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追放編
第9話 素直で正直なウィリアム王子
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「メルビルはその、今好きな人とかはいるんだろうか?」
どこか挙動不審なウィリアム王子の質問に、
「知っての通り、私はユベリアス王太子殿下から婚約を解消されたばかりなので、そういう相手はおりません。それがどうかいたしましたか?」
対照的にメルビルはさらっと事務的に答えた。
「いやな、うん、まぁ特にどうというわけではないんだが……ちなみに黒髪の男は好きだったりするか?」
「……つまり私がウィリアム王子のことをどのように思っているかということを、お聞きになりたいのでしょうか?」
「うぐ……っ」
メルビルのドストレートな物言いに、ウィリアム王子は完全に言葉に詰まらされてしまっていた。
上手く答えられなくて沈黙するウィリアム王子の背中を、冷や汗が一滴すいっと流れ落ちる。
「あれ、違いましたでしょうか? 申し訳ありません、少々自意識過剰だったようです、今の失礼な発言はどうか忘れてくださいませ」
メルビルは慌てて粗相を謝罪した。
しかし。
「いや、まさにそういうことが聞きたかったんだ。メルビル、その、良かったら俺と交際しないか」
ウィリアム王子が今度はこれ以上なくはっきりと言った。
もともとウィリアム王子はなんでもはっきりと言うタイプの人間なのだ。
しかしメルビルの美しさと気立ての良さを前に、さすがのウィリアム王子も躊躇してしまっていたのだ。
「ええっと、いきなりなにを言っておられるのでしょうか?」
「いきなりじゃないんだ。今まで何度か顔を合わせて、素敵な女性だとずっと思っていたんだ。そして今回色々と踏み込んで話してみて思った。君のような素晴らしい女性と結ばれたいと」
「まさか最初からそれが目的で私を助けたのでしょうか?」
「それこそまさかさ――いや完全にゼロかと言われたら、そりゃ必ずしも完全にゼロだとは言い切れないんだけど……」
下心が全くなかった――とは言い切れなくて、最後の方はかなり小さな声になってしまう正直者なウィリアム王子である。
「あの、普通ここは完全にゼロだ、って言っちゃう場面だと思うんですけど。下心なんてないんだよってアピールするのが普通なのではないでしょうか」
メルビルが苦笑しながら指摘する。
「交際を申し込もうって相手に、嘘はつきたくなかったんだ」
そんなメルビルに、ウィリアム王子が真面目な顔で言葉を紡ぐ。
「ふふっ……」
それを聞いたメルビルは思わず笑い出してしまった。
「お、おい。なんで笑うんだよ」
「申し訳ありません、お噂の通り、素直で正直な方だなと思いまして、つい」
「それは褒めてくれてるんだよな……?」
「もちろんですわ。これほど正直かつ素直に気持ちを告げられた経験はありませんでしたので、少々戸惑ってしまいました。笑ってしまい申し訳ございません」
「それは別にいいんだけど、そんなにおかしかったかな?」
「普通は殿方が女性を口説く時には、口先のおべんちゃらをあれこれ駆使して、自分をこれでもかと飾り立てて口説こうとするものですわ」
「それは相手に対して誠意がないだろう?」
「はい。ですからそんな軽薄で浅薄な殿方より、ウィリアム王子はとても素敵だと思った次第です」
「おおっ、そういうことか!」
ウィリアム王子が納得した様子でポンと手を叩いた。
どこか挙動不審なウィリアム王子の質問に、
「知っての通り、私はユベリアス王太子殿下から婚約を解消されたばかりなので、そういう相手はおりません。それがどうかいたしましたか?」
対照的にメルビルはさらっと事務的に答えた。
「いやな、うん、まぁ特にどうというわけではないんだが……ちなみに黒髪の男は好きだったりするか?」
「……つまり私がウィリアム王子のことをどのように思っているかということを、お聞きになりたいのでしょうか?」
「うぐ……っ」
メルビルのドストレートな物言いに、ウィリアム王子は完全に言葉に詰まらされてしまっていた。
上手く答えられなくて沈黙するウィリアム王子の背中を、冷や汗が一滴すいっと流れ落ちる。
「あれ、違いましたでしょうか? 申し訳ありません、少々自意識過剰だったようです、今の失礼な発言はどうか忘れてくださいませ」
メルビルは慌てて粗相を謝罪した。
しかし。
「いや、まさにそういうことが聞きたかったんだ。メルビル、その、良かったら俺と交際しないか」
ウィリアム王子が今度はこれ以上なくはっきりと言った。
もともとウィリアム王子はなんでもはっきりと言うタイプの人間なのだ。
しかしメルビルの美しさと気立ての良さを前に、さすがのウィリアム王子も躊躇してしまっていたのだ。
「ええっと、いきなりなにを言っておられるのでしょうか?」
「いきなりじゃないんだ。今まで何度か顔を合わせて、素敵な女性だとずっと思っていたんだ。そして今回色々と踏み込んで話してみて思った。君のような素晴らしい女性と結ばれたいと」
「まさか最初からそれが目的で私を助けたのでしょうか?」
「それこそまさかさ――いや完全にゼロかと言われたら、そりゃ必ずしも完全にゼロだとは言い切れないんだけど……」
下心が全くなかった――とは言い切れなくて、最後の方はかなり小さな声になってしまう正直者なウィリアム王子である。
「あの、普通ここは完全にゼロだ、って言っちゃう場面だと思うんですけど。下心なんてないんだよってアピールするのが普通なのではないでしょうか」
メルビルが苦笑しながら指摘する。
「交際を申し込もうって相手に、嘘はつきたくなかったんだ」
そんなメルビルに、ウィリアム王子が真面目な顔で言葉を紡ぐ。
「ふふっ……」
それを聞いたメルビルは思わず笑い出してしまった。
「お、おい。なんで笑うんだよ」
「申し訳ありません、お噂の通り、素直で正直な方だなと思いまして、つい」
「それは褒めてくれてるんだよな……?」
「もちろんですわ。これほど正直かつ素直に気持ちを告げられた経験はありませんでしたので、少々戸惑ってしまいました。笑ってしまい申し訳ございません」
「それは別にいいんだけど、そんなにおかしかったかな?」
「普通は殿方が女性を口説く時には、口先のおべんちゃらをあれこれ駆使して、自分をこれでもかと飾り立てて口説こうとするものですわ」
「それは相手に対して誠意がないだろう?」
「はい。ですからそんな軽薄で浅薄な殿方より、ウィリアム王子はとても素敵だと思った次第です」
「おおっ、そういうことか!」
ウィリアム王子が納得した様子でポンと手を叩いた。
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