『羽を広げたクジャク』はわたしの考案した中でも一番の自信作、ものすごい完成度だからね。
お子たちよ、折り紙マイスターのわたしを崇め奉りなさい!
わたしがお子たちの称賛のまなざしを一身に浴びて気持ちよくなっていると、そこに一通り視察やら話し合いやらを終えたジェイクがやってきた。
アンナも一緒にいる。
「ミレイユお待たせ。へぇ、折り紙をやってるのか、懐かしいな。俺も小さいころはよく作ったもんだ」
折り紙を見て子供のように目を輝かせたジェイク。
「せっかくだしジェイクもやってみたら?」
「おっ、いいな。ちなみに俺は折り紙がかなり得意だったんだぞ?」
「へぇ、それは楽しみね」
わたしはひとかどの折り紙マイスターとして、必死に背伸びする弟子を悠然と見守る師匠的な気持ちでそう言った。
「あと意外にミレイユって子供の人気者なんだな」
そしてジェイクが何気なく言った言葉に、しかしわたしは耳ざとく反応した。
「ちょっとジェイク、意外ってどういう意味かしら?」
「え? いやあの、今のはつい口が滑ったというか……」
「へぇ、つまりジェイクの中のわたしは子供に人気が無いわけね?」
「ほ、ほら、ミレイユはスパルタ気質だろ? だからどうしても子供に怖がられるんじゃないかなって思ったというか……」
「それなら大丈夫よ。わたしは厳しく躾けないといけない相手にしかスパルタしないから。例えばぽんこつ王子様みたいにね」
「そ、そうか……まぁそれは良いじゃないか! ほら、子供たちも手持無沙汰で見てるし、みんなで折り紙で遊ぼうぜ?」
言うが早いかジェイクは折り紙を手に取ると、手慣れた感じで折り始めた。
そしてもの凄い「芸術作品」を次々と生み出していったのだ――!
わたしが折り紙で作った鶴を園児たちに見せてあげると、
「鳥さん!」
「とりー!」
「これは鶴って言うんだよー」
「ツルー!」
「セージョさますごーい!」
「じょーず!」
「あたしも作りたい」
「あたしもー」
「ぼくもー」
園児たちから次々と歓声が上がった。
「じゃあ作り方を教えるわね。さっき配った紙を、まずはこうやって真ん中で三角に山折りして……」
わたしはそのまま子供たちに鶴の教え方を実演しながら伝授する。
「できたー!」
「ツルできたー!」
「うんうん、みんな上手ね」
とまぁそんな風に折り紙を子供たちに教えているわたしが今どこにいるかというと、ジェイクが保育園の視察に行くというので一緒についてきていたのだった。
なにぶんすることがなくて暇なのよね。
それにわたしってば一応エルフィーナを救った救国の聖女様なので、ジェイクについていくとみんなとても喜んでくれるのだ。
そして今は偉い人とお話し中のジェイクとは別れて、園児たちのところにやってきたというわけだった。
「それにしても何が役に立つか分からないものねぇ」
ヴァルス禍が収束して以降、完膚なきまでに無職になってしまったわたしは余りにすることがなさ過ぎて、王宮で使い終わった不要紙を貰っては折り紙を作って遊んでいたんだけれど。
それがまさか、こんなところで役に立つなんてね。
「聖女さま、他にはないのー?」
「もっと見たいー」
わたしが人生に起こる不思議な縁のようなものを感じていると、鶴を折り終えた園児たちが可愛くおねだりをしてきた。
「あるわよ? ふふふ、じゃあ今からわたしのとっておきを見せてあげるわね」
ズバリその言葉を待っていたわたしはどや顔でそう答えると、折り紙に熱中するあまりついには自分で考案してしまった『羽を広げたクジャク』を折って見せてあげた。
「クジャクだ! きれー!」
「聖女さま、すごーい!」
「ふふん、そうでしょうともよ」
自分で言うのもなんだけれど、この『羽を広げたクジャク』はわたしの考案した中でも一番の自信作、ものすごい完成度だからね。
お子たちよ、折り紙マイスターのわたしを崇め奉りなさい!
わたしがお子たちの称賛のまなざしを一身に浴びて気持ちよくなっていると、そこに一通り視察やら話し合いやらを終えたジェイクがやってきた。
アンナも一緒にいる。
「ミレイユお待たせ。へぇ、折り紙をやってるのか、懐かしいな。俺も小さいころはよく作ったもんだ」
折り紙を見て子供のように目を輝かせたジェイク。
「せっかくだしジェイクもやってみたら?」
「おっ、いいな。ちなみに俺は折り紙がかなり得意だったんだぞ?」
「へぇ、それは楽しみね」
わたしはひとかどの折り紙マイスターとして、必死に背伸びする弟子を悠然と見守る師匠的な気持ちでそう言った。
「あと意外にミレイユって子供の人気者なんだな」
そしてジェイクが何気なく言った言葉に、しかしわたしは耳ざとく反応した。
「ちょっとジェイク、意外ってどういう意味かしら?」
「え? いやあの、今のはつい口が滑ったというか……」
「へぇ、つまりジェイクの中のわたしは子供に人気が無いわけね?」
「ほ、ほら、ミレイユはスパルタ気質だろ? だからどうしても子供に怖がられるんじゃないかなって思ったというか……」
「それなら大丈夫よ。わたしは厳しく躾けないといけない相手にしかスパルタしないから。例えばぽんこつ王子様みたいにね」
「そ、そうか……まぁそれは良いじゃないか! ほら、子供たちも手持無沙汰で見てるし、みんなで折り紙で遊ぼうぜ?」
言うが早いかジェイクは折り紙を手に取ると、手慣れた感じで折り始めた。
そしてもの凄い「芸術作品」を次々と生み出していったのだ――!
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