精霊の国の勇者ハルト

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第三章

第41話 勇者ハルト、セフィを助けにいく(1)

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「セフィを助けに行かないと! でも――」

 ボクはまわりを見る。
 精霊四天王を倒してもまだまだたくさんの闇の精霊たちが残っていた。

 セフィを助けに行きたいけど、闇の精霊たちもどうにかしないといけない!

「どうしよう!?」

 ボクが悩んでいると、

「勇者ハルト! ここはオレ様が引き受けた! ハルトは先に行け!」
 セイリュウが言った。

「セイリュウ?」

「闇の精霊たちもオトリだからな! 本当の目的はセフィロト城だ! きっと城の中にある生命の樹セフィロト・ツリーを狙ってるんだ! だからハルトは先に行け! おまえの分までオレ様がここで戦ってやる!」

「でも――」

「デモもヘチマもねぇんだよ! お姫さまを助けに行くか、行かないかだ! どっちなんだ勇者ハルト!」

「もちろんセフィを助けに行くよ! じゃあセイリュウ、後は任せたからね!」
「おうよ、任せとけ!」

「死んじゃダメだからね?」
「ガハハハハッ! 誰にモノを言っている? オレ様は最強の精霊四天王セイリュウだぞ!」

「あはは、もう1人だから四天王じゃないでしょ」
「ヘリクツを言ってないで、さっさと行け!」

「うん、行ってくる!」
 ボクはセイリュウに背中を向けると、セフィロト城に向かって走りだした。

 ボクの後ろでは、闇の精霊たちに向かってセイリュウが名乗りを上げている。 

「やぁやぁ! 遠からん者は音に聞け! 近くば寄って目にも見よ! オレ様が最強の精霊四天王セイリュウだ! やられたい奴から、かかってこい!」

 だからもうセイリュウは四天王じゃないんだってば。
 きっと「最強の精霊四天王」って言いかたが好きなんだろうなぁ。

 でもそんなセイリュウが、今はとてもとても頼もしかった。

「セイリュウ、そっちは頼んだよ。ボクもこっちでがんばるから!」




 戦場はセイリュウに任せて、ボクは一足先にセフィロト城へと戻った。
 綺麗なお城の門がボロボロに壊されている。

「ひどい……なんでこんなこと……」

 それを見て悲しい気持ちになりながら、ボクはお城の中に入っていく。

「まずはセフィを探さないとね。お部屋にいるのかな?」
 ボクとセフィが一緒に生活しているお部屋に向かう途中で、

「あっ! あれは精霊総理大臣! 大丈夫ですか!?」
 ボクは廊下に倒れていた精霊総理大臣を発見した。
 
「ううっ……おお、勇者ハルトどのか」

 助けおこした精霊総理大臣はボロボロで、話すのもやっとみたいだった。

 いつも持っていたオシャレな杖も真ん中でポッキリと折れてしまっている。
 セフィロト城に忍び込んだ誰かに攻撃されたんだ!

「精霊総理大臣、いったい誰にやられたんですか?」
 ボクが聞くと、

「これをやったのは息子なのです……」
 精霊総理大臣は小さな声で言った。

「……え? ……息子さんですか?」

「はい。汚職事件オショク・ジケンで追放した息子が、闇の精霊王となって乗りこんできたのです……」

「ええっ!? お食事券オショクジ・ケンで追放された息子さんが!? そんな!」

「縁を切ったとはいえ、なんというバカ息子か……これでは精霊総理大臣として、姫さまに申しわけがたちませぬ……」

 精霊総理大臣はつらそうで悔しそうな顔をしていた。

 そういえば、食べ物の恨みは怖いってことを聞いたことがある。
 やっぱりそうだったんだね。

 お食事券オショクジ・ケンをもらって追放されたことを、息子さんはずっと恨んでたんだ!

 でもだからって、自分のお父さんをこんな酷い目に合わせるなんて、ぜったいダメだよ!

「――ってそうだ! 精霊総理大臣、すぐにどこか休めるお部屋につれていきますから」
 ボクはそう言ったんだけど、精霊総理大臣は首を横にふった。

「わたしのことはよい。そんなことより、急いで神殿しんでんに向かうのだ。セフィが、セフィが――」

「セフィがどうしたんですか!?」

 ボクはすぐに聞き返したんだけど、でも精霊総理大臣はそのままぐったりしてしまうと意識を失ってしまった。

 息をしているから死んではいないみたい。

 ボクは精霊総理大臣を廊下のすみっこに運んでいって、そっと寝かせてあげた。

「精霊総理大臣のことも心配だけど。でも急げって言ってたもんね。先にセフィを助けにいかないと!」

 ボクは急いでセフィがいる神殿へと向かった!
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