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第二章 エルフの国エルフィーナ
第15話 「妹」と一緒にお風呂(2)
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「あの、初歩的な質問なんですけど、結界のほつれとかって誰でも分かるものなんでしょうか?」
「いいえ聖女の資質のある者だけよ。結界を構成する目に見えない力の流れとか、流れがよどんでる場所を感じ取れないといけないから、聖女としての才能がある人だけね」
そしてその才能は100万人に1人しかいないという。
だから『破邪の聖女』は月給金貨10枚という、庶民としては破格中の破格のお給金で雇われていたわけなんだけど――。
「じゃあセラフィム王国の『破邪の結界』はどうなるんでしょうか? ミレイユ様がいなくなれば、誰も結界のメンテナンスをできる人がいなくなりますよね?」
「わたしもそう言ったんだけどね? そうしたら、そんなことはお前が考える必要はないって逆ギレされて、そのまま追放されちゃったんだよね」
しかも後任には、わたしの婚約者を寝取ったヴェロニカ王女がつく始末……聖女の資質もないくせに……!
くぅっ!
思いだすだけで怒りがわき上がってくるんだけど……!?
「ええっと、それって大丈夫なんでしょうか……?」
怒りに燃えるわたしの心を機敏に感じ取ったのだろう、アンナがややこわごわと尋ねてきた。
おっとっと、せっかくアンナと和気あいあいと仲良しこよしでお風呂してるっていうのに、わざわざヴェロニカ王女の顔を思いだして、自分から不愉快になりにいく必要なんてないわよね。
「しばらくはメンテなしでも正常に動いてるだろうし、流行り病さえ起こらなければ、確かに『破邪の結界』がなくても大丈夫ではあるんだけど――」
だけどもし一度起こってしまえば――それこそヴァルスでも起こってしまえば、まちがいなくセラフィム王国は存亡の危機に陥ることだろう。
「何も起こらないといいですね……」
「そうね。何も起こらないに越したことはないわ。世界が平和でありますように――」
「はい――って、ああっ、すみません、話し込んでいて手が止まってました!」
アンナはアワアワしながらそう言うと、たっぷりの泡泡スポンジで背中を流すのを再開した。
「いいっていいって。今のは大事な話だったからね。そういうわけでアンナ。明日から、わたしのお手伝いを頼んだわよ?」
「はいっ! 全力でお手伝いします」
「ふふっ、いい返事ね。じゃあそろそろ交代しましょうか」
「えっと、交代ですか……?」
わたしの言葉に、よくわからないって顔をするアンナ。
「今度はわたしがアンナの背中を洗ってあげるから」
「ええっ、いやいやそんな、いいですよ! 大事なお仕事を控えているミレイユ様に、そんなことさせるわけにはいきませんし!」
「そう……、あっ、ううっ!」
わたしは突然、苦しそうにうめき声をあげると、胸を抑えた。
かなりの棒読みだったけど、
「ミレイユ様!? 急にどうされたんですか!?」
慌てたようにアンナがわたしの顔をのぞき込んでくる。
「い、いけないわ……このままアンナの背中を流さないと、明日からの仕事に支障をきたしそう……!」
「ええぇっ!?」
「これはまずいわね、じつにまずいわ。エルフィーナ王国の存亡にかかわるわ、国家の危機よ……」
「ええっと……」
「はい、というわけで、わたしの仕事が円滑に進むように、アンナはおとなしく背中を明け渡すように」
「もうミレイユ様ったら強引なんですから……」
そう言いながらも、ちょっと嬉しそうに背中を向けてくるアンナ。
ふふふっ、なんだかんだ言いながら、わたしに背中を流してもらうのが嬉しいくせに。
ほんと遠慮しいで可愛いやつだなぁ、このこのぉっ!
その後もわたしとアンナは、お風呂でやると効果的なマッサージをしあったり、ちょっとだけ前も洗いっこしちゃったりしちゃいながら、きゃっきゃうふふとお風呂を堪能したのだった。
アンナってば、もうわたしの本当の妹になってくれないかな?
わたしはいつでもウェルカムだよ?
「いいえ聖女の資質のある者だけよ。結界を構成する目に見えない力の流れとか、流れがよどんでる場所を感じ取れないといけないから、聖女としての才能がある人だけね」
そしてその才能は100万人に1人しかいないという。
だから『破邪の聖女』は月給金貨10枚という、庶民としては破格中の破格のお給金で雇われていたわけなんだけど――。
「じゃあセラフィム王国の『破邪の結界』はどうなるんでしょうか? ミレイユ様がいなくなれば、誰も結界のメンテナンスをできる人がいなくなりますよね?」
「わたしもそう言ったんだけどね? そうしたら、そんなことはお前が考える必要はないって逆ギレされて、そのまま追放されちゃったんだよね」
しかも後任には、わたしの婚約者を寝取ったヴェロニカ王女がつく始末……聖女の資質もないくせに……!
くぅっ!
思いだすだけで怒りがわき上がってくるんだけど……!?
「ええっと、それって大丈夫なんでしょうか……?」
怒りに燃えるわたしの心を機敏に感じ取ったのだろう、アンナがややこわごわと尋ねてきた。
おっとっと、せっかくアンナと和気あいあいと仲良しこよしでお風呂してるっていうのに、わざわざヴェロニカ王女の顔を思いだして、自分から不愉快になりにいく必要なんてないわよね。
「しばらくはメンテなしでも正常に動いてるだろうし、流行り病さえ起こらなければ、確かに『破邪の結界』がなくても大丈夫ではあるんだけど――」
だけどもし一度起こってしまえば――それこそヴァルスでも起こってしまえば、まちがいなくセラフィム王国は存亡の危機に陥ることだろう。
「何も起こらないといいですね……」
「そうね。何も起こらないに越したことはないわ。世界が平和でありますように――」
「はい――って、ああっ、すみません、話し込んでいて手が止まってました!」
アンナはアワアワしながらそう言うと、たっぷりの泡泡スポンジで背中を流すのを再開した。
「いいっていいって。今のは大事な話だったからね。そういうわけでアンナ。明日から、わたしのお手伝いを頼んだわよ?」
「はいっ! 全力でお手伝いします」
「ふふっ、いい返事ね。じゃあそろそろ交代しましょうか」
「えっと、交代ですか……?」
わたしの言葉に、よくわからないって顔をするアンナ。
「今度はわたしがアンナの背中を洗ってあげるから」
「ええっ、いやいやそんな、いいですよ! 大事なお仕事を控えているミレイユ様に、そんなことさせるわけにはいきませんし!」
「そう……、あっ、ううっ!」
わたしは突然、苦しそうにうめき声をあげると、胸を抑えた。
かなりの棒読みだったけど、
「ミレイユ様!? 急にどうされたんですか!?」
慌てたようにアンナがわたしの顔をのぞき込んでくる。
「い、いけないわ……このままアンナの背中を流さないと、明日からの仕事に支障をきたしそう……!」
「ええぇっ!?」
「これはまずいわね、じつにまずいわ。エルフィーナ王国の存亡にかかわるわ、国家の危機よ……」
「ええっと……」
「はい、というわけで、わたしの仕事が円滑に進むように、アンナはおとなしく背中を明け渡すように」
「もうミレイユ様ったら強引なんですから……」
そう言いながらも、ちょっと嬉しそうに背中を向けてくるアンナ。
ふふふっ、なんだかんだ言いながら、わたしに背中を流してもらうのが嬉しいくせに。
ほんと遠慮しいで可愛いやつだなぁ、このこのぉっ!
その後もわたしとアンナは、お風呂でやると効果的なマッサージをしあったり、ちょっとだけ前も洗いっこしちゃったりしちゃいながら、きゃっきゃうふふとお風呂を堪能したのだった。
アンナってば、もうわたしの本当の妹になってくれないかな?
わたしはいつでもウェルカムだよ?
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