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第二章

第25話 精霊ばぁや(1)

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「この中に精霊ばぁやがいるんだね」
「はい、きっと!」

 ついにボクたちはたどり着いたんだ。

「開けるよ?」
「お願いします」

 ボクはふぅっと大きく1回息をはくと、コンコンと軽くノックをした。
 職員室に入る時みたいに緊張していた。

「どうぞ」
 声が返ってくる。

 ボクは意を決して部屋の扉を開けた。
 するとそこは――、

「わ、和室!?」

 なぜかたたみにちゃぶ台が置いてあって、一人のばぁやがズズっとお茶をすすっていたんだ。

 ちゃぶ台の上にはみかん&おせんべいも置いてある。
 そこだけまんま、日本の古いおうちだった。

 お正月と夏休みに遊びに行くおばあちゃんの家が、まさにこんな感じなんだよね。

「あの、初めましてこんにちは。ボクは加瀬かぜ大翔はるとです。異世界から召喚されて勇者をしています。今日は聞きたいことがあってやってきました。あなたが精霊ばぁやですよね?」

「わたしはセフィ――、セフィロト姫です。お初にお目にかかります」

 ボクとセフィはまず、名前と用事を言ってあいさつをした。
 学校で習ったとおりに、上手くあいさつと自己紹介ができたと思う。

 すると、

「ふぉっふぉっふぉ。たくさんのトラップとナゾナゾをクリアして、よくここまで来たのぅ。まずはお茶でも飲みなさい。のどが渇いておるじゃろう?」

 精霊ばぁやはそう言って、冷たいお茶を出してくれた。

「ありがとうございます、いただきます」

 ボクはお茶をゴクゴクと飲みほした。
 はふぅ……。

 洞くつに入ってからは何も食べたり飲んだりしてなかったから、実はかなりのどが渇いてたんだよね。

 だから冷たいお茶がすごく美味しかった。
 お代わりまでしちゃったよ。

 そんなボクと違って、セフィはすまし顔で音も立てずに優雅にお茶を飲んでいる。
 さすがセフィはお姫さまだね。
 すごく大人っぽい。

「それで話なんですけど」
「今は眠っている精霊剣プリズマノワールの本当の力を、使えるようにして欲しいのです」

 お茶を飲み終えたボクとセフィが一緒になって説明すると、精霊ばぁやは言った。

「すまんが、それはできんのぅ」

 いきなり断られてしまったので、

「ええっ!? なんで!?」
「どうしてでしょうか!?」

 ボクとセフィは2人そろって驚いて聞き返してしまった。

 だってせっかく苦労してここまで来たのに、できないなんてそんなのないよ!

「そうは言われても、できんものはできんのじゃよ。無い袖は振れぬ」

「そ、そんなぁ……」
 あまりのことにボクは力が抜けてしまって、へろへろーっとした情けない声を出してしまった。

 でもセフィは違った。

「理由を聞かせてもらえますか、精霊ばぁや。わたしたちは最強の精霊四天王セイリュウを倒すために、どうしても精霊剣プリズマノワールの本当の力を使えるようにならないといけないのです」

 セフィは、キリリとしたお姫さま口調で精霊ばぁやに質問する。

「そ、そうなんです!」
 ボクもそれにのっかった。

 そうだよ!
 諦めたらそこで試合終了ですよって、人気漫画でも言ってたし!

 諦めたらセイリュウがやってきてセフィロト城が、セフィのおうちが壊されちゃうんだから!

「理由は簡単じゃよ。なぜなら――」

「な、なぜなら……?」
 ご、ごくり……。

「なぜなら、精霊剣プリズマノワールの本当の力もうとっくに解放されておるからのぅ」

「ええっ!?」
 ボクはまたまたびっくりさせられて、大きな声をあげてしまった。

「そ、それはどういう意味でしょうか?」

 セフィもビックリはしていたけど、ビックリしてあたふたするだけのボクと違って、精霊ばぁやにちゃんと理由を聞いていた。
 セフィはほんと頼りになるなぁ。

「どういうもなにも、そのままの意味なんじゃがの。そうじゃのぅ、なにから説明したもんか……」

 精霊ばぁやは少し考えたあと、言った。

「おぬしたちは、『プリズマノワール』という言葉の意味を知っておるかのぅ?」
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