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第四章 王宮のミレイユ
第46話 我が人生に一片の悔いなし
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「ジェイク!? なんでここにいるのよ!?」
泣き言を言ってる情けない姿を見せたくなくて、わたしはパッと立ちあがった。
「アンナから、ミレイユとテニスをするから良かったら見にきてくれって言われてな。ちょうど時間が空いてたから見に来たんだ」
「ちょっとアンナ、こっちきなさい!」
「はい?」
私が呼びよせると、アンナがとてとてとネットを回って、わたしのところまでやってきた。
「これは極秘の緊急ミッションだって言ったでしょ!?」
わたしは小さな声で、だけど強い意思をこめながらアンナに耳打ちする。
「それでしたら、ダイエットという目的さえ隠せば問題ないかと思いまして。それにジェイク様に見られてる方が、ミレイユ様はやる気になるんじゃないかなって思ったんです」
すると、しれっとそんな答えをアンナは返してくる。
「アンナ……あなた、最初から全部、計画的犯行だったのね……! わたしがすぐにへばると思って……!」
「すぐにへばりましたよね?」
「くっ……! あーもう、わかったわよ、やればいいんでしょ、やれば!」
覚悟を決めたわたしは、カッと目を見開くと鼻息も荒くラリーを再開した。
「じゃ行きますよ~、はいっ」
相変わらず、一番打ちやすいところに配球してくるアンナのボールを、わたしはへろへろ~と打ちかえす。
再び始まったなんちゃってラリー。
わたしはジェイクの前で情けない姿は見せられないと、根性込めてがんばった。
アンナから、
「そろそろ休憩にしませんか?」
とか言われても、気にせずラケットを振り続けた。
そして持ち前の負けん気の強さで、気力と体力の限界までコートに立ち続けたわたしは――ついに足やら腰やらいろんなとこに限界がきて、コートのまん中でぶっ倒れてしまった。
「ミレイユ!」
「ミレイユ様!」
ジェイクとアンナの慌てたような声が聞こえてくるけど、
「ふふふ……どうだ見たか……倒れる時まで前のめりな、ミレイユ・アプリコットの生きざまを……」
わたしはカエルがつぶれたみたいに倒れてもなお、ラケットを握りしめたままメラメラと闘志を燃やし続けていた。
ミニスカートがめくれちゃってるけど関係ない。
なぜなら今のわたしは、戦いに身を捧げた一人の名もなきファイターなのだから。
我が人生に一片の悔いなし……。
わたしが充実感に満たされながら、心のポエムを読んでいると、
「――っしょと」
突然すっと身体が抱きかかえられて、わたしの身体は軽々と持ち上げられていた。
ジェイクがわたしを抱き上げたのだ。
しかもただ抱き上げただけではない。
これって、
「お、お姫様抱っこ――!?」
だったのだ!
「まったく。ミレイユはいつもがんばり過ぎだぞ。怪我はしてないか?」
「あ、うん、それは大丈夫だけど。単に太ももが限界だっただけだし」
「ならよかった」
「あの、それよりも、えっと、とりあえずは下ろしてくれる?」
「ん? 気にするな、疲れてるだろ。このまま部屋に連れていってやるから」
「でもあの、ジェイク。その、わたし汗をかいてるから汚いし、えっとにおいとか――」
「ミレイユの汗が汚いわけないだろ。いいから黙ってオレに抱かれてろ」
なんて言いながら、わたしのおでこに優しくキスをしてくるんだもん――!
「あ、うん……」
わたしはジェイクの服の胸元をきゅっと掴むと、顔を隠すように頭を押し付けた。
ジェイクの細身だけど、結構鍛えてある胸板がわたしをドキッとさせる。
そのままわたしはお姫様抱っこでお部屋に連れて行ってもらうと、お風呂場で下ろしてもらう。
「ありがとうジェイク。あの……重かったでしょ?」
「いや? 軽かったぞ」
「そ、そう? ならいいんだけど」
「変なミレイユだな。じゃあアンナ、あとは頼んだ。服を脱がせて風呂に入れてやってくれ」
「え、あ、はぁ……」
ジェイクの言葉に、アンナが何とも言えない顔を見せた。
「アンナ? どうしたんだ?」
「いーえ、なんでもありませーん。ここまで来て私に頼むとかないなー、とか思ってませんのでー」
「? よく分からんが、じゃあ頼んだからな?」
「かしこまりました。ミレイユ様、残念でしたね」
「べ、別に……? 全然ちっとも残念とかじゃないし? 意味がわからないわ」
「はいはい、そーですね。やれやれ、お二人ともそういうとこだけどうしようもなく奥手だから、私があれこれ手を尽くさないといけないんですよね。がんばらないと」
泣き言を言ってる情けない姿を見せたくなくて、わたしはパッと立ちあがった。
「アンナから、ミレイユとテニスをするから良かったら見にきてくれって言われてな。ちょうど時間が空いてたから見に来たんだ」
「ちょっとアンナ、こっちきなさい!」
「はい?」
私が呼びよせると、アンナがとてとてとネットを回って、わたしのところまでやってきた。
「これは極秘の緊急ミッションだって言ったでしょ!?」
わたしは小さな声で、だけど強い意思をこめながらアンナに耳打ちする。
「それでしたら、ダイエットという目的さえ隠せば問題ないかと思いまして。それにジェイク様に見られてる方が、ミレイユ様はやる気になるんじゃないかなって思ったんです」
すると、しれっとそんな答えをアンナは返してくる。
「アンナ……あなた、最初から全部、計画的犯行だったのね……! わたしがすぐにへばると思って……!」
「すぐにへばりましたよね?」
「くっ……! あーもう、わかったわよ、やればいいんでしょ、やれば!」
覚悟を決めたわたしは、カッと目を見開くと鼻息も荒くラリーを再開した。
「じゃ行きますよ~、はいっ」
相変わらず、一番打ちやすいところに配球してくるアンナのボールを、わたしはへろへろ~と打ちかえす。
再び始まったなんちゃってラリー。
わたしはジェイクの前で情けない姿は見せられないと、根性込めてがんばった。
アンナから、
「そろそろ休憩にしませんか?」
とか言われても、気にせずラケットを振り続けた。
そして持ち前の負けん気の強さで、気力と体力の限界までコートに立ち続けたわたしは――ついに足やら腰やらいろんなとこに限界がきて、コートのまん中でぶっ倒れてしまった。
「ミレイユ!」
「ミレイユ様!」
ジェイクとアンナの慌てたような声が聞こえてくるけど、
「ふふふ……どうだ見たか……倒れる時まで前のめりな、ミレイユ・アプリコットの生きざまを……」
わたしはカエルがつぶれたみたいに倒れてもなお、ラケットを握りしめたままメラメラと闘志を燃やし続けていた。
ミニスカートがめくれちゃってるけど関係ない。
なぜなら今のわたしは、戦いに身を捧げた一人の名もなきファイターなのだから。
我が人生に一片の悔いなし……。
わたしが充実感に満たされながら、心のポエムを読んでいると、
「――っしょと」
突然すっと身体が抱きかかえられて、わたしの身体は軽々と持ち上げられていた。
ジェイクがわたしを抱き上げたのだ。
しかもただ抱き上げただけではない。
これって、
「お、お姫様抱っこ――!?」
だったのだ!
「まったく。ミレイユはいつもがんばり過ぎだぞ。怪我はしてないか?」
「あ、うん、それは大丈夫だけど。単に太ももが限界だっただけだし」
「ならよかった」
「あの、それよりも、えっと、とりあえずは下ろしてくれる?」
「ん? 気にするな、疲れてるだろ。このまま部屋に連れていってやるから」
「でもあの、ジェイク。その、わたし汗をかいてるから汚いし、えっとにおいとか――」
「ミレイユの汗が汚いわけないだろ。いいから黙ってオレに抱かれてろ」
なんて言いながら、わたしのおでこに優しくキスをしてくるんだもん――!
「あ、うん……」
わたしはジェイクの服の胸元をきゅっと掴むと、顔を隠すように頭を押し付けた。
ジェイクの細身だけど、結構鍛えてある胸板がわたしをドキッとさせる。
そのままわたしはお姫様抱っこでお部屋に連れて行ってもらうと、お風呂場で下ろしてもらう。
「ありがとうジェイク。あの……重かったでしょ?」
「いや? 軽かったぞ」
「そ、そう? ならいいんだけど」
「変なミレイユだな。じゃあアンナ、あとは頼んだ。服を脱がせて風呂に入れてやってくれ」
「え、あ、はぁ……」
ジェイクの言葉に、アンナが何とも言えない顔を見せた。
「アンナ? どうしたんだ?」
「いーえ、なんでもありませーん。ここまで来て私に頼むとかないなー、とか思ってませんのでー」
「? よく分からんが、じゃあ頼んだからな?」
「かしこまりました。ミレイユ様、残念でしたね」
「べ、別に……? 全然ちっとも残念とかじゃないし? 意味がわからないわ」
「はいはい、そーですね。やれやれ、お二人ともそういうとこだけどうしようもなく奥手だから、私があれこれ手を尽くさないといけないんですよね。がんばらないと」
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