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第一章 婚約破棄された聖女と、エルフの国の土下座王子
第3話 自称エルフの王子さま
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「うーん、これからどうしたらいいんだろう……?」
わたしは一人、途方に暮れていた。
王都から追放されてしまったから、まずは行き先を決めないといけないんだけど。
よそに知り合いがいるわけでもない。
ちなみにわたしの実の両親はアンドレアス&ヴェロニカによって、完全にお金で丸め込まれていた。
可愛い一人娘が路頭に迷ってるっていうのに、『あなたは負けん気が強いから、一人でも大丈夫よ!』なんて言うとか、ひどすぎる。
大丈夫なわけないでしょ!?
さすがのわたしも泣くよ!?
王都の城門を出てすぐのところにある乗合馬車の停留所で、わたしが大きな荷物に座りながら、うんうん今後の行く末を考えていると、
「『破邪の聖女』ミレイユ・アプリコットさんだね?」
わたしは突然、声をかけられたんだ。
声につられて見上げるとそこには一人の青年がいた。
結構なイケメンで、耳が少し長い。
でもエルフほどは長くないからハーフエルフなのかな?
わたしも女の子なのでイケメンは嫌いじゃない。
むしろ好き。
だけど、
「えっとどちら様でしょうか?」
わたしはややこわごわと尋ねていた。
相手が二等市民のエルフだからじゃない。
わたしはそもそも、一等市民とか二等市民とかそういう差別があまり好きじゃないし。
耳の長さだけで、なんで区別をつけるのって思う。
人間とエルフは、愛さえあれば子供だってできるのに。
そんなわたしだから、こわごわ尋ねた理由はとっても単純で。
単にそのハーフエルフの青年が、ぜんぜん見たことのない顔だったからだ。
もちろんわたしは『破邪の聖女』として、それなりに顔が知られている。
だからわたしの知らない相手がわたしの顔を知っていても、別に不思議ではないんだけど……。
それでもだ。
わたしが追放されたその日に、タイミングよくいきなり声をかけてきた知らない相手に、無警戒に対応するわけにはいかなかった。
「おっとこれは失礼。申し遅れました、オレはエルフィーナ王国第一王子のジェイクと申します。以後お見知りおきを」
ハーフエルフの青年は、にっこり笑って自己紹介をする。
「エルフィーナ王国の王子さま……?」
エルフィーナ王国ってたしか、西の方にある『迷いの森』のさらに奥にあるっていう、エルフだけの小さな国だよね?
そのエルフィーナの王子さま?
この人が?
「にこにこ――」
「ごめんなさい。はっきり言いますけど、あなたはすごくうさんくさいです」
わたしは文字通りはっきりと言った。
誤解の余地なんて与えないように、きっぱりと言いきってあげた。
「うぇっ!? うさんくさい!? オレが!?」
わたしの言葉に、激しく動揺する「自称」エルフの王子さま。
「だっていきなりわたしの名前を確認してきたと思ったら、人の良さそうなスマイルを浮かべて自分は王子だとか言ってきて。これでうさんくさい思わない人は、いないと思いますけど」
「なんでだよ!? 笑顔であいさつすると、うさんくさいのか!? マジで!? だって笑顔であいさつは、コミュニケーションの基本だろ!?」
自称エルフの王子さまが驚いた顔をした。
どうも本気で分かってないみたい。
「タチの悪い詐欺師ほど、人が困ってるときに、こうやってさも人畜無害であるかのような極上の笑顔をして、近づいてくるもんなんですよ。今のあなたみたいにね」
「た、タチの悪い詐欺師……」
世の中、だます奴が一番悪いのは間違いない。
だからと言ってほいほいと騙されていては、バカを見る羽目になるのは自分だ。
注意をしすぎて損することはない。
「普通はそう思うと思いますよ、『自称』王子さま?」
「『自称』!? オレは本当にエルフィーナ王国の王子なんだってば。だから全然ちっともうさんくさくなんかないし!」
自称王子さまはなおもそう言い張るんだけど、言葉づかいとか態度とか、申し訳ないんだけどぜんぜん王子に見えないんだよね。
「はぁ……それで自称王子さまが、わたしにいったい何の御用なんですか?」
ちょっと――いやかなりポンコツな感じの自称王子さま。
このままだと話が進まなさそうだと感じたわたしは、仕方がないのでちょっとだけ話に付き合ってあげることにした。
まぁ暇と言えば暇だしね。
なにせ今のわたしってば、住所不定・無職だから……はぁ。
思わずため息ついちゃったよ……。
わたしは一人、途方に暮れていた。
王都から追放されてしまったから、まずは行き先を決めないといけないんだけど。
よそに知り合いがいるわけでもない。
ちなみにわたしの実の両親はアンドレアス&ヴェロニカによって、完全にお金で丸め込まれていた。
可愛い一人娘が路頭に迷ってるっていうのに、『あなたは負けん気が強いから、一人でも大丈夫よ!』なんて言うとか、ひどすぎる。
大丈夫なわけないでしょ!?
さすがのわたしも泣くよ!?
王都の城門を出てすぐのところにある乗合馬車の停留所で、わたしが大きな荷物に座りながら、うんうん今後の行く末を考えていると、
「『破邪の聖女』ミレイユ・アプリコットさんだね?」
わたしは突然、声をかけられたんだ。
声につられて見上げるとそこには一人の青年がいた。
結構なイケメンで、耳が少し長い。
でもエルフほどは長くないからハーフエルフなのかな?
わたしも女の子なのでイケメンは嫌いじゃない。
むしろ好き。
だけど、
「えっとどちら様でしょうか?」
わたしはややこわごわと尋ねていた。
相手が二等市民のエルフだからじゃない。
わたしはそもそも、一等市民とか二等市民とかそういう差別があまり好きじゃないし。
耳の長さだけで、なんで区別をつけるのって思う。
人間とエルフは、愛さえあれば子供だってできるのに。
そんなわたしだから、こわごわ尋ねた理由はとっても単純で。
単にそのハーフエルフの青年が、ぜんぜん見たことのない顔だったからだ。
もちろんわたしは『破邪の聖女』として、それなりに顔が知られている。
だからわたしの知らない相手がわたしの顔を知っていても、別に不思議ではないんだけど……。
それでもだ。
わたしが追放されたその日に、タイミングよくいきなり声をかけてきた知らない相手に、無警戒に対応するわけにはいかなかった。
「おっとこれは失礼。申し遅れました、オレはエルフィーナ王国第一王子のジェイクと申します。以後お見知りおきを」
ハーフエルフの青年は、にっこり笑って自己紹介をする。
「エルフィーナ王国の王子さま……?」
エルフィーナ王国ってたしか、西の方にある『迷いの森』のさらに奥にあるっていう、エルフだけの小さな国だよね?
そのエルフィーナの王子さま?
この人が?
「にこにこ――」
「ごめんなさい。はっきり言いますけど、あなたはすごくうさんくさいです」
わたしは文字通りはっきりと言った。
誤解の余地なんて与えないように、きっぱりと言いきってあげた。
「うぇっ!? うさんくさい!? オレが!?」
わたしの言葉に、激しく動揺する「自称」エルフの王子さま。
「だっていきなりわたしの名前を確認してきたと思ったら、人の良さそうなスマイルを浮かべて自分は王子だとか言ってきて。これでうさんくさい思わない人は、いないと思いますけど」
「なんでだよ!? 笑顔であいさつすると、うさんくさいのか!? マジで!? だって笑顔であいさつは、コミュニケーションの基本だろ!?」
自称エルフの王子さまが驚いた顔をした。
どうも本気で分かってないみたい。
「タチの悪い詐欺師ほど、人が困ってるときに、こうやってさも人畜無害であるかのような極上の笑顔をして、近づいてくるもんなんですよ。今のあなたみたいにね」
「た、タチの悪い詐欺師……」
世の中、だます奴が一番悪いのは間違いない。
だからと言ってほいほいと騙されていては、バカを見る羽目になるのは自分だ。
注意をしすぎて損することはない。
「普通はそう思うと思いますよ、『自称』王子さま?」
「『自称』!? オレは本当にエルフィーナ王国の王子なんだってば。だから全然ちっともうさんくさくなんかないし!」
自称王子さまはなおもそう言い張るんだけど、言葉づかいとか態度とか、申し訳ないんだけどぜんぜん王子に見えないんだよね。
「はぁ……それで自称王子さまが、わたしにいったい何の御用なんですか?」
ちょっと――いやかなりポンコツな感じの自称王子さま。
このままだと話が進まなさそうだと感じたわたしは、仕方がないのでちょっとだけ話に付き合ってあげることにした。
まぁ暇と言えば暇だしね。
なにせ今のわたしってば、住所不定・無職だから……はぁ。
思わずため息ついちゃったよ……。
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