精霊の国の勇者ハルト

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第三章

第43話 勇者ハルト、セフィを助けにいく(3)

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「セフィ、しっかりして、セフィ!」

 ボクは倒れているセフィに駆け寄ると、抱き起こして必死に呼びかけた。

「ううっ……ハ、ハルトくんですか……?」

「うん! ボクだよセフィ! よかった気がついて! 大丈夫? ケガはない?」

 ボクの声に、

「わたしは大丈夫です。頭を少し打っただけですから」
 セフィが小さな声で答えた。

 でも、

「全然大丈夫じゃないよ! 早くお医者さんに見せないと」
 頭を打ったなんて大変だ!

「いいえハルトくん。今はわたしのことより大事なことがあるんです」
「でも――」

「聞いてくださいハルトくん。このままではセフィロト・ツリーが――桃源郷とうげんきょうの全ての力の源が奪われてしまいます」

「セフィロト・ツリーが!? もしかしてここにあるの!?」

「はい、この大神殿だいしんでんの1番奥にセフィロト・ツリーはあります。そして今、闇の精霊王がそこにいるんです」

「闇の精霊王がセフィロト・ツリーのところに!?」

「はい。わたしも止めようとしましたが、わたしの力では全くかないませんでした。それで突き飛ばされて頭を打ったんです」

「それはそうだよ! 無茶はしちゃだめだよセフィ! セフィは運動は苦手なんだから!」

 それにしても女の子をつき飛ばすなんて、闇の精霊王はなんてひどいヤツなんだ!
 許さないぞ!

「それでも止めないといけなかったのです。わたしはセフィロト・ツリーの巫女であり、そしてセフィロトの姫なのですから」

 セフィ……お姫さまとして、巫女として、すごくがんばったんだね。

「ねぇセフィ、確認なんだけど、闇の精霊王は精霊総理大臣の息子なんだよね?」

「精霊総理大臣から聞いたのですね。そうです。そして闇の精霊王はこのお城にいた時からずっと、セフィロト・ツリーを自分のものにしようと企んでいたのです」

「なんだって!?」

「セフィロト・ツリーは、この世界の全ての力の源です。闇の精霊王はそれを使って、この精霊の世界桃源郷とうげんきょうを世界征服せいふくしようとしたのです」

「精霊の世界を征服するだなんて……」

 本当になんて悪いヤツなんだ!

「精霊総理大臣はその野望を知って、汚職事件オショク・ジケンのときに息子を遠くに永久追放したんです。2度とセフィロト・ツリーに近づくことができないように、と」

「そういうことだったんだね……」

「ですが息子は追放されてからもずっと、セフィロト・ツリーを狙っていたんです。そして闇の精霊王となって再び奪いに来たんです」

「な、なんてしつこいヤツなんだ……」

「彼のモットーは『諦めたらそこで試合終了』だそうです」

「それ完全に悪い意味になっちゃってるよね!? でもわかったよセフィ。ボクが闇の精霊王を止めてくる! だから安心して、ね?」

 ボクはセフィを安心させるように優しく言った。
 だけどセフィは悲しそうな顔をしたままだった。

「闇の精霊王はきっともう、セフィロト・ツリーの力を手に入れてます。ハルトくんでも勝てません」

「そんなことないよ。だってボクは勇者ハルトなんだから!」

 困ってる精霊のお姫さまを助けるのが、勇者ハルトの役目なんだから!

「ですが――うっ、ケホッ、コホッ……」
 セフィが小さくセキこんだ。

「ちょっと話しすぎたんだよ。しばらくここでじっとしてて。すぐに勝って戻ってくるからさ」

「ハルトくん――、わかりました。どうかお気をつけて」

「うん、行ってくる!」

 セフィに応援をもらったボクは、大神殿の奥へと駆け出した!
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