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第一章

第13話 最強の精霊四天王、セイリュウ登場!(1)

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 ビャッコを倒した次の日。
 精霊の世界に来て3日目。 

 ボクがお部屋でセフィと、これからどうするかを話し合っていると、

「大変です、姫さま!」
 精霊総理大臣すごく慌てた様子で駆け込んできた――!

 精霊総理大臣は普段はお姫さまのセフィの代わりに政治をおこなっているお爺さん精霊だ。

 すごく偉くて1番偉いセフィの次に偉いんだって。
 つまり2番目に偉い精霊なんだ。

 かなり年をとっているので杖をついている。
 オシャレな杖ですごくカッコいいな。

「そんなに慌てて一体全体どうしたというのですか、精霊総理大臣? 息子の汚職事件おしょく・じけんでもまゆすら動かさなかったあなたが、こうまで慌てるなんて」

 セフィが高貴こうきなお姫さまの話し方で聞いた。

「あれとはすでに親子の縁を切っております。もはや息子ではありませぬ」

「な、なんと! さすがは冷たい氷の心を持つと言われる精霊総理大臣です!」

 セフィたちがなんだかよく分からない話をしていた。

 オショクジケン――お食事券ってことは一緒にご飯を食べただけで、親子の縁を切られちゃったんだろうか?
 さっぱり意味が分からないけど偉い人は大変なんだね。

「それはそれとして、いったい何があったのです?」

「姫さま、それがその、精霊四天王のセイリュウが急にやってきたのです。今はお城の門のところで待っているのですが――」

 精霊総理大臣は、おでこの汗をふきながら答えた。

「なんですって!? 精霊四天王のセイリュウが!?」

 セフィはとてもビックリしていた。
 ボクも、ええっ!? って感じですごくビックリしている。

「はい、姫さま」

「ところで待っているとは、どういうことでしょうか? 攻めてきたの間違いではないのですか?」

「それがその。セイリュウはセフィロト城の門の前で静かに待っておりまして。私どももセイリュウが一体なにを考えているのか、よく分からないのです」

 精霊総理大臣はとても困った顔をしていた。

「そうですか……それでセイリュウはなんと言っているのです?」
「勇者ハルトと勝負をしたいと言っております」

「ボクと勝負?」「ハルトくんと勝負ですか?」
 ボクとセフィの声がきれいに重なった。

「はい、そう言っております」

「……ハルトくん、どうしましょう?」
 セフィがボクを見た。

「とりあえずセイリュウに会ってみようと思う」

「大丈夫でしょうか?」
「会わないときっと暴れるだろうし。だからまずは会って話をしてみるよ」

「ではわたしも一緒に行きます」

「ううん、危ないからセフィはここにいて。セフィはお姫さまなんだし、ボクだけなら戦いになっても多分なんとかなるから」

「わかりました。わたしはここでハルトくんの無事を祈ることにします」

「じゃあ今からボクはセイリュウと会ってくるから!」

 ボクは精霊剣プリズマノワールを手に取ると、セイリュウのいるお城の門へと足を運んだ。

 ボクが門につくと竜の顔をしたいかつい精霊が待ち受けていた。

 こいつが精霊四天王のセイリュウか。

「うわっ、ビャッコと同じでとっても大きな体をしてるよ」

 手には大きな武器を持っていた。
 ボクの身長くらいもある巨大な斧だ。

 ここにくる間に精霊総理大臣に教えてもらったんだけど、あの大きな斧は「バトル・アックス」って名前のすごく重い武器なんだって。

「おまえがビャッコを倒した勇者ハルトか!」

 ボクの姿を見るなり、セイリュウは大きな声でいきなり質問をしてきた。
 耳がキーンと痛くなるようなものすごい声の大きさだった。

 でも、大きな声で脅そうったってそうはいかないぞ!

「そうだよ、ボクが勇者ハルトだ!」
 ボクはセイリュウに負けないくらいの大きな声で言い返す。

「オレ様の名前はセイリュウだ! 精霊四天王の1人で最強の精霊だ! はははは! 覚えておけ!」

 どなり声のような大きな声に、またまた耳がキーンとさせられる。

「まったくもう、ほんとに大きな声だなぁ……」

 それにしても昨日のビャッコに続いて、今日は同じ精霊四天王のセイリュウがやってくるだなんて。

 ボクは話しながらカミカゼ・ハルトの物語を思い出していた。

 本人も言ってたけど、セイリュウは最強の精霊四天王だ。

 そんな強い相手と戦わないといけないなんて、ううっ、どうしよう?
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