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最終章 聖女凱旋
第53話 お昼寝
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「ミレイユ様、ミレイユ様。お昼寝中に申し訳ありません」
「はふ……? ん? あ、うん……起きた、起きたわ。おはようアンナ……どうしたの?」
初夏の乾いたさわやかな風と、お昼ごはんの後の満腹感。
2つの完璧すぎるコラボレーションからくる睡魔に襲われ、イスに座ったままうとうと居眠りをしてしまっていたわたしは、アンナの声でパチリと目を覚ました。
「実はセラフィム王国から使者が来ておりまして」
アンナからそう言われたわたしは、
「ええっ……」
露骨に嫌そうな顔をしてしまった。
「ミレイユ様にお会いしたいとのことです。なんでもセラフィム王より全権を委任された、特命大使だそうですよ」
「ふぅん……。でもあれ? エルフィーナ王国には『迷いの森』があるでしょ? 人間なのによく入って来れたわね?」
「害意や敵意がない人間ならば、エルフの案内さえあれば入ってこれますから。ミレイユ様がわたしたちと来たみたいに」
「そう言えばそうだっけ……? まぁいいや。でもわたし、セラフィム王国にいい思い出って、あんまりないのよね。今のほうがはるかに幸せだし、なんか面倒ごとになりそうだから会いたくないなぁ……」
セラフィム王国と聞いてまず思い浮かんできたのが、ヴェロニカ王女の顔だった。
わたしが追放される時に見せた、あの笑いを必死にこらえるような表情。
くっ!
ああもう!
思いだすだけでムカついてくるわ、あのドグサレ王女め……!
「ではミレイユ様は本日は調子が優れず、療養中のため会えないと伝えておきますね」
「うん、ごめんだけどそれで頼むわね。ああそうだ。ちなみに大使は誰が来てるの? まさかアンドレアスじゃないでしょうね?」
もしあいつが来たんなら、絶対に会ってやらないんだから。
全裸で土下座したって、絶対の絶対に会ってやらないんだからね!
「えっと、確か全権大使の方は、デルマイユ侯爵とおっしゃられておりました」
だけどアンナの口からは意外な名前が告げられて――。
「えっ! 先生が来てるの!? うそ!? ねぇアンナ、そのデルマイユ侯爵って、白髪の60才前くらいのお爺さんだった?」
「そうですね、そのような年齢に見受けられました」
「じゃあやっぱり先生だわ! 信じられない!」
「先生ですか?」
アンナがこてんと可愛く小首をかしげた。
「ああうん、ええっと。前にちらっと話したことがあったかと思うんだけど、デルマイユ侯爵はわたしが聖女になってすぐに、王宮で必要なイロハを叩き込んでくれた人なのよ。ものすごい恩人なの」
「あ、たしか鬼のように怖い人だと言っておられたような……」
「まぁその当時はね。鬼のようって言うか、鬼そのものだったわ」
「そ、それは大変でしたね」
「けど、そのおかげでわたしは貴族たちから、マナーも教養もない庶民上がりって馬鹿にされずに済んだのよ。そういうわけで大恩ある人だから、とりあえず今からすぐに会うわ。支度するから手伝ってくれる?」
「かしこまりました」
わたしは髪やらメイクやらをアンナにきっちりセットしてもらってから、先生――デルマイユ侯爵がジェイクたちと話しているという会議室へと受かった。
「はふ……? ん? あ、うん……起きた、起きたわ。おはようアンナ……どうしたの?」
初夏の乾いたさわやかな風と、お昼ごはんの後の満腹感。
2つの完璧すぎるコラボレーションからくる睡魔に襲われ、イスに座ったままうとうと居眠りをしてしまっていたわたしは、アンナの声でパチリと目を覚ました。
「実はセラフィム王国から使者が来ておりまして」
アンナからそう言われたわたしは、
「ええっ……」
露骨に嫌そうな顔をしてしまった。
「ミレイユ様にお会いしたいとのことです。なんでもセラフィム王より全権を委任された、特命大使だそうですよ」
「ふぅん……。でもあれ? エルフィーナ王国には『迷いの森』があるでしょ? 人間なのによく入って来れたわね?」
「害意や敵意がない人間ならば、エルフの案内さえあれば入ってこれますから。ミレイユ様がわたしたちと来たみたいに」
「そう言えばそうだっけ……? まぁいいや。でもわたし、セラフィム王国にいい思い出って、あんまりないのよね。今のほうがはるかに幸せだし、なんか面倒ごとになりそうだから会いたくないなぁ……」
セラフィム王国と聞いてまず思い浮かんできたのが、ヴェロニカ王女の顔だった。
わたしが追放される時に見せた、あの笑いを必死にこらえるような表情。
くっ!
ああもう!
思いだすだけでムカついてくるわ、あのドグサレ王女め……!
「ではミレイユ様は本日は調子が優れず、療養中のため会えないと伝えておきますね」
「うん、ごめんだけどそれで頼むわね。ああそうだ。ちなみに大使は誰が来てるの? まさかアンドレアスじゃないでしょうね?」
もしあいつが来たんなら、絶対に会ってやらないんだから。
全裸で土下座したって、絶対の絶対に会ってやらないんだからね!
「えっと、確か全権大使の方は、デルマイユ侯爵とおっしゃられておりました」
だけどアンナの口からは意外な名前が告げられて――。
「えっ! 先生が来てるの!? うそ!? ねぇアンナ、そのデルマイユ侯爵って、白髪の60才前くらいのお爺さんだった?」
「そうですね、そのような年齢に見受けられました」
「じゃあやっぱり先生だわ! 信じられない!」
「先生ですか?」
アンナがこてんと可愛く小首をかしげた。
「ああうん、ええっと。前にちらっと話したことがあったかと思うんだけど、デルマイユ侯爵はわたしが聖女になってすぐに、王宮で必要なイロハを叩き込んでくれた人なのよ。ものすごい恩人なの」
「あ、たしか鬼のように怖い人だと言っておられたような……」
「まぁその当時はね。鬼のようって言うか、鬼そのものだったわ」
「そ、それは大変でしたね」
「けど、そのおかげでわたしは貴族たちから、マナーも教養もない庶民上がりって馬鹿にされずに済んだのよ。そういうわけで大恩ある人だから、とりあえず今からすぐに会うわ。支度するから手伝ってくれる?」
「かしこまりました」
わたしは髪やらメイクやらをアンナにきっちりセットしてもらってから、先生――デルマイユ侯爵がジェイクたちと話しているという会議室へと受かった。
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