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第8章 深まりゆく関係

第153話 ~アブソリュート・ヴィクトリー・ヴァージンロード~

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 もちろん本来なら、相手に乗っかって体重をかけるような行為はツイスターでは反則だ。
 ツイスターはレスリングのような格闘技とは違う。

 だけど今は単純な勝ち負けよりも、みんなでツイスターを楽しむことこそが肝要!
 よってここは共同作戦、一択!!

「決まりだな。俺も頑張って踏ん張るよ――ふんっ!」

 俺はここが最後の頑張りどころと、四肢に力を入れた。
 既に尽きかけていたはずの体力が、この土壇場で急激にみなぎってくる!

(そうか、俺のツイスターマイスターとしての戦意に、身体が反応しているんだ――!)

 行くぞ優香!
 俺と優香の合体プレイを、美月ちゃんに見せつけてやろうぜ――!

「じゃあ蒼太くんの上に乗っかっちゃうからね?」
「俺のことは気にしないでいいさ。さぁ来い!」
「分かった、うん!」

 優香は意を決したようにうなずくと、逆四つん這いポーズを取る俺の上に、自分の上体を乗せた。
 俺の身体を支える手足にグッと負荷がかかるが、今の俺はこれくらいはどうってことはないのだ!

 そして優香は、俺の身体に少ししがみつくように密着しながら、両足をピーンと伸ばして見事に浮かせてみせた。

 それは俺たち2人が初めて協力して成し遂げた、絶対無敗の勝利の形!
 言うなれば『アブソリュート・ヴィクトリー・ヴァージンロード』!

(やったな優香!)
 俺は心の中で最大限の賛辞を送った。

「わわっ! やりました! おねーちゃん、両足浮かせをクリアですよ! すごいです!」
 美月ちゃんの嬉しそうなはしゃぎ声も聞こえる。

 しかしこの時点でもう既に、優香は身体をプルプルと震わせていた。
 体操選手のようにかなり力を入れて足を浮かせているのだから、それも当然だ。

 優香は顔を真っ赤にしながら、俺の胸の上で身体を震わせながら必死に耐えている。

「はぉ、はぁ……ん……っ!」
 優香の息が荒い。

「美月ちゃん、次の指示を頼む!」
 俺は優香の負担を1秒でも少なくするために、美月ちゃんに次を促した。

「じゃあ次は、蒼太おにーちゃん、右手を浮かせてください」
「なん……だと……?」

 おおっとぉ?
 ここにきてまた『浮かせ』ってか?

 両足を浮かせた優香を下から支えながら、逆四つん這いになっている今の体位から、さらに右手を浮かせるのはさすがに不可能だ。

 連続してこれだけ空中戦が続いてしまえば、さすがのツイスターマイスター蒼太もお手上げかな。

 人間は大地に根を張る生き物だ。
 浮いてばかりはいられない。

 それでも俺は、最後の力を振り絞って右手を浮かせようとして――あえなくドサッと尻餅をついてしまった。

「あ、お尻をつきました! 蒼太おにーちゃんの負けですね! つまり、おねーちゃん勝ちです!」

 美月ちゃんの判定を聞いて、優香がいそいそと立ち上がった。

「乗っかっちゃって、ごめんね蒼太くん。重かったでしょ」
 立ち上がった優香が、俺に右手を差し出してくる。

「サンキュー。でもぜんぜん平気だから」
 優香の手を取りながら俺もすっくと立ち上がった。
 ちんたらしていたら、優香に余計な気を使わせてしまいそうだからな。

「蒼太おにーちゃん、おねーちゃん。ナイスファイトでした!」
 興奮冷めやらぬ顔で、親指を立ててグッジョブする美月ちゃん。

「負けたとはいえ、俺もなかなかやるだろ?」
「はい、すごかったです」

「一応、私も頑張ったんだよ?」
「おねーちゃんもすごかったです。最後の足ピーンは、飛行機みたいでした!」

「足ピーン……? 飛行機……?」
 その表現に、優香がなんとも微妙な顔をした。

「さてと、まだ続けるよな?」

「美月はやりたいです」
「私もがんばるよ」

「じゃあ1周したし、もう一回最初の組み合わせでやるか」
「おねーちゃんとして、今度は負けないからね」
「望むところですよ!」

 この後も俺たちは3人でのツイスターを楽しんだ。

 頑張り過ぎてへとへとになったのは言うまでもない。
 やれやれ、明日は筋肉痛がすごそうだ。
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