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第三章 恋する季節
第30話 視察
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わたしが目を覚ました日の午後。
わたしとジェイクは、エルフィーナ王国・王都エルフィム西地区へとやってきていた。
「2か月にわたるロックダウンがやっと解除されたものの、西地区は人も街も大きなダメージを受けてしまったからな。復興がスムーズに進むよう、この目で直に見て必要な支援をしたいんだ」
ジェイクが西地区の視察に向かったので、せっかくなのでわたしもついてきてたというわけだ。
今わたしとジェイクは横並びで歩いていて、アンナは少し離れたところで、随伴のスタッフと一緒についてきていた。
「お付きメイドなんだし、アンナも一緒に歩きましょうよ」
わたしはそう言ったんだけど、
「いえいえ、わたしは後ろで温かく見守っておりますので、どうぞお二人で見て回ってくださいな」
なんかこう極上の笑顔で、そんなことを言われてしまったのだ。
そういうわけで、半ばデートみたいな感じでジェイクと2人で、肩を並べて歩いてるんだけど、
「それで、体調はどうなんだ? 疲れてないか? やっぱりもう少し静養した方がよくないか?」
わたしが病み上がりってこともあって、ジェイクはいつにも増して優しく言ってくれるんだよね。
それがちょっぴり嬉しいっていうか、むず痒いっていうか?
「うーん、ぶっちゃけるとね? ご飯食べたらすっかり元気になったのよね。死にそうになったのは『破邪の結界』を起動させた直後に『アルティメット・リジェネレーション』を使ったことによる、エネルギー切れが原因だし」
あの時、聖女パワーが足りなくなった分を、わたしは自分の生命エネルギーで補ってしまったのだ。
もしあとほんのわずかでも多く力を使っていたのなら、わたしはもうこの世にはいなかったことだろう。
今考えるとなんでそこまでしたのかなって、不思議に思ったりもするんだけど。
でもあの時のわたしには、絶対にジェイクを助けるんだっていう、こみ上げてくる熱い気持ちだけしかなかったんだよね。
そんなことを考えながらチラッとジェイクの横顔を見てみると、まだ少し心配そうな顔をしているみたいだった。
「まぁ、それならいいんだけど、今度は無理しないでくれよな?」
「なに言ってんのよ? それはジェイクの話でしょ? 体調が悪いのを無理して隠してたくせに。わたしが倒れたのだって、そもそもの原因はそこなんだからね?」
「め、面目ない……」
「ま、ジェイクらしいと言えばジェイクらしいけどね。国民のために自分にできる全てをやろうって力を尽くす姿は、その……カッコよかったわよ? ちょっとだけね? ……なんちゃって、ごにょごにょ……」
わたしはジェイクと反対側に視線を逸らしながら、もごもごっと言った。
ジェイクの優しさに、わたしもちょっとだけ絆されちゃったっていうのかな?
ほら、今回ジェイクはすごく頑張ったわけだし、そういう時はちゃんと褒めてあげないとね!
だって言うのに――!
「え? なんだって? ごめん、最後のあたり声が小さくてよく聞こえなかったんだけど――」
「っ!! なにも言ってないわよ、このポンコツ王子! ふんっ!」
「ちょ、おいミレイユ、先に行くなってば。あと予定の視察ルートはそっちじゃなくてこっちだから――」
「くっ……! 分かってるわよ!」
とまぁ、途中でちょっと変な雰囲気になりかけたわたしたちだったんだけど?
その後は当初の予定通りに、西地区の視察を続けていった。
病院や配給所で必要なものを尋ねて回ったり、住民の要望や不満、感謝といった様々な声を聞いてみたり。
精力的に動きまわりながら、その都度、住民目線の指示を出しているジェイクにくっついて回りながら、わたしはジェイクに対する好意――かもしれない気持ちがどんどんと高まって行くのを感じていた。
ジェイクが口だけじゃなく、本当に国民のことを考えて行動してるっていうのが、これでもかってくらいに伝わってきたから――。
わたしとジェイクは、エルフィーナ王国・王都エルフィム西地区へとやってきていた。
「2か月にわたるロックダウンがやっと解除されたものの、西地区は人も街も大きなダメージを受けてしまったからな。復興がスムーズに進むよう、この目で直に見て必要な支援をしたいんだ」
ジェイクが西地区の視察に向かったので、せっかくなのでわたしもついてきてたというわけだ。
今わたしとジェイクは横並びで歩いていて、アンナは少し離れたところで、随伴のスタッフと一緒についてきていた。
「お付きメイドなんだし、アンナも一緒に歩きましょうよ」
わたしはそう言ったんだけど、
「いえいえ、わたしは後ろで温かく見守っておりますので、どうぞお二人で見て回ってくださいな」
なんかこう極上の笑顔で、そんなことを言われてしまったのだ。
そういうわけで、半ばデートみたいな感じでジェイクと2人で、肩を並べて歩いてるんだけど、
「それで、体調はどうなんだ? 疲れてないか? やっぱりもう少し静養した方がよくないか?」
わたしが病み上がりってこともあって、ジェイクはいつにも増して優しく言ってくれるんだよね。
それがちょっぴり嬉しいっていうか、むず痒いっていうか?
「うーん、ぶっちゃけるとね? ご飯食べたらすっかり元気になったのよね。死にそうになったのは『破邪の結界』を起動させた直後に『アルティメット・リジェネレーション』を使ったことによる、エネルギー切れが原因だし」
あの時、聖女パワーが足りなくなった分を、わたしは自分の生命エネルギーで補ってしまったのだ。
もしあとほんのわずかでも多く力を使っていたのなら、わたしはもうこの世にはいなかったことだろう。
今考えるとなんでそこまでしたのかなって、不思議に思ったりもするんだけど。
でもあの時のわたしには、絶対にジェイクを助けるんだっていう、こみ上げてくる熱い気持ちだけしかなかったんだよね。
そんなことを考えながらチラッとジェイクの横顔を見てみると、まだ少し心配そうな顔をしているみたいだった。
「まぁ、それならいいんだけど、今度は無理しないでくれよな?」
「なに言ってんのよ? それはジェイクの話でしょ? 体調が悪いのを無理して隠してたくせに。わたしが倒れたのだって、そもそもの原因はそこなんだからね?」
「め、面目ない……」
「ま、ジェイクらしいと言えばジェイクらしいけどね。国民のために自分にできる全てをやろうって力を尽くす姿は、その……カッコよかったわよ? ちょっとだけね? ……なんちゃって、ごにょごにょ……」
わたしはジェイクと反対側に視線を逸らしながら、もごもごっと言った。
ジェイクの優しさに、わたしもちょっとだけ絆されちゃったっていうのかな?
ほら、今回ジェイクはすごく頑張ったわけだし、そういう時はちゃんと褒めてあげないとね!
だって言うのに――!
「え? なんだって? ごめん、最後のあたり声が小さくてよく聞こえなかったんだけど――」
「っ!! なにも言ってないわよ、このポンコツ王子! ふんっ!」
「ちょ、おいミレイユ、先に行くなってば。あと予定の視察ルートはそっちじゃなくてこっちだから――」
「くっ……! 分かってるわよ!」
とまぁ、途中でちょっと変な雰囲気になりかけたわたしたちだったんだけど?
その後は当初の予定通りに、西地区の視察を続けていった。
病院や配給所で必要なものを尋ねて回ったり、住民の要望や不満、感謝といった様々な声を聞いてみたり。
精力的に動きまわりながら、その都度、住民目線の指示を出しているジェイクにくっついて回りながら、わたしはジェイクに対する好意――かもしれない気持ちがどんどんと高まって行くのを感じていた。
ジェイクが口だけじゃなく、本当に国民のことを考えて行動してるっていうのが、これでもかってくらいに伝わってきたから――。
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