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第三章 恋する季節
第33話 素直な自分
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「ごめんなさい、その申し出はお受けできません」
だからわたしは、そうキッパリを告げたのだった。
ジェイクはわたしの返答を聞いて、目を大きく開いて少し放心したように固まったあと、
「そうか……うん、そう、だよな……。いきなり急にこんなことを言ってしまって悪かった。どうやらオレの独りよがりだったみたいだ……今のは忘れてくれると嬉しい……」
がっくりと肩を落とした。
それはもう可哀想になるくらいに、ものすごくしょんぼりと気落ちしていた。
木箱に入れられて木の下に捨てられて、クゥンクゥン鳴いてる子犬みたいだった。
まぁでも、今のはジェイクをがっかりさせるために言ったわけじゃないんだよね。
だからわたしは間を置かずにすぐに言ってあげたんだ。
「えっと、そういう意味じゃなくてね?」
「え……?」
ほんと今のはそう言う意味じゃないんだし。
「あのね、そんな風に自分を着飾った言葉で言われたって、あんまり嬉しくないっていうのかな」
「自分を着飾る……?」
「わたしとしては、誰かに大切な気持ちを告げる時は、変にかしこまった歯の浮くようなセリフよりも、素直な自分の言葉で言うべきじゃないかなって、思うんですよね」
「素直な自分の言葉で――」
「ね、そうは思わない?」
わたしの言葉に、ジェイクは少しうつむきながら考え込むと、
「……そうだな、うん、まったくもってミレイユの言うとおりだ――」
世界の真理を見つけたって感じで顔を上げたジェイクは、うん、今までで一番ステキな表情をしていた。
その男らしくて惚れ惚れする顔とか表情とか眼差しに、わたしは不覚にも激しくドキドキさせられてしまっていて──。
「――そうだ、まったくだよ。飾り立てた言葉で誰かの心を動かそうだなんて、想いを伝えようだなんて、そんなのは論外じゃないか! そんな簡単なことにも気づかないなんて、ははっ、やっぱり俺はポンコツ王子だな」
「だったら、すべきことは分かってるわよね?」
わたしの言葉に、ジェイクは言葉ではなく、にっこり笑って頷いてみせる。
そして見る者すべてを幸せにするような最高の笑顔をわたしに向けながら、ジェイクは――、
「ミレイユ! オレは君が好きだ、オレと結婚を前提に付き合ってくれ!」
土下座した――土下座しやがったのだ!
ガバッ!
――って、それはもうものの見事に、土下座をかましてくれやがったのだ!!
「だからあんたは、なんでいきなり土下座するのよ!?」
わたしは叫んだ!
魂のおもむくままに、思いの丈を全力でシャウトした!
「なんでって、オレは誰かの力を借りないと何もできないからな。そんなオレが一番オレらしい瞬間はなにかって考えたら、それはやっぱり土下座だろう!」
「なにをどう考えたら、その結論に行きつくのよ!?」
このまま押し倒されて最後までいっちゃってもいいかな……やだっ、恥ずかしい、きゃっ!
──ってくらいにムード満点だったのに、全部ぜんぶ台無しじゃないのっ!
「ははっ、こうしていると初めてミレイユに会った時のことを思いだすよな。あの時もこうやってオレは土下座したんだ」
「そんなもん思いださなくていいわよ! だいたいあの時わたし、子供に指さされたんだからね!? 親には見ちゃいけませんって言われたんだからね!?」
「誰になんと思われようと構わないさ。ただミレイユにさえ想いが届けば、オレは誰になんと言われようと、全然ちっとも構わないんだ!」
土下座したままキリッとした声で言うジェイクだけど、
「だから言われるのはわたしで! わたしが一番気にするっつってんでしょうが!?」
エルフィーナ王国でまで「聖女ミレイユは、馬車の中で王子を土下座させる高度なプレイを嗜む変態ドS女王様」なんて噂が立ったら、わたしはこれからアンナにどんな顔を向ければいいってのよ!?
だからわたしは、そうキッパリを告げたのだった。
ジェイクはわたしの返答を聞いて、目を大きく開いて少し放心したように固まったあと、
「そうか……うん、そう、だよな……。いきなり急にこんなことを言ってしまって悪かった。どうやらオレの独りよがりだったみたいだ……今のは忘れてくれると嬉しい……」
がっくりと肩を落とした。
それはもう可哀想になるくらいに、ものすごくしょんぼりと気落ちしていた。
木箱に入れられて木の下に捨てられて、クゥンクゥン鳴いてる子犬みたいだった。
まぁでも、今のはジェイクをがっかりさせるために言ったわけじゃないんだよね。
だからわたしは間を置かずにすぐに言ってあげたんだ。
「えっと、そういう意味じゃなくてね?」
「え……?」
ほんと今のはそう言う意味じゃないんだし。
「あのね、そんな風に自分を着飾った言葉で言われたって、あんまり嬉しくないっていうのかな」
「自分を着飾る……?」
「わたしとしては、誰かに大切な気持ちを告げる時は、変にかしこまった歯の浮くようなセリフよりも、素直な自分の言葉で言うべきじゃないかなって、思うんですよね」
「素直な自分の言葉で――」
「ね、そうは思わない?」
わたしの言葉に、ジェイクは少しうつむきながら考え込むと、
「……そうだな、うん、まったくもってミレイユの言うとおりだ――」
世界の真理を見つけたって感じで顔を上げたジェイクは、うん、今までで一番ステキな表情をしていた。
その男らしくて惚れ惚れする顔とか表情とか眼差しに、わたしは不覚にも激しくドキドキさせられてしまっていて──。
「――そうだ、まったくだよ。飾り立てた言葉で誰かの心を動かそうだなんて、想いを伝えようだなんて、そんなのは論外じゃないか! そんな簡単なことにも気づかないなんて、ははっ、やっぱり俺はポンコツ王子だな」
「だったら、すべきことは分かってるわよね?」
わたしの言葉に、ジェイクは言葉ではなく、にっこり笑って頷いてみせる。
そして見る者すべてを幸せにするような最高の笑顔をわたしに向けながら、ジェイクは――、
「ミレイユ! オレは君が好きだ、オレと結婚を前提に付き合ってくれ!」
土下座した――土下座しやがったのだ!
ガバッ!
――って、それはもうものの見事に、土下座をかましてくれやがったのだ!!
「だからあんたは、なんでいきなり土下座するのよ!?」
わたしは叫んだ!
魂のおもむくままに、思いの丈を全力でシャウトした!
「なんでって、オレは誰かの力を借りないと何もできないからな。そんなオレが一番オレらしい瞬間はなにかって考えたら、それはやっぱり土下座だろう!」
「なにをどう考えたら、その結論に行きつくのよ!?」
このまま押し倒されて最後までいっちゃってもいいかな……やだっ、恥ずかしい、きゃっ!
──ってくらいにムード満点だったのに、全部ぜんぶ台無しじゃないのっ!
「ははっ、こうしていると初めてミレイユに会った時のことを思いだすよな。あの時もこうやってオレは土下座したんだ」
「そんなもん思いださなくていいわよ! だいたいあの時わたし、子供に指さされたんだからね!? 親には見ちゃいけませんって言われたんだからね!?」
「誰になんと思われようと構わないさ。ただミレイユにさえ想いが届けば、オレは誰になんと言われようと、全然ちっとも構わないんだ!」
土下座したままキリッとした声で言うジェイクだけど、
「だから言われるのはわたしで! わたしが一番気にするっつってんでしょうが!?」
エルフィーナ王国でまで「聖女ミレイユは、馬車の中で王子を土下座させる高度なプレイを嗜む変態ドS女王様」なんて噂が立ったら、わたしはこれからアンナにどんな顔を向ければいいってのよ!?
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