精霊の国の勇者ハルト

マナシロカナタ✨ねこたま✨GCN文庫

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第二章

第26話 精霊ばぁや(2)

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 『プリズマノワール』って言葉の意味……?

「えっと、わかりません……」
 ボクが困っていると、

「プリズマとは『光り輝く』、ノワールとは『真っ黒』のことです」
 もの知りセフィが、パッと答えてくれた。

 へぇ、プリズマノワールってそんな意味だったんだね。
 カッコいい名前だなって思っただけで、意味とか全然知らなかったよ。

 え?
 でも、あれ?

「じゃあ精霊剣プリズマノワールは、『光と黒の精霊剣』って意味なの? でもこの剣は真っ黒で、光で輝いてはいないよ?」

 あれれ、いったいどういうこと?

「そうじゃ。その真っ黒な剣は、本来なら『プリズマノワール』ではなく、ただ『ノワール』と呼ばれるべきなのじゃよ」

「じゃあなんで『プリズマ』がついて、『プリズマノワール』って呼ばれるようになったの?」
 おかしいよね?

「それも簡単なことじゃ。最強の精霊剣のもつ強大な力は、1人ではとても抑えられないのじゃよ。暴走してしまうからの」

「暴走!?」
「危ないです!」

 そんなことになったら大変だよ!

「そうじゃ。危ないんじゃ。そこで大昔の精霊の王さまは考えたのじゃ。心を通じあった2人が力を合わせて使うことで、はじめて精霊剣プリズマノワールの本当の力が使えるようにとの」

「はっ! そういうことですか! 精霊剣プリズマノワールの強大な力を1人では抑えられなくても、2人で半分ずつなら抑えることができるというわけですね?」

 セフィが言った。

「その通りじゃよセフィロト姫。心を通じあった2人が半分ずつ力を抑えることで、暴走させずに精霊剣プリズマノワールの本当の力を使うことができるのじゃ」

「そういうことだったんだ……」
 すごく難しいけど、なんとなく分かった気がする。

 1人じゃ重すぎて持てない荷物も、2人でいっしょに持てば持ち上げられるってことだよね、きっと。

「ハルトとセフィはここにくるまで、2人で力を合わせてトラップやナゾナゾをクリアしてきたじゃろう?」

「「は、はい」」
 ボクとセフィの返事がきれいに重なる。

「つまりそれだけたくさん、2人は心を通わせてきたということじゃよ。よって既に精霊剣プリズマノワールの本当の力は、使えるようになっておるのじゃ。ほれ、ハルトよ。精霊剣プリズマノワールを抜いてみるがよい」

 ボクは精霊ばぁやに言われたとおり、精霊剣プリズマノワールを抜いてみた。
 すると――!

「わわっ!?」
「精霊剣の片方のやいばが黒で、もう片方はキラキラと光ってます!」

「これが本当の力を解放した精霊剣プリズマノワールの、真なる姿じゃ。光と闇という正反対の力をその刃に同時に閉じこめた、最強の精霊剣。それがプリズマノワールなのじゃよ」

「これが精霊剣プリズマノワールの真の姿――」
「綺麗です……」

「名づけて、真・精霊剣プリズマノワールなのじゃ!」

 精霊ばぁやはどや顔でそう言った。
 ちょっとノリノリに見えた。

 精霊ばぁやは普段は1人でいるから、ボクたちと話している内に楽しくなってきたのかもしれないね。

「真・精霊剣プリズマノワール――」
 そしてそんな美しい剣を見て、ボクは思わずボゥっと見とれてしまっていた。

「とまぁそういうわけなのじゃ。のぅ? ワシが特にあれこれ言うことは、なかったじゃろう?」

「さっき『できない』って言ったのはこういう意味だったんですね。もう本当の姿になっちゃってたから、これ以上は何もできないって意味だったんだ」

「そういうことじゃ」

「なら最初からそう言ってくれればよかったのに。できないって言われたから、ビックリしたじゃないですか」

「そうですよ、本当にびっくりしたんですからね」

「ふぉっふぉっふぉ。ちょいとばかし、お主たちを驚かせてみたくなったのじゃよ」

「精霊ばぁや、人が悪いですよ。プンスカです」

「ふぉっふぉっふぉ、ふぉーっふぉっふぉふぉ……」

 セフィが怒って言っても、精霊ばぁやはヘンテコな笑いかたで知らんぷりする。

「でも、良かったよ。これでセイリュウと戦えるようになったから」

「はい。精霊剣プリズマノワールの本当の力を――真・精霊剣プリズマノワールを、セイリュウに見せつけてあげましょう!」

「うん!」

「話がまとまったところで、今日はもう遅い。疲れも溜まっとるじゃろう。2人とも今日はここに泊まっていくがよい」

「いいんですか?」
 正直言うと、もうクタクタってくらいにかなり疲れてるボクだった。

「もちろんよいとも。それにワシも久しぶりに人とうたでの。もう少し話をしたいんじゃ」

「ねぇ、ハルトくん、ここはお言葉に甘えましょう」
 セフィも泊まってくことに賛成みたいだった。

「じゃあ泊まっていきます」

「おおそうか! 時にハルトは異世界から来たというたの? 最近はなにが流行っとるのじゃ? パラパラダンスとかはまだ流行っとるのか?」

 精霊ばぁやはそんなことを聞いてきたんだけど、

「なんですか? パラパラダンスって?」

 はじめて聞く言葉にボクは首をかしげた。
 ダンスって言うから、なにかの踊りなんだろうけど。

「ま、まさかブームが終わっとるのか? めちゃんこ流行っとると聞いたのに……」

 言いながら、精霊ばぁやが手だけをぱっぱと同じようなリズムでコンパクトに動かしていく。
 でも残念ながらボクはそれを見ても思い当たる節はなかった。

「セフィはパラパラダンスって知ってる?」
「すみません、知りません……」

 物知りセフィも知らないみたいだった。

「くぅっ、これがジェネレーションギャップなのか……。しかたないの、老兵はただ去るのみじゃ。ワシはちゃぶ台で、みかんでも食べとこうかの……」

 しょんぼりした精霊ばぁやに、

「精霊ばぁや、元気出してくださいね。帰ったらパラパラダンスのこと、調べておきますので」

 セフィが精霊ばぁやの頭を、なでなでしながら優しく言った。


 こうして。

 ボクは精霊剣プリズマノワールの本当の力を――新・精霊剣プリズマノワールを使えるようになったんだ。

 そして次の日。
 精霊ばぁやにたくさんお礼を言ってから、ボクたちはセフィロト城へと帰還した。

 帰りは秘密の隠し通路を教えてもらったので、そこを通った。
 おかげで、帰りはトラップをクリアしなくてよかったんだ。

「よし、これで準備は完全に整ったね!」

 さぁセイリュウ。
 もう1度ボクと勝負だ。

「今度は負けないぞ――!」
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