破邪の聖女 ~婚約者を第二王女に寝取られ婚約破棄&追放された聖女は、エルフの国の土下座王子と恋仲に!?~

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

文字の大きさ
上 下
10 / 66
第一章 婚約破棄された聖女と、エルフの国の土下座王子

第10話 ~ヴェロニカSIDE~

しおりを挟む
~セラフィム王国 王都~


 わたくし、ヴェロニカ・セラフィムは、セラフィム王国の第二王女ですの。

 わたくしは王族という最高の家柄と、恵まれた容姿をもって生まれてきた、選民の中の選民で、欲しい物はすべて手に入れてきましたわ。

 そんな完璧すぎるわたくしでしたので、いつも心のおもむくままに、毎週のようにパーリーを開いておりました。

 名付けて『ヴェロニカ・プレゼンツ・イケメンパラダイス!』。

 ステキなイケメン貴族たちを集めては、一晩中ダンスを踊って、ステキな恋とちょっとアダルトな一夜の逢瀬を楽しむのです。

 とってもステキでしょう?

 そんな素敵なパーリーの席で、わたくしは若くして伯爵位を継いだアンドレアス様と出会ったのでした。

 アンドレアス様を見た瞬間、私の心が不思議なほどにときめきました。

 理由は特にありません。

 侯爵家という家柄も、王女の地位から見れば大したことはありませんし、そこそこのイケメンとは言えそこそこどまりで、能力がさほどずば抜けているというわけでもありませんでした。

 でもアンドレアス様に出会った瞬間に、ビビッと心が震えたのです。
 アンドレアス様の笑顔を見るたびに、心がキュンキュン激しく高鳴ったのです。

 ですから理由をあげるならば、ただただそれは一目惚れだったのでしょう。

 そんなアンドレアス様のことが気になって気になって仕方がなくなったわたくしは、色々とアンドレアス様のことを調べてみました。

 するとなんということでしょう、アンドレアス様には婚約者なるお邪魔虫がいたのです!

 お相手は『破邪の聖女』と呼ばれる特殊な力を持っているらしい、ミレイユとかいう、どこの馬の骨かもわからない素性不明のうす汚い庶民上がりでした。

 ああ、なんという悲劇!
 わたくしの愛するアンドレアス様が、このような庶民あがりのサルの婚約者にされてしまっているなんて!

 同時に、わたくしはアンドレアス様を絶対に手に入れなければならないと、強く強く確信したのでした。

 だってわたくしは王女で、ミレイユとかいう婚約者は庶民なのですよ?

 同じ人を好きになったのなら、どちらが譲るべきかは火を見るよりも明らかではありませんか?

 当然ミレイユとかいう庶民が譲るべきでしょう。
 立場というものをしっかりとわきまえるべきです。

 婚約者だとかそんなものも関係ありません。

 だってこれは神に選ばれたわたくしの、純粋すぎる愛の発露なのですから。
 掛け値なしのトゥルー・ラヴなのですから!

 だから叶うべきだし、叶って当然なのです。

 それを婚約者などというくだらない理由で庶民に邪魔されるなんて、そんなの絶対許せないません――!

 わたくし、ヴェロニカ・セラフィムは、セラフィム王国の第二王女ですの。

 欲しい物はすべて手に入れます。
 今までも、そしてこれからも――!


「ねぇアンドレアス様、わたしアンドレアス様のことをお慕いしておりますの」

「申し訳ありません。ヴェロニカ王女のお気持ちは大変嬉しいのですが、ボクにはミレイユという婚約者がいて――」

「ねぇアンドレアス様? わたくしと結婚すれば、アンドレアス様は王族の一員になるのですよ?」

「そ、それは――」

 アンドレアス様の目が誘惑に泳いだのを、わたくしは見逃しませんでした。

 ここでわたくしのモノにしてみせます――!

「ねぇアンドレアス様……アンドレアス様は、この国をご自分の手で動かしてみたくはありませんか?」

「ボクの手で、この国を……?」

「わたくし見てみたいな、アンドレアス様がいつかこの国の王になる日を――」

「ボクが、この国の王に――あ、いや、でも――」

「ねぇアンドレアス様。わたくしってせっかちなんです。だから今この場で、お返事をいただけませんか?」

 わたくしはアンドレアス様の胸にしなだれかかりながら、上目づかいで見上げながら、とろけるような甘い声でそっとつぶやいた。

「ヴェロニカ王女、ボクは――」

「そろそろ夜も更けて参りました。ねぇアンドレアス様、今からわたくしの部屋に参りませんか?」

「――――」

 答えはすぐに出ました。
 当然です。

 だってわたしは王女で。
 神に選ばれたエリートの中のエリートなのですから――。

 選ばれないはずが――ありません。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...