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第二章 エルフの国エルフィーナ
第18話 ~ジェイクSIDE~
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~エルフィーナ王国、王都エルフィム、西地区~
流行り病ヴァルスの大流行によりロックダウン中の、王都エルフィム西地区。
そこへジェイクはタスク・フォースの視察として訪れていた。
「ジェイク殿下、ここより先はヴァルスの最汚染地区となります。感染の危険が非常に高くなりますので、どうかこれより先へ進むことはお控えください」
ジェイクが地区の奥の最汚染ゾーンへと進もうとするのを、側近の一人が慌てたように、進路を邪魔するように身体を入れながら、強く進言してきた。
「その危険なところで今、たくさんの医療従事者が決死の覚悟で救命活動を行っているんだ。1か月以上も働きづめの医師もいると聞く。ここでオレが激励をせねばいつすると言うんだ」
しかしジェイクは強い決意のもと、止めに入った側近を押しのけるようにしながら進んでいくのだ。
「どうか、どうかお控えくださいませ。御身はもはやあなた様一人の物ではありません。どうかここはご自重ください。エルフィーナ王家の最後のお世継ぎであるジェイク殿下が亡くなったとなれば、ヴァルス禍で苦しむ我が国をさらなる混乱が襲うことは必定!」
「なに、父上母上は健在だ。オレが死んでも、次に生まれる者が国を継げばいいだけだ」
「なりませんジェイク殿下。今は亡き弟王子お二方の死を、無駄になされるおつもりですか! さらにジェイク殿下まで失ったとなれば、国王ご夫妻のご心痛のほどは、いかほどのものか……」
「くっ、それは――」
その言葉に、ジェイクの足が止まった。
「西地区の強制ロックダウンは、弟王子お二方がヴァルスに感染するのを承知で命を張って説得したからこそ成し遂げられたことにございます。であれば、今のジェイク殿下の使命は、その遺志を継いでこのヴァルス禍を収束させることではありませんか?」
感染が広がる王都の西地区を丸ごと都市封鎖――ロックダウンする。
口で言うのは簡単だが、される側の西地区の住人にとっては堪ったものではない。
そこから逃げることも許されず、国のために流行り病にかかって死んでくれと言われているようなものだからだ。
ジェイクの優秀な弟王子2人は、西地区の住民を懸命に説得して回り。
そしてどうにかロックダウンの同意を取り付けたころで、ヴァルスにかかって亡くなったのだ。
西地区の住民たちが今も必死に、死と隣り合わせの苦しい状況を耐え忍んでいるのは、弟王子二人の命を賭けた想いを受け取ったからに他ならなかった。
「それでも、それでもオレは――行く! オレは何もできない、学もない、才能もない。だからオレはせめてこの言葉で、誰かを支えねばならないんだ!」
「ですが――」
「今が最後の踏ん張りどころなんだ。すでに聖女ミレイユが『破邪の結界』の作成にとりかかっている。完成は目前だ。オレが王族――為政者であるというのなら、オレには懸命に医療戦線を支える者たちに、必死に耐える住民たちに、あと少しの辛抱だと希望を指し示す義務があるはずだ!」
「ジェイク殿下――」
「頼む、この通りだ!」
そう言うとジェイクはガバッと地面に正座して、額を地面にこすりつけるように土下座をした。
ジェイクは馬鹿だ。
それは自分が一番わかってる。
馬鹿なジェイクには何もない――だけど下げる頭だけはある。
だからこうやって必死に土下座をするのだ。
「頼むこの通りだ!」
ジェイクは強い覚悟のもと、何度も何度も側近に頭を下げ続けた。
「……どうか顔をお上げくださいジェイク殿下。そこまでのお覚悟をお持ちとは……。わかりました、ただちに手はずを整えてまいります」
「分かってくれたか!」
「ですが汚染ゾーンに入るのは1日に2時間だけです。それ以上はなにがあっても許容できません。それ以上は自害してでも、ジェイク殿下をお止めいたしますぞ?」
「それで構わん。では早急に準備を頼む!」
「かしこまりましたジェイク殿下!」
その日、ジェイク王子は感染の広がる西地区で、多数の医療従事者や住人たちを激励して回った。
いつ終わるとも知れないロックダウンの中、折れそうになっていた住民や医療従事者の心は、ジェイクの覚悟を決めた行動によってこれ以上なく奮い立ったのだった。
流行り病ヴァルスの大流行によりロックダウン中の、王都エルフィム西地区。
そこへジェイクはタスク・フォースの視察として訪れていた。
「ジェイク殿下、ここより先はヴァルスの最汚染地区となります。感染の危険が非常に高くなりますので、どうかこれより先へ進むことはお控えください」
ジェイクが地区の奥の最汚染ゾーンへと進もうとするのを、側近の一人が慌てたように、進路を邪魔するように身体を入れながら、強く進言してきた。
「その危険なところで今、たくさんの医療従事者が決死の覚悟で救命活動を行っているんだ。1か月以上も働きづめの医師もいると聞く。ここでオレが激励をせねばいつすると言うんだ」
しかしジェイクは強い決意のもと、止めに入った側近を押しのけるようにしながら進んでいくのだ。
「どうか、どうかお控えくださいませ。御身はもはやあなた様一人の物ではありません。どうかここはご自重ください。エルフィーナ王家の最後のお世継ぎであるジェイク殿下が亡くなったとなれば、ヴァルス禍で苦しむ我が国をさらなる混乱が襲うことは必定!」
「なに、父上母上は健在だ。オレが死んでも、次に生まれる者が国を継げばいいだけだ」
「なりませんジェイク殿下。今は亡き弟王子お二方の死を、無駄になされるおつもりですか! さらにジェイク殿下まで失ったとなれば、国王ご夫妻のご心痛のほどは、いかほどのものか……」
「くっ、それは――」
その言葉に、ジェイクの足が止まった。
「西地区の強制ロックダウンは、弟王子お二方がヴァルスに感染するのを承知で命を張って説得したからこそ成し遂げられたことにございます。であれば、今のジェイク殿下の使命は、その遺志を継いでこのヴァルス禍を収束させることではありませんか?」
感染が広がる王都の西地区を丸ごと都市封鎖――ロックダウンする。
口で言うのは簡単だが、される側の西地区の住人にとっては堪ったものではない。
そこから逃げることも許されず、国のために流行り病にかかって死んでくれと言われているようなものだからだ。
ジェイクの優秀な弟王子2人は、西地区の住民を懸命に説得して回り。
そしてどうにかロックダウンの同意を取り付けたころで、ヴァルスにかかって亡くなったのだ。
西地区の住民たちが今も必死に、死と隣り合わせの苦しい状況を耐え忍んでいるのは、弟王子二人の命を賭けた想いを受け取ったからに他ならなかった。
「それでも、それでもオレは――行く! オレは何もできない、学もない、才能もない。だからオレはせめてこの言葉で、誰かを支えねばならないんだ!」
「ですが――」
「今が最後の踏ん張りどころなんだ。すでに聖女ミレイユが『破邪の結界』の作成にとりかかっている。完成は目前だ。オレが王族――為政者であるというのなら、オレには懸命に医療戦線を支える者たちに、必死に耐える住民たちに、あと少しの辛抱だと希望を指し示す義務があるはずだ!」
「ジェイク殿下――」
「頼む、この通りだ!」
そう言うとジェイクはガバッと地面に正座して、額を地面にこすりつけるように土下座をした。
ジェイクは馬鹿だ。
それは自分が一番わかってる。
馬鹿なジェイクには何もない――だけど下げる頭だけはある。
だからこうやって必死に土下座をするのだ。
「頼むこの通りだ!」
ジェイクは強い覚悟のもと、何度も何度も側近に頭を下げ続けた。
「……どうか顔をお上げくださいジェイク殿下。そこまでのお覚悟をお持ちとは……。わかりました、ただちに手はずを整えてまいります」
「分かってくれたか!」
「ですが汚染ゾーンに入るのは1日に2時間だけです。それ以上はなにがあっても許容できません。それ以上は自害してでも、ジェイク殿下をお止めいたしますぞ?」
「それで構わん。では早急に準備を頼む!」
「かしこまりましたジェイク殿下!」
その日、ジェイク王子は感染の広がる西地区で、多数の医療従事者や住人たちを激励して回った。
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