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第8章 深まりゆく関係

第144話 そうだ、ゲームをしよう!

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「ねぇねぇ、蒼太くん。美月が一緒にゲームしたいって言ってるんだけど、今日ってうちに来れないかな?」

 学校に向かうバスで優香と一緒になると、すぐに優香がそんなことを言ってきた。

「もちろんいいぞ。何のゲームをするんだ?」
「それは内緒にして欲しいって、美月に言われてるの。ごめんね」

 優香が申し訳なさそうに、顔の前で両手を合わせる。

「ははっ、美月ちゃんらしいな。きっと優香に伝えてもらうんじゃなくて、自分で直接言いたいんだろうな」

「多分ね。あの年ごろの子って、そういうところあるから。かくいう私も昔はそうだったから、人のことは言えないんだけど」

「あるあるだな。俺も出たばかりのおもちゃを買ってもらった時とか、いいだろーって言いたくて言いたくてしょうがなかったもんなぁ」

 美月ちゃんの可愛くて子供らしい考え方に、俺はなんともほっこりしたのだった。

 というか優香は今だって、ラインで連絡をくれたらそれで済むのに、こうやって直接話したがるよな。

 もしかして俺と直接、話をしたいからだったり――なんてことを、優香のことをことさらに意識するようになっている最近の俺は、少しだけ考えてしまう。

 もちろん俺の勝手な思い込みだ。
 優香は真面目だし、お願いをするんだから顔を合わせないと失礼、みたいな考えなのかな?

 ま、俺的には優香のお願いなら、ラインだろうが矢文だろうが、天気がいいからと前触れもなく呼び出されようが、二つ返事でOKなんだけども。

「じゃあ今日の放課後にお邪魔するな」
「ありがと♪」



 そして学校が終わってから優香の家に遊びに行くと、

「おねーちゃん、お帰りなさい。そして蒼太おにーちゃん、いらっしゃいませ」

 玄関を開けるとすぐに美月ちゃんが小走りでやってきて、礼儀正しくお出迎えをしてくれた。
 帰りに優香が家にいた美月ちゃんに電話をしてくれていたので、美月ちゃんは俺たちが来るのを待ち構えていたようだ。

「ただいま美月」
「美月ちゃん、こんにちは。お邪魔させてもらうな」

 優香と俺は笑顔でそれに応えると、

「それで、あの! 今日は蒼太おにーちゃんと、一緒に遊びたいゲームがあるんです」
 早速美月ちゃんが本題を切り出してきた。

「優香から聞いてるよ。でも何をするかは聞いてないから、教えてくれるかな?」
 はてさて、美月ちゃんは一体何のゲームをしたいのかな?

「美月がしたいのはこれです」

 そう言うと、美月ちゃんはずっと後ろ手に持っていた何かを、得意げに見せてくれた。
 それは1枚の大きなシートだった。
 シートの表面には、4種類の色をした小さな円がいくつも描かれていて、とてもカラフルだ。

 これって――、

「ツイスターか」

 ツイッターと名前がよく似ているが、Web作家が投稿小説で微妙に名前を変えて使うパチモンSNSとかではなく、複数人で遊ぶ、アメリカ発祥の有名なパーティゲームだ。

「はい! この前テレビで見て面白そうだなって思ったら、パパが会社から持って帰ってくれたんです」

「会社から……?」
 ってことは、2人のお父さんはおもちゃ会社に勤めているのかな?
 タ力ラトミーとかバソダイとか?

 それとも宴会の余興かなにかで使うんだろうか?
 宴会部長をやってる的な?
 まぁ、大人の宴会とかよく知らないから、なんとなくのイメージだけど。

「どうかしましたか?」

「ごめん、なんでもないんだ。えっとルールはたしか、触る色を指示する人の言葉に従って、2人が色のついたサークルを交互に触っていくんだよな」

「はい、だから遊ぶのに3人いるんです」
「なるほど、だから俺が呼ばれたわけだな」

 美月ちゃん、優香。
 そして2人の共通の知り合いである俺。
 納得の理由だった。

 でもそっか。
 そういう意味では、今の俺ってかなり特別なポジションにいるんだよな。

 優香の友達がみんな美月ちゃんの友達ってわけじゃないだろうし、逆もまた然りだ。
 なにせ高校生と小学、年齢は7歳差。
 交友関係はほとんど被らないはず。

 2人の交友関係を深くは知らないから推測だけど、俺は優香と美月ちゃんの両方が気兼ねなく付き合える、数少ない存在なのかもしれなかった。

 およっ?
 よくよく考えてみたら、今の俺って超絶に破格のポジションにいるんじゃね?
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