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第二章

第22話 ナゾナゾ対決(1)

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「下がってセフィ!」
「は、はい!」

 ボクはセフィを守るように一歩、前に出た。
 動き出したガーゴイルとセフィの間に壁になるように立つ。

 戦うのはボクの役目だからね!

「おいガーゴイル。戦うならこのボク、勇者ハルトが相手になるぞ!」

 ボクは精霊剣プリズマノワールをいつでも抜けるように準備をする。
 さらに戦いの精霊タケミカヅチの力を、使おうとしたときだった。

なんじら、ここを通りたければ我がナゾナゾに答えるがよい』
 ガーゴイルが今度は話しはじめたんだ!

「はわっ!? ガーゴイルがしゃべりましたよ、ハルトくん!」
「う、うん! 今しゃべったよね!?」

「ガーゴイルは石でできてるはずなのに、どうやってしゃべってるんでしょうか?」

「なんでだろう……いや、違うよセフィ、これはただの石像じゃない、精霊なんだ!」
「えっ、これ精霊なんですか?」

「うん、ガーゴイルの中から精霊の力を感じるんだ」
 今のボクは精霊使いだから、なんとなくそれがわかった。

「たしかに精霊が中にいるのなら、動いたりしゃべったりしても不思議じゃありませんね」
「きっとナゾナゾの精霊だよ!」

『ほう、よくぞ見やぶったな。我はナゾナゾ精霊ガーゴイルなり』
 
「ナゾナゾ精霊! やっぱりだ!」
「すごいですハルトくん!」

 よーし、精霊だってことがわかればもうちっとも怖くなんてないぞ!

『ではあらためて問おう。汝ら、ここを通りたければ我がナゾナゾに答えるがよい』
 ガーゴイルがさっきとまったく同じセリフを言った。

「ねぇねぇセフィ、『なんじ』ってどういう意味?」
 ボクは小さな声で、こっそりセフィに質問した。

「『なんじ』は、『あなた』の古い古い大昔の言いかたです」
 さすがセフィ、物知りさんだな。

「ってことはつまり、ボクたちにナゾナゾを解けってこと? じゃあガーゴイルはボクたちと戦うつもりはないの?」

『我はナゾナゾの精霊ガーゴイル。知恵を戦わせることはあっても、剣で戦ったりはしないのだ』

「ハルトくん、きっとガーゴイルの出したナゾナゾに正解すると、あの扉を開けてくれるんですよ」

「なるほど、そういうことか。じゃあナゾナゾを解かないとだね!」
 ボクとセフィは目を合わせて、コクンとうなずきあった。

「やりましょう、ハルトくん!」
「うん、やろう、セフィ!」

『話がまとまったようだな。ではゆくぞ! 我の出す究極のナゾナゾを解いてみるがよい――!』

「よしこい、ガーゴイル!」
「がんばります!」

『では第1問。パンはパンでも、食べられないパンってなーんだ?』

「ええっ!? 食べられないパン? そんなのあるの!?」

 な、なんだろう?
 アンパン、食パン、カレーパン、ジャム、バタ、チーズパン、メロンパンに、クリームパンに、チョコパンに、やきそばパンに、えっと、えっと……。

 ――ううっ、だめだ、ぜんぶ食べられるよ。

 でも、食べれて当たり前だよね?
 だってパンは食べ物だもん。

 食べれるから食べ物でしょ?
 なのに食べられないパンって、このナゾナゾおかしくない?

 ボクが色んな種類のパンを思い出しながら、でもちっとも答えがわからずにウンウンうなっていると、

「わかりました!」
 セフィがキリリと言った。

『では答えを聞こうか』

「答えは『フライパン』です!」

『ほぅ、正解だ』

「わわっ、すごいよセフィ! そっか、そうだよね。たしかにフライパンは『食べられないパン』だ!」

 あんな堅い「パン」を食べようとしたら、歯が全部折れちゃうもん。

 こんな難しいことにすぐに気づいちゃうなんて、セフィはやっぱり物知りさんだね!
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