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第三章

第50話 止めろ! 精霊ビッグバン!(3)

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 作戦開始と同時に、まずはセフィが「セフィロトの舞」を踊りはじめた。

 すると暴走していたセフィロト・ツリーの力が少しだけ弱くなる。

 でもまだだ。
 まだダメなんだ。

 完全に止まる、その一瞬を狙うんだ!

 そうしないと逆にセフィロト・ツリーを刺激しちゃって、一気に暴走して精霊ビッグバンが起こっちゃうから。

 だからセフィを信じて待つんだ、その一瞬がやって来る時を!
 セフィが作ってくれるそのたった一度の瞬間を待つんだ!

 ボクは深呼吸してその瞬間をじっと待つ。

 そして、

「偉大なるセフィロト・ツリーよ! わたしの声を聞いてください! ケテル・コクマー・ビナー・ケセド・ゲブラー・ティファレト・ネツァク・ホド・イェソド・マルクト――、ダアト!!」

 セフィがセフィロトの究極秘密呪文を唱えると、髪かざりについてる宝石がピカー!って光り出す!

 必殺の「セフィロトの舞」と、髪かざりに貯めこまれたスーパー巫女パワーで、セフィロト・ツリーの暴走が完全に止まろうとする――!

 嵐みたいな力の暴走が、嘘みたいにピタッとなくなっていって――。
 そしてその中心に、闇の精霊王の姿がはっきりと見えてきたんだ!

 いくぞ、ここだ!
 ここからが勇者ハルトの出番だよ!

「ボクの声が聞こえる、全ての精霊たちよ! この桃源郷とうげんきょうに住むみんな! 今だけいいから! お願い、ボクとセフィに力を貸して! 究極精霊術『みんなで力をあわせてオール・フォー・ワン』セットアップ!」

 ボクは大きな声で全精霊たちみんなに呼びかける――!

御心みこころのままに――!』
 戦いの精霊『タケミカヅチ』が――!

『はーい♪』
 風の精霊『シルフィード』が――!

『ナンクルナイサー』
 すばやさの精霊『スプリンター』が――!

『フンガー!』
 力の精霊『ザ・パワー』が――!

『かしこまりました』
 光の精霊『ルミナリア』が――!

『おうよ!』
 マラソン精霊『ヒキャク』が――!

『ファイトォォ、いっぱーつ!』『ハッ!』
 根性の精霊『ガッツ』と、忍者精霊『クノイチ』が――!

O.K.オーケイ!』『あいさ~』
 野球の精霊『イチロー』と、幸運の精霊『ラッキー』が――!

 そして、
『心得た』
 最強の精霊、炎の魔神『イフリート』が――!

 ボクの呼びかけに、ありとあらゆる精霊たちが次々とが応えてくれる!

 そしてボクの体に、この世界の全ての精霊たちの力が合わさったものすごい力がみなぎってきたんだ!

 全ての精霊の力を全部使えるようになったボクは、真・精霊剣プリズマノワールをジャキン!と、正面にかまえた!

 これでもう1秒あれば充分さ!

 暴走が完全に止まる、その瞬間――!

「今です、ハルトくん!」
 セフィの声が聞こえた!

「いくよ、プリズマノワール! ボクに君の力を貸して!」

 ボクの言葉に、
 ブォン!
 真・精霊剣プリズマノワールが大きく一度、だけど今までで一番力強く震えた!

「いくぞ、超必殺技!」

 いまや真・精霊剣プリズマノワールは、たくさんの色で光り輝いていた。
 
 『イフリート』の赤色、『シルフィード』の白色、『ルミナリア』の金色、他にもいっぱいの色で――!

 精霊たちの力がこもった、世界を彩る全ての色で!
 真・精霊剣プリズマノワールは虹色に光り輝いていた――!

「ボクが! 勇者ハルトが! セフィと精霊たちとみんなと一緒に、この世界を守るんだ――!」

 ボクは虹のようにキラキラ光る、真・精霊剣プリズマノワールを大きく振り上げた!
 そして今までで一番のものすごい超精霊パワーを、闇の精霊王に向かって一気に振り下ろす!

「ボクとセフィとみんなの協力剣! 絶対最強・精霊剣! エクスカリバーっ!!」

 ボクは最強無敵の超必殺で、闇の精霊王を攻撃したした!

 ズバシューー!

 虹のように無限の色で光り輝く《ボクとセフィとみんなの協力剣エクスカリバー》が、闇の精霊王を直撃する――!

 超絶精霊パワーが、暴走が止まった1秒の間に一気に闇の精霊王に打ちこまれた!

「ギィぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ――――――!」

 闇の精霊王はカミナリが落ちたみたいな、ものすごい大きな叫び声をあげると、そのまま空気に溶けるみたいにしてスゥッと消えていった。

「やった……!」

 みんなの力を使い果たした真・精霊剣プリズマノワールが、虹色から元の黒と光の剣に姿を戻す。

 その直後。

「やりました! セフィロト・ツリーの暴走が止まりました!」

 セフィが弾んだ声で言いながら、喜びいっぱいでボクのところに走ってきたんだ。

「止まったね!」
 ボクは真・精霊剣プリズマノワールを鞘に納めると、

「「イエーイ!」」

 さいっっっこうの笑顔で、セフィとハイタッチをしたのだった。
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